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第一話 うまのふんとうしのふん

女子高生が転生したら『うまのふん』だった話で、

いろいろあってライバルの『うしのふん』と共に新興宗教のご神体になる話です。




建設中のビルから落下してきた鉄骨の直撃を受けた私は、転生したら、うまのふんになっていた。

これでも一応うら若き乙女なのだが…。


洞窟の深層階の宝箱に大事に保管されていた私は勇者に拾われた。

どうしてなのか勇者はなぜか肌身離さず私を持っていた。


彼曰くは



『宝箱から手に入ったものはみんな等しくプライスレス』



らしい。


私には口がないので喋れない。

鼻もないので自身が臭いのかどうかはわからない。

目も耳もない…はずだけど一応ちゃんと見えるし聞こえもする。


勇者は、夜になってパーティメンバーが寝静まると私を持ち出して私に語り掛けるようになった。



「うまのふん…バフンちゃんって呼ぶね。オレ、勇者の使命を背負ってつらくてさ…」



私は聞き役に徹することにした。

彼は、自分が生まれながらにして勇者として育てられたこと、

故郷を魔王に焼き払われて旅立つことにしたこと、

仲間ができてから少しずつだけど自分を取り戻せたこと…などを静かに話してくれた。


ちなみに馬車の中の待機メンバーにも10%の経験値が入るらしい。

体育の授業の見学かよ。何にせよ一介のうまのふんである私には関係のないことだ。



だが、勇者一行と数か月の旅を経たある日ことである。




『魔物の群れを倒した!それぞれ2108の経験値を獲得!』








『うまのふん は レベル2に あがった!』







ざわ…。






色めき立つ一行。一方、勇者だけは静かに微笑みを浮かべていた。





『HPが98上がった!MPが1上がった!ちからが56上がった!

すばやさが33上がった!自爆呪文を覚えた!』






なんかこの先の展開読めたわ。

魔王との交戦中、絶対のピンチ!いう時に爆散してパーティのピンチを救う私。


パーティメンバー、うんこまみれ。

うんこまみれのまま凱旋。嫌すぎる。

しかし最後の最後まで、魔王を倒すまで勇者は私を自爆させなかった。

あるいは、自爆させたくなかったのかもしれない。いろんな意味で。


魔王打倒後、パーティは解散しそれぞれの生活を送ることになったが、

勇者は魔王軍の残党を狩るべく独りで旅を続けた。もちろん私も一緒に、だ。


暑い日も寒い日もあった。

晴れの日も雨の日もあった。

広大な砂漠や雪の大地を旅することもあった。

私たちはいつも一緒だ。心友なのだ。

だが、あるダンジョンの最深階の探索中、転機が訪れる。




『勇者は宝箱を開けた!なんと、うしのふんが入っていた!』




勇者はそいつ(やはり転生者で女)にそっと口づけをすると、持ち物として大事そうにしまった。

ライバルの登場である。


ちなみにうしのふんも私同様に見えて聞こえはするけど喋れないようで、

相手の思う所はわからない。

だが、互いに女として思っているところはあるという強固な意思は感じられる。


私はお前みたいな女とちゃうねん。

反芻したゲロを飲み込む劣等種から発生したうんこちゃうねん。


ウマ娘はおるけどウシ娘はおらへんねん。

ウシ娘はエロ特化になるからあかんねん。


私にも当然ながら意地があった。




互いに互いを牽制し合う生活が数か月続いたのち、戦慄が走る。それは戦闘終了後、突然にやってきた。




『魔物の群れを倒した!それぞれ5503の経験値を獲得!』






『うしのふんは レベル78に上がった!』





なん…だと…!?




レベルアップ…だと…!?高レベル…だと…!?




しかも驚くべきは





『HPが35上がった!MPが77上がった!かしこさが69上がった!蘇生呪文を覚えた!』




その強さ、高レベルになっても天井知らず。しかも私と違って魔法使いタイプのようだ。

しかも自己を犠牲にして全員を蘇生する呪文まで習得しやがった。

やはり勇者だけは静かに微笑みを浮かべていた。




なんかこの先の展開読めたわ。

いよいよピンチってときに私爆散、でも奴が自分を犠牲にして私と勇者を蘇生するだろう。

うんこまみれの勇者とうんこまみれのうんこな私。滑稽すぎる。



しかし勇者は最期の最期まで、奴に蘇生呪文を使わせなかった。

あるいは、蘇生させたくなかったのかもしれない。いろんな意味で。

彼は通りがかりの旅人に教会で蘇生してもらうと、私と奴に向かったこう言った。



『ふたりとも俺のお気にだから』




きゅんっ…




私も奴も互いに互いの女の部分(あるのか?)が疼くのを感じた。

勇者いいやつだ。

勇者はついに魔王軍の残党をせん滅すると、滅ぼされた故郷に戻り、復興に取り掛かった。



勇者はまず小さいながらも自宅を建て、生活拠点を確保すると、

最奥の小さな祭