第14話 俺は、このクラスが嫌いだ
あの後、愛川は泣き止み、俺に謝罪をして、自分の席へと戻っていった。そこからは男子からも、女子からも、そして、先生からも質問の嵐だった。「今までどこへいってたの?」「なんであの時、俺たちを置いて教室を抜けたんだよ!」などなどの質問に、答え終わるまではどれだけ面倒くさかったことか。
適当に答えはしたが、それでも、かなり疲れた。飯を食べる気になんて到底なれなかった。出された料理をほとんど口にしないまま、食事会兼質問コーナー(?)〈じゅんきにとっての地獄〉が終わり、じゅんきは用意された部屋へと戻るために、城の廊下を歩いていた。
「よう!ボッタ!」
「…佐藤」
「相変わらず、この世界でもボッチだなぁ。しかもなんだよその服。みすぼらしいなぁw」
「…なんですか?特に用事がないなら、俺は行きますよ。疲れてるので」
「あぁ?待てよ。話は終わってねぇよ。ボッチで地味でオタクでちょっと愛川さんに気に入られてるだけの分際で。いつもいつも生意気なんだよ!」
そうして、俺は佐藤に殴られた。…少しだけ痛い。
「あの時も俺たちのこと差し置いて逃げやがって。まぁ、そのおかげで、俺は今軽戦士いう職業を手に入れ、訓練とかのおかげもあって力が強くなったんだぜ。…そうだ。お前、お前とせっかく感動の再会をしたんだ!ちょっと付き合えや」
そう言われ、肯定も否定をする時間すら佐藤は与えず、俺は佐藤に連れられ、裏庭の方来させられた。今は夜、そして裏庭。やられることは一つだろう。
「おら!喰らえ!フットワークスラッシュ!」
「おぉ佐藤!すげぇぞ!」
「佐藤も悪いやつだなーww」
「おいおーい!ボッタ様が可哀想だぜぇーwww」
最初から俺を痛ぶるつもりだったのだろう。廊下でタイミング良く合流してきた佐藤の友達、剛者、坂野、桜蘭も加わり、よってたかって、俺はそれぞれの職業の技能や技を受けている。そう、まるで俺が都合の良いサンドバッグみたいに。それぞれ、剛者が格闘家、坂野が氷魔法使い、桜蘭が炎魔法使いである。
正直、坂野と楼蘭の攻撃に関しては常人ならただではすまないくらいの威力である。俺も実際にくらってみた感想としては痛い。これに尽きる。流石は仮にも勇者一向として召喚された奴ら。
そして、他2人の攻撃は…俺の技能もあってかなんかのか、まぁ俺の場合は効果はないっぽいですね。だが取り敢えず、俺は食らってるふりをしている。その他の奴らはひっきりなしに技を放つ為、俺の体、服は次第にボロボロとなっていった。
「ふぅ。疲れたな。あー!いいストレス発散だったぜ!お前もこんなことだけでは使えるんだよなぁ」
「なぁなぁ。思ったけど、こいつの職業ってなんだろな?」
「あれ?スキルチェッカーが文字バグ起こしてるぞ!」
「それって適正なしとか?あるあるだなぁ!ボッタ君はこんな異世界をに転生したのはオタク心くすぐるだろうし、幸せだろうけど、職業が文字バグ起こすくらいのゴミな職業、それか、チェッカーにすら見放されるくらいの弱さなんだろうな!残念だったね!あっ!君にはいい職業があったね!サンドバッグという素晴らしい職業が!」
「おー!どの職業よりも最強じゃないか!」
「適正職業サンドバッグー!www」
そんなわけあるか。これでも禁断王だよ。お前らのことなんざ、一捻りで潰せるよ。こちとら。
「なぁ王混。お前ばかり愛川さんに気に入られてさ、話しかけられているのむかつくんだよ。委員長とかは幼馴染だからいいとしても、お前はだめだ。陰キャだし、地味だし、釣り合ってない。おまけにお前は「貴女に興味ない」って感じで相手してるのも気に入らない。だからあまり愛川さんと話すなよ。話しかけられても無視しろ。話したら、またこういうふうにしてやるからな」
「くーっ!かっこいいー!流石佐藤!」
「だろう!じゃあな。ボッタくぅん」
そう言って、佐藤達は去っていった。…にしても愛川と話すな、か。別に話したいわけでもないし、関わり合いたいわけでもないのにな。
報酬金に目が眩んで来てしまった俺が間違いだった。後悔した。こんなことばかりだから、俺はこのクラスは嫌いなんだよ。
こんな雑魚共を禁断王の力で殺してしまうことなど容易だろう。
…容易だし、やりたい。しかし、そんなことをすると、後々画面くさいことになりそうだし、今、やるべきではない。ブラックだってこんなことをするためにこの力を俺に譲ってくれたわけではないだろう。だから、今回だってやられるがままとなってしまった。
