第27話 つまらん。俺が出たら一方的に勝つに決まってる
「…本気を出して、お前らを潰す。我の生み出した傑作魔法、〈天命魔法〉によってな!!!」
怒気を孕んだ声で、そう言ったホナークルは、剣を上に上げた。その姿は俺の元いた世界で有名だったナポ○オンの絵画の馬抜き、規律バージョンみたいな感じ。
「天命魔法!シャイニング・スパーク!!!」
そう技名が叫ばれる。すると、ホナークルの剣が黄金に輝き出し、それはビーム砲となって、こちら側にやってくる。カースがすかさず防御魔法で皆を防御した為、誰1人として傷を負うことはなかった。
ビーム砲が止んだ後、カースはその場に跪いた。魔力切れが近いのだろう。さっきのギャラクシーヘブンの戦いからずっと魔法を使い続けているのだから。だから、俺はカースに下がる様に指示し、カースを一旦回復させることにした。
「ははは!どつした!貴殿らを守ってくれた魔物を下げるとはな!愚かだ。実に愚かだ!」
「…私がやるわ」
「トリエス…大丈夫か?」
「えぇ。任せて頂戴!」
魔力切れのカースに代わり、今度はトリエスが戦闘をすることにした。先程とは違ういい面構えで。
「はっ!我に怖気付いていた奴が今更なにをするってんだ」
「私、吹っ切れたのよ。守ってくれる人がいる。そんな人を守りたいとね」
そう言いながら、トリエスは、ホナークルに向けて氷属性魔法を放つ。当然のように、ホナークルは避ける。
しかし諦めず、属性を変えたりして魔法攻撃を行う。天命魔法なんて撃たせやしない。ましてや、反撃なんてさせないと言わんばかりに。
そんなひっきりなしに飛んでくる魔法攻撃を、ホナークルはだんだんと避けきれなくなり、被弾する。
避ける、被弾する、一瞬怯む、また避ける、また被弾する、また一瞬怯むという、無限攻撃ループが完成する。
半ば意地となっていたのだろう。ちょっぴり泣きそうな声で魔法を詠唱し続けるトリエスに、この場にいる者達は圧倒され始めていた。ホナークルは盾でガードすることの出来ないまま、ただただ攻撃を受け続けるサンドバッグのようになり、じゅんきとツインクもまた、攻撃に参加できずにその光景をジィッと眺めてるしか出来なかった。
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トリエスが魔法攻撃ループをし始めて10分くらい経っただろう。相変わらず、トリエスは全身全霊でホナークルに向けて魔法を放つ。しかし、その威力は先程よりかは落ちてき始めていた。それに応じて、だんだんと詠唱速度も落ちている。急激に魔法を使いすぎたのだろう。体力も、魔力ももう限界ラインにまで到達しているだろう。
トリエスの技が、とうとう、ホナークルに塞がれ始めた。ループが崩壊してしまった。
「…天命魔法!天命の閃光!」
ループ崩壊後、すぐにシストリエスは反撃を喰らった。ホナークルの放つ技、天命の閃光は閃光手榴弾が爆発したかの様な白い光で辺りを包んだ。それに、衝撃波も放ち、トリエスは避けることもできないまま、吹き飛ばされ、地面に叩きつけられてしまった。
「小娘…少しはやるようだ。だがな、それでも我は倒せん。残念だったな」
ダメージを受けているものの、平然としているホナークル。その姿を見て、トリエスは絶望した。
自分の持てる最大火力で魔法を打ち続けても、攻撃を与える隙なんて作らせないくらいの速度で放っても、奴にはほとんど意味をなしていないようにケロッとしている。
しかし、対象的に自分は魔力残量もほとんどない。大量もない。地面に叩きつけられたまま動くことすらも出来ない。その状況にトリエスは悔しくなり、涙を流した。
「小娘。終わりだな。まぁ、先程よりかは楽しめたぞ。
小娘。褒美として我の秘伝魔法で貴殿を葬ってやろう」
そうして、おもむろに力を溜め始めたホナークル。秘伝魔法。それがなんなのかは知らないが、とにかくやばい魔法ってことが少し遠くにいたじゅんきとツインクが察することは容易だった。
じゅんきがトリエスを助けようと急ぐ。ツインクも続く様にして急ぐ。しかし、じゅんきもツインクも、この場面において重要な欠点があることに気づいた。
「ま、間に合いそうにない!?」
それは、異常なまでに素早さがないせいで、移動速度が遅いということ!
