第26話 天命王ホナークル
「お見事であった。巧みに考えられた作戦で、我の下部達を倒すその姿。賞賛に値すると同時にその姿勢、気に入った」
透き通ったような綺麗な声色がじゅんき達のいるこのボス部屋に響いた。じゅんき達は先程のような和やかな雰囲気から、緊張感の漂う雰囲気へと雰囲気を変えた。
雰囲気を変えた後、ボス部屋上部が光り輝き出した。それはまるで何かが降臨するような感じで。
そんな感じで現れたのは、人型で、金色に輝き、所々が青や黄緑で飾られている鎧を着た騎士のような姿でありなが、背中にはギャラクシーヘブンの持っていた翼のような綺麗な白色に輝く翼を生やし、右手に勇者の持つ聖剣ともいえるような神々しき雰囲気の漂う剣を持ち、左には大きな盾を装備した西洋の騎士のような見た目の者が現れた。
「…我こそが、天命王ホナークルなり!!…我に気に入られし者よ。我に何を望むか?」
先程から聞こえていた透き通った声がこの部屋に響く時同時に、じゅんき達はこの声の持ち主…つまり、目の前にいる騎士のような奴こそがじゅんき達の求めていた者、〈天命王ホナークル〉であるということである。
そんな天命王からの質問にじゅんきは答えを出した。
「望み…ねぇ。そんなもん、決まってんだろ?お前のちからだよ」
「ふふふ。聞くまでもなかったな。…我の力を求むなら、お前たちの力、我自身に示してみよ!」
「望むところだ!いくぜ!お前達!!!」
じゅんきのそんな声と共に、カース、ツインクは戦闘体制に入った。じゅんきは後方へ、カースはエンジェル族によく効く闇属性魔法を持つ魔法弾を、ツインクは鎧を砕こうとホナークル目掛けて特攻する。
しかし、やはり天命王といわれるだけはあり、カースの闇属性の魔法弾を難なく弾き、ツインクの特攻も避け、逆にツインクを右手に持つ剣で真っ二つにしてしまった。
「…ほう。我一撃を喰らっても再生するか。面白い」
真っ二つに切られたツインクはリスフォース特有の技能、ツインライフによって体を再生した。流石にツインクもバカではないため、今の攻撃で全てを察したのか、珍しく特攻を辞め、俺の近くでタイミングを伺うことにしたようだ。
「流石は天命王だな。俺自慢の仲間がこうも簡単にやられるとはな…」
「侮るでないぞ。我は天命王だからな。だが、久々に、我のことを楽しませてくれる奴らが現れたな!」
そう言うホナークルの鎧は、僅かながらにも傷が入っていた。カースの攻撃だろう。やはり、エンジェル族と言うのもあってか、王であっても、闇属性の魔法は苦手なのだと思った。
そんなホナークルは一度カースに剣を振るった。なんてことない技名もついてないのうな何かを払いのけるかのような乱雑な剣筋。カースは当然の様に避け、じゅんきたちの元へ行き、戦闘体制を整えた。
「ほうほう。貴殿たちの連携は素晴らしい。そのでかい奴が我の近くへとやってきて、その魔法使いが遠距離からの我らエンジェルの苦手な属性魔法である、闇属性魔法を用いた攻撃。そいつらからは不思議な気配を感じる。生きているような。はたまた生きていないような。そんな感じの。そして、そんな不思議な存在を扱う人間のお主から言葉でなくてもその者たちに指示を出し、巧みに操る。素晴らしい。実に素晴らしい!!…だが…」
最後の言葉を放つと同時に、天命王はツインクの特攻攻撃で出した速度なんて周回遅れだ!と言わんばかりの桁違いの速度を出し、こちらに向かって特攻してくる。
先程、じゅんき達に向けていた敬意を持った攻撃ではなく、本気で殺しにくる攻撃だと、芯から感じたじゅんき達は身構える。
…爆速で飛ばすホナークルはじゅんき達に攻撃…ではなく、じゅんき達の後ろにいたシストリエスに向かって攻撃をした。ホナークルの剣技を防御魔法でぎりぎりでブロックしたものの、剣と防御魔法のぶつかった衝撃で、シストリエスは吹き飛ばされ、じゅんき達より遥かに後方の方へといってしまった。
「だがな。小娘。お前は違う。我の姿を見た時からお前の心には迷いがあった。その迷いがなんなのかは知らないが、先程から攻撃もせずにただただ此奴らが攻撃するのを見ているだけ。…我の大嫌いなタイプだ」
そう、先程とは変わり、軽蔑するような目でシストリエスのいる方を見ながら、透き通った声に怒気をはらませて、そういい放つ。じゅんきは自分の持てる最大スピードでシストリエスの元へと向かった。