まぁ、前回までは単純に力がなかっただけだけど…しかし、ほんと、あのクソ野郎共、徹底的にやりやがって、身体中が痛いな。しかも、俺、回復魔法系効かないから、早く治ってくれるといいが。
そう考え、ただてさえ、疲れで重たかった体に怪我というサクセスウェイトがのっかかってきたことで、体がもっと重くなった気がする。そんな体を頑張って動かし、部屋へと向かうのだった。
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「王混君。昨日はみんなが質問攻めをしていたので言うことができませんでしたが、生きて、この世界で再び再会できてよかったです」
「…そう。まぁ、心配してくれてありがとうな。先生。そして、気にかけてくれて」
「先生なので当たり前です!しかし、それにしても、初のダンジョン攻略でSSS級のモンスターを倒すとは。先生は詳しくは分かりませんが、すごいことってことは分かります」
「まぁ、たまたまですよ。たまたま、運が良かったので、倒せた感じです」
「そんなに自分を卑下することはありません。運もある種の実力という奴ですよ」
翌日、俺は皆が訓練しているのを副担任の木本先生と会話をしながら観ている。…正直あの日、俺は教室から誰も助けることなく逃げた身だから気まずい。
そんな俺は今、Sランク冒険者である為、強いからと言われ、別に訓練をしなくてもいいらしく、正直、俺はあんな奴らと関わりたくない為、しないことにしている。
そして、木本先生は農作師という、農作物などに対するスキルの多い、非戦闘系の職業である為、訓練には参加していない。しても意味がないから。まぁ、生徒でもそんな奴らは数人いるからな。そいつらと今訓練を観ていると言うわけである。ちなみに、昨日受けた傷は部屋に戻る頃には治っていた。服は…頑張って直した。体はどうやら、自己修復が早い体となったらしい。まぁ、助かるが。
「…ねぇ。王混君。話は変わるけど、君は今冒険者なんだよね?」
「はい。そうですね」
「もしも、もしもですよ。この依頼後に冒険者を辞めて、先生達と世界を救う為に戦ってと言ったら、どうしますか?」
「断る」
「…どうしてなのか、理由を聞いても?」
「…単純に、俺はこのクラスが嫌いだからです。俺にだって色々と非はあったと思います。しかし、俺が愛川と話すのを気に入らない奴がいるんですよ。先生がいない時に、俺に突っ掛かってきて、それを一部の人間以外は助けもせず、なにもしない。見て見ぬふりと言う奴ですよ。なんなら、一番あいつが俺のことを助けてくれた。愛川とか俺を助けてくれる奴も居る。そんな奴らのことは嫌いじゃないし、むしろ、超感謝してる。だけど、あいつら…特に愛川が助けてくれると、愛川と話せるとかなんとかで、再び俺のことが気に入らない連中が俺を責める。そんなループ続く学校生活なんて当たり前ですが、楽しかったわけないです。だから、みんなとは異なる方法でこの異世界に来て、自分で好きなことができる。誰にも縛られず、自分に正当な評価が下る。それを放棄して、また学校生活と同じようなクソみたいな生活をする?ハッ。お断りだね。しかも、俺はお荷物だ。朝、俺のスキルなどを確認しているのを見たでしょう。俺のスキルなどはなぜか反映されず、文字バグが起きる。弱いから反映されない。そんな奴はみんなにとっては邪魔だ。だから、俺は何があってもここに戻らない。依頼が終わったらおさらばだ」
「Sランクの冒険者の貴方が弱いわけありません。しかし、そんなことが。先生もその実態に気付けていませんでした。ごめんなさい。王混くん」
「気にしなくていいですよ。俺はもう、このクラスのクラスメイトを辞める。ただ、それだけですから」
「えっ!そ、そんなの先生は認めませんよ!」
「認める、認めないではないです。それとも、先生は俺にもう一度地獄を味わってほしいのですか?」
「っつ……い、いえ。そんなことは…な、なら!先生だって協力します!」
「しなくていい。悪いが、ダンジョン攻略が終わったら俺はここを出るし、先生も手助けしなくていい。むしろ、手助けしたら、密告したとかなんとか、ありもしないを広められ、俺はこのクラスを余計に嫌いになる。これ以上、嫌いになると、何しでかすかわからないもので。……すみません。ちょっと熱くなってしまいました。…少し、外へ出ます」
「王混君!王混君!話はまだ終わってませんよ!」
そんな木本先生の話を無視して、俺は訓練所を去った。周りで観戦していたクラスメイトがこっちを見てくるがそんなものは関係ない。クラスメイトが「王混にだって悪い点がある」と思うなら、勝手に思えばいい。それくらい、俺はこのクラスの奴らが嫌いになってたのかもしれないな。その後、俺は訓練所に戻ることはなく、自分の部屋でくつろいでいた。
