第1話 はぐれ転生者、禁断王になる
「ち、力を引き続ぐ?」
「そうだ。我の力は強大でな。今まではこの力を扱えそうな奴が居なかったのだ。だが。お主なら使いこなせるかもしれない。そんな予感がしたのだ」
「し、しかし、俺は...」
「あぁ。言いたい事は分かる。そんなことを急に言われてもとは思う。だが、我にはもう時間が残されていないのだ」
「そ、それはどういう…」
「あまり時間が残されていないから手短に話すぞ…」
そうして、じゅんきは化け物からことの詳細を手短に話された。化け物の正体は「禁断王 ブラックフォービドュン」。禁忌と呼ばれる力を扱うことができるらしい。なんか禍々しいなと思ったのは俺だけではないだろう。
話を戻して、そんな禁断王は禁忌を扱うことができるということから、長いことこの世界の住民と戦っていたらしい。最初こそ優勢だったものの、皆の団結力を前にして、だんだんと不利な状況になっていき、死ぬわけにはいかないとここへと逃げてきたそう。しかし、禁断王は長年の戦い、そして、戦いによってできた傷によって体の限界が来ていたらしい。
そこで、自分の力を受け継ぎ、扱える人材を探していたところで、じゅんきを発見したとうことらしい。
「…大変だったな」
「まぁ。いつかはこうなる運命だったと今では割り切っているのだ。それき、お主のような才あるものに出会えたこともある種感謝といえるかもな」
そう語る禁断王はどこか寂しそうで、安心したようだった。今まで1人で負の感情たちと向き合ってきたのだろう。その姿を見て、じゅんきはどこか自分と似ている気がして、いてもたってもいられなくなった。
「…ブラックフォービドュンさんの話はよくわかったよ。俺もそんな感じの立場だったからなんとなく分かる」
「ふふ。我ら、意外と似たものなのか?あと、我の名前は長いだろう。これからはブラックと呼ぶといい。あと、畏まらなくてもよい。」
「わかり…いや、わかった。…てか、俺も名前を名乗った方がいいな」
「いや。我はお主を呼び出した奴だぞ?お主の名前くらいはわかっておる」
「そ、そうなのか。じゃあ何故、俺のことは名前で呼ばないのだ?」
「名前呼びに慣れていなくてな。どうしてもお主呼びになってしまうのだ。そこは堪忍して欲しい。…話を戻すが、貴方様は、我の願いを聞いてくれるか?」
「あぁ。その力、俺に全て受け継ぐことにする」
じゅんきは少し考えた後にそう言った。禁忌の力が自分にどう作用するのかはわからない。しかし、この話を断る未来などは彼には考えられなかった。目の前にいかにも強そうな力を得られるチャンスがある、それを掴み取るしかないだろうと思ったからだ。いわば好奇心というやつなのである。さらには、自分と世界も、存在も、境遇も違うが、なぜか、親近感がじゅんきには芽生えた。それもきっと理由としてあるのだろう。
「…ありがとう。それでは早速取り掛かるとしよう。」
そうして、禁断王は準備を始めた。暗闇だった空間に明かりが灯り、魔法陣をじゅんきの周り描いた。
「…よし。書き終えた。今から我の力をお主に全て授ける。お主の体内には大量の力が流れ込んでくるかもしれん。しかし、絶対この魔法陣からは絶対に離れるなよ。離れたら、お主は存在が消えてしまうかもしれんからな」
「あ、あぁ。ぜ、絶対に離れないよ」
力によって押し出されたりしたらどうしよう。そんなことを考えつつ、返事をした。すると、魔法陣が光り出した。刹那、じゅんきは自分の体に大量の力が流れ込んでくるのを感じ、じゅんきはその場に倒れ込んだ。これは、魔法陣から抜け出せるとかの次元ではない。取り敢えず、押し出されたりする心配はなさそうである。超苦しい…だけど、なぜだろう。この苦しみは、一気に流れてくる力に驚いているだけであり、拒絶をしているわけではないと感じていた。それは、自分がこの力を受け入れている感覚がするということである。そして、時間が経つにつれ、だんだんと自分が強くなったと思える。同時に、自分がなぜか、人間であることを捨てたような気もする。そう思った。
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あれから、30分ほど経っただろう。じゅんきは禁断王の力を引き継ぐ儀式を無事に終えた。魔法陣から光が消えていく。同時に苦しみはなくなり、自分の力がすごく強くなったと感じた。
「ありがとう。お主のおかげで、我は安心できるようになった」
「あぁ。それはよかった」
「これからは、お主...いえ、貴方様が禁断王です」
「え、き、急にそんな貴方様なんてやめてくれ」
「いいえ。今、我の力を持っているのは貴方様です。そうなったら必然的に貴方様が禁断王となります我はなんでもない奴になったのです。そうなれば、必然的に、様呼びをしてしまうのも無理はありませんよ」
え?なに?なんで?さっきまでお主とかって言ってたのに、急に貴方様?俺が禁断王?なんか。すごく面倒くさいことになったかもしれない...と感じるのだった。