「大丈夫か?」
「え、えぇ」
吹き飛ばされ、壁にめり込んでいるのにも関わらず、すこしばかり傷ですんでいるシストリエス。これが、ダンピールの一族なのかと少し関心したじゅんき。シストリエスは自身の回復魔法にて体を回復させ、じゅんきの力もあって壁から脱出できた。
「認められし人間よ。なぜ貴殿はその軟弱者を助ける?」
「なんでって。そりゃ、大切な仲間だからだよ」
「じゅんき…」
「…なぜいつも、貴殿らのような者たちはなぜ、弱き者を助かる。庇う?そんなことをするせいで、負わないでよかった傷を負い、自分だけなら勝てるはずの相手に苦戦を強いられるのだ。自分から戦おうともせず、ただただ強い奴らの力に溺れる奴らのことをなぜ守るのだ!!」
「だぁからぁ。俺の大切な仲間だから守るんだよ。ヘマをしたら守り、逆におれがヘマをしたら守ってもらう。俺は自分が戦闘向きなのか向きじゃないのかなんなのかよくわからないステータスだからな。しかも、トリエスはお前が思うほど弱くなんてないぞ」
「じゅんき…」
「お前がこの戦いが始まってから、今の今までカース達と共にあいつに攻撃しなかったのか。何を迷っているのか、その理由は俺はわからない。話せとも言わない。だがな、仮にも今は戦闘中だ。迷っててもいい。だが、目の前の敵にはしっかりと対応して欲しい」
…そんなことを言う彼の目は、いつも私に向ける優しい目ではなく、真剣な眼差しだった。
…いいな。彼には恐怖なんて感情がなさそうなのだから。あんな継ぎ接ぎで化け物よりも化け物な魔物達を巧みに扱い、天命王に怯むことなく攻撃させ、自身も、天命王の攻撃にもビビることなくしっかりと対応してるのだから。
…だけど、私は違う。当然だが、私は怖いのだ。じゅんき自慢の化け物達の攻撃に難なく対応し、反撃の力も強い。王というだけはある。私に向けた目線は私を殺そうとする目そのもの。
化け物軍団よりも弱い私が、あの王にどうやって立ち向かう?私も手伝えるのか?
そんな迷い、そして、怖いと言う気持ち。なぜ私はここへ来てしまったのか。そんな暗い気持ちが私に行動させることを妨害している。
ーーー俺の大切な仲間なんだから守るんだよ。ヘマをしたら守り、逆におれがヘマをしたら守ってもらう。俺は自分が戦闘向きなのか向きじゃないのかなんなのかよくわからないステータスだからな。しかも、トリエスはお前が思うほど弱くなんてないぞ
そんな葛藤の中、さっきじゅんきが私を助けてくれた時に言ってくれたセリフがなぜか、脳裏に浮かんだ。
…今思えばそうだった。私は最初にあの場所で出会い、私のことを助けてくれた時から私はずっと、何があろうとも、彼に着いていくことを決心したではないか。
絶望感にまみれた私に希望を与えてくれた彼のことが、私は好きなのだから。
ならば、こんなしょうもないことでくよくよとしている場合ではない。立ち上がり、私も戦うんだ。
「炎系魔法 ファイアードラフト!!」
炎魔法の中でも、勢いが強く、威力も高い。魔力消費量もすごい大技が、じゅんきの横、シストリエスから、ホナークルに向けて放たれた。
ホナークルは不意の出来事だった為か、その攻撃をモロに喰らってしまった。
「トリエス…」
「私、どうにかしてたわ。戦いの中なのに、しょうもないことばかり考えて。ほんと、よくないわよね」
「まぁな。…いい面構えじゃないか。トリエス」
「ふぇっ!?」
じゅんきは優しく彼女の頭を撫でた。彼女から変な声が出たのでじゅんきは少し驚いた
「さっきみたいな魚の死んだ目で何が楽しくて生きてるんだこいつ。みたいな感じの目では無くなったし、前、あの場所から離れる時に見せた目になってる。…だがよ。もう少し、自分に正直になったり、他者を頼ることも大切だぜ?」
「えぇ。ありがとう。じゅんき」
「忌々しい。忌々しい!!!決断力もなにもかもがない雑魚のお前が我に傷をつけることなんて!!!許さんぞぉ!!!」
せっかくいい雰囲気になっていたというのにも関わらず、その雰囲気をぶち壊すかのように、怒気の孕んだ声で、先程、不意を疲れてダメージを負ってしまったホナークルが、血相を変えてシストリエスの方を見ている。
「…本気を出して、お前らを潰す。我の生み出した傑作、〈天命魔法〉によってな!!!」