「じゅんきくん。い、今、いいかな?」
そう、ドア越しにノックされる。声の主は多分愛川だろう。正直、佐藤の件もあって関わりたくはない。だから居留守を決めることにした。…てか、なんで俺の居場所知ってんだろう。
「ねぇ、じゅんきくん!私なにか気に触ることをしたからな?昨日のこと、嫌だったのなら、謝る!だから、ドアを開けて!話がしたいの!」
ドアを叩く音が強くなる。…流石に近所迷惑になるな。だから、俺は渋々ドアを開けた。
「なんだよ」
「あ、あの。き、急にごめん」
「…まぁ、ここで話すと人目があるかもしれない。…取り敢えず、入るか?茶くらいは出す」
「う、うん。お邪魔します」
そうして、不本意ながら、俺は愛川を部屋へと入れた。
「…で?何しにきた」
「あ、あの。今日の訓練の時間の途中から居なくなって、晩御飯も食べにこないから、先生達心配してて、私も心配だから、団長さんにじゅんきくんの部屋を聞いて、心配で来たんだけど…」
「あぁ。心配させてすまないな。俺はなんともないぞ」
「そ、そう。なら良かった。…けど、どうして、今日の夕食は食べにこなかったの?」
「…単純に腹減ってなかったんだよ」
「そうなんだ。今はお腹空いてるの?
「いや?空いてない」
「そうなんだ」
「なぁ、なんでお前、ここに来たんだ?俺が夕食食べに行かなかったこと以外で何か気になることがあるから来たんじゃないのか?」
「よくわかったね。じゅんきくんにはなんでもお見通しだね」
「なんでもはわからないがな。なんとなくだ」
「…静香先生から聞いたの。じゅんきくんがクラスの人達にされてきたこと。そして、この依頼が終わっても私達の元に帰ってこないこと。…そして、じゅんきくんがクラスで孤立してしまっているのは私も原因があるかもって。…ごめんね。私のせいで」
あの先生。全て話しやがったな。…こうなることなら、言わないでおいた方が良かった。…次回からは何も話さないでおこう。
「…愛川のせいではない。俺にも問題はある。愛川はそんな俺を助けてくれた。むしろ、感謝してるんだ。ありがとう」
「っっっ!」
「だから、謝るなよ」
「う、うん」
「だけどな。俺はこのクラスが嫌いだ。この世界に召喚されて、冒険者となって、自由に旅をする人生だって悪くないんだよ。いずれ、住みやすい所を見つかるなりなんなりして、安定し、安心する生活を送りたいから、俺はもう戻らない」
「な、なら!私も連れていって!」
「…すまないな。それはできない」
「どうして!」
「お前の適正職業は回復職。クラスの奴らに回復専門の奴らはお前しか居ない。あいつらは勇者一向だ。勇者達が大きな怪我を負った時、治せるのは現状。お前しか居ない。それはまずい。お前らは人類の希望なんだろう?先生から聞いたが。そんな奴らの方が普通の希望でもなんでもない俺より価値がある。だからだ」
「そ、そう。ごめん。こんなことを言って。だけど、私もじゅんきくんについていきたいの」
「どうしてだ」
「そ、それは……」
「…まぁ、話したくないなら、それでもいい。大方、俺が心配なんだろう。だが、心配はいらない。弱者な俺でもSランク冒険者にたまたまなれたしな。…だが、どうしてとついてきたいってなら、皆んなが回復なくても、それか、回復を使える奴らが増えた時に俺と会えたなら、考えやらんでもない」
「ほ、ほんと!?」
「あぁ。約束してやる」
そう、話し合えると、嬉しそうな顔をしながら、愛川は部屋を出ていった。………本当に美人だから、笑顔が可愛い。俺はそう思ったのだった。そして、俺は
「こんな場面でなぁんで、お人よしになるかなぁ」
とも、思うのだった。
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「よ、よし。彼との距離を縮められたかもしれない。一歩前線〜!フフフ〜」
私、愛川瑞姫はそんなことを呟きながら自室へと戻る。…じゅんきくんが無事に生きていた。じゅんきくんは冒険者になっていた。クラスで私たちとともに戦ってくれるのはこのダンジョン攻略だけ限定ではあるが、私を冒険の旅に連れていってくれるかもしれないと言う約束はできた!このチャンス。何がなんでも私のものとして、次回会った時、絶対に旅について行くんだから!そして…あわよくば…だ、だめよ!じゅんきくん!そ、そんなことは…
そんなことを考えながら、私はランラン気分で自室へと戻るのだった。
おや?愛川瑞姫の様子が…???