どれだけ急いでも急いでも、間に合う気がしない。技ももうそろそろチャージ完了と言わんばかりな感じになっている。今更車を出してもエンジンを掛けたタイミングで魔法が放たれるだろう。
そんな絶対絶命のピンチで、じゅんきはあることを思いついた。
「ツインク!俺を蹴り飛ばせ!!」
完全自虐である。ツインクは、その指示にすごく困惑の顔を見せた。
「なにそんな面してる!俺は大丈夫だ!殺す気で蹴り飛ばせ!!」
異常である。主人に向けてはいけない「異常だ…こいつ」みたいな顔に変わる。その間にも、ホナークルの技はチャージが完了する。いつでも発射OKだろう。
「速くしろぉぉ!仲間が死ぬんだぞぉ!俺は大丈夫だから、全力で蹴り飛ばせー!」
側からみたら意味不明なことを叫ぶじゅんきに、ツインクは答えることにした。「主人よ。本当にすまない!だけど!主人は狂ってるよ!!」と言わんばかりの雄叫びを上げながら、じゅんきをトリエスのいる場所目掛けて蹴り飛ばした。
じゅんきは「あばばばば!?」と普段では絶対見せないような面をしながらシストリエスの元へと飛んだ。ちなみにめっちゃ背中痛かった。
「終わりだ!天命秘伝 エンジェルズフィナーレ!!」
少しの間溜められた魔法がトリエスに向かって黄金、そして白く輝くビームとなり、襲いかかる。味方からすれば希望の技、敵からすれば絶望の技だろう。そんか技が迫ってくるトリエスは、心の中で「じゅんき…ごめんなさい。私、やりきれなかった…」と呟く様な感じで、全てを諦めたような感じで、涙を流しながらその技が来るのを待った。
…そして、けたたましい轟音が鳴り響いた。辺りの地面は消し飛び、ボス部屋の床も粉々になることもなかったくらいの威力だった。
フィナーレと呼ぶに相応しいような感じだった。
辺りはビームやなどによる光で見えない。そして、ビームが止んだ後も、煙によってしばらくは何も見えなかった。
あの小娘は消し飛んだ。次はあの継ぎ接ぎの魔物を使う人間と、それに従う継ぎ接ぎの魔物だけだ。そう思い、そいつらのいる方をホナークルは見た。
「…なに?あの魔物使いはどこへいった」
その場には「やってしまった…」と言わんばかりに地面に這う頭恐竜の体の大きい魔物…ダイナオーツインクはいたものの、それを使役する人間、じゅんきの姿が見えなかった。どこへ行ったと辺りをキョロキョロとしているホナークル。その間にも、煙はどんどんと晴れていった。
「俺はここだぜ!天命王!」
煙を掻き消し、天命王の探し求めていた奴、じゅんきは姿を現した。
「な、何故だ…そこにいるということは我の秘伝魔法を直に喰らったということ。なのになぜ、貴殿は平気な顔をしている!?」
その場にいたツインクと張本人であるじゅんき以外の2人は驚きを隠せなかった。技を打った張本人であるホナークルは自分の最高火力を喰らった奴が平然な顔をし、傷一つついていない姿を見て。トリエスも同様である。
「いやー。俺、魔法攻撃効かないんだよねぇ」
エンジェルズフィナーレは魔法属性の入った攻だった為、じゅんきには効かなかったのである。そんな光景を見たホナークルは思った。「こいつ、何者だ?」と。そして同時に、とんでもない奴が現れたと、若干引いた。
「じ、じゅんき…」
「…トリエス。吹っ切れたのはいいけどよ。そんな単騎で突っ込んで、ボロボロになって危うく死にかけるとかは辞めてくれよ。せっかくの美人が台無しになっちゃってんじゃんかよぉ。それにな、ちょっとは俺たちを頼れよ。俺たちだって弱くないんだからよ」
「じゅんき…うん。ありがとう…」
「なに。当たり前のことだ。感謝することでもないさ。お前を連れて行くかと言ったのは俺だからな
…だから、あとは俺に任せておけ」
ツインクが合流し、トリエスを抱き抱える。トリエスは安心と、疲れからか、眠ってしまった。
「…寝たな。余程、お疲れさんだったんだな。…さて、天命王さんや。あんたは少しムキになりすぎだ。そんなんで神達にまた抗えると思ってんのかよ」
「なにを知ったかぶりやがって。我たち王の何が分かる!あの日受けた屈辱を晴らしたいのだ。ここにあの神共に封印され、この力を渡せる奴を探すことが容易でなくなった我らの気持ちなんて人間である貴殿ごときが分かるものか!」
それは悲痛なる叫び。あの戦争で負け、地位を失い。自分たちの最後の希望だった力を受け継いでくれる者を探すことも、封印により、それも閉ざされた。それでやっと見つけた奴らの中に自分の理念にそぐわない者が現れたら、暴走するのも無理はない。
「そんなん。わかってるからやってんだよ。この姿を見ればわかるか?…形態変化!ブラックフォービドュン!」
久しぶりの形態変化。体の一部がブラックフォービドュンに代わり、禁断王のもっていたステータスがそのまま自身のステータスに上乗せされることで、パワーアップするじゅんきオリジナルの技である。
「そ、その姿…禁断王の…なぜ」
ホナークルは驚いた。かつて共に戦った同士。そして、その同士の中でもトップクラスの実力を誇る禁断王の力を受け継ぎ、その力を持つ者が目の前に現れたからだ。
「…俺はブラックに呼ばれてこの世界に来た転移者だから。かな。だからこそ、俺はお前に過去、何があったのかは知っているさ」
「そ、そうなのか」
「天命王。あんたの言い分もわかる。強欲な神を殺してやりたい気持ちは俺も同じだ。あいつの話を聞いていて神って奴らはムカつく奴らだったからな。だがな、その心だけで暴走するのはよくない」
「…あぁ」
「俺の目的はお前ら王の力を得て神を殺し、そして平穏にまったりライフを送ることだ。その為にも天命王。俺はあんたに勝負を挑む」
「…面白い奴だ!!わかった。掛かってこい!…禁断王に認められ者よ!」
そうして、王と、王に認められた者の対決が今始まった。
ホナークルは目の前の奴…じゅんきに向かって剣を振るう。先程、ご自慢の魔法が効かないことが判明したからである。じゅんきは禁断王から貰った〈禁断槍〉を出し、自身を守る。「ガギン!」という武器同士の当たった音が響いた。
「…禁断槍まで譲り受けているとは…ブラックは貴殿のことをかなり気に入った様だな」
「さっきも言ったろ?俺は転移者。禁断王に呼ばれてここへ来た転移者だって」
「ふふふ。そうだったな。自分で読んだ奴を気に入らない奴はまぁ、少ないだろうな。少なくとも、ブラックはそんなことをしないな」
「だろ?…さぁ、続きを始めよう」
「…あぁ」
そうして、お互い一旦距離を取る。そして、すぐにお互いは接近し、武器を交える。「ガギン!」「ジャキン!」と武器がぶつかり合う音が木霊する。
しかし、禁断王は王の中でも最強格であり、神々の封印を自ら解いた奴、そうでないやつの力量は明らかである。しかも、対峙してるのは禁断王本人ではなく、人間であるが、その人間ですら、ステータスが高いと来ている。そんな奴に天命王が勝つなんてことは出来ないのは明らかである。
しかし、流石は王の座に着く者である。そう簡単にはやられてくれない。じゅんきの攻撃を盾、剣で守る。
「ガギン!」「ゴキン!」という鈍い金属音が木霊する。じゅんきは何度も何度も禁断槍で叩きつけるような感じで攻撃する。素早い攻撃の為、天命王はそれを防ぐことしかできない。そしてとうとう…
「バリン!」という音と共に、ホナークルの剣の刃はボロボロと崩れ、盾は真ん中からヒビが入り、後一撃なにかを喰らえば崩壊するくらいになってしまった。
チャンスタイム到来。じゅんきは禁断槍を収納し、自分の拳に切り替え、天命王の元へゆっくりと歩む。
じゅんきはこの時を待っていたのである。いくら魔法攻撃が効かないとはいえど、剣などで直接的に攻撃されてしまうと、じゅんきは倒されてしまう。輝く勇者の剣のようなものを持つホナークルに対して、拳で抵抗するなんてかつてじゅんきの居た世界で有名だった某21歳の「拳で」のようなことをホナークルという剣を持つ者にすることは、非常に愚かで、己のを身を投げているようである。
なぜなら、攻撃できる範囲というものが違う。当たり前だが、拳の方がより接近しないといけない。いくら攻撃力が無限でも、当たらなければ意味がない。その前に倒されてしまっては意味がない。カウンターに対応できなければ意味がない。
だからこそ、先に対抗できる手段である剣を自分の武器となった禁断槍で潰しておこうとし、今に至るというわけである。度重なる連続攻撃を、ホナークルは盾と剣で防ぐものの、化け物みたいな攻撃力の前には意味をなさず、盾と剣の刃は完全に崩壊し、使い物にならなくなってしまったというわけである。
「我が貴殿に対抗する最後の手段を封じられたか…」
「あぁ。鎧投げつけたりなんなりしない限りは俺の拳が炸裂してお前は死ぬのだ」
「…はは。そんなことはしないさ。我の理念に反するからな。…負けを認めよう」
今ここで自分の理念を捨てたら、自身の誇りはなくなり、自分でなくなる。肌でそう感じ取った天命王ホナークルが潔く負けを認めたことで、この試練とも言える勝負に終止符が打たれたのだった。
3話と19話で車の設定を新しく追加してみました。特に今後のストーリーに影響はしないと思いますが、気になるなら見てみてください。
来週もお楽しみに!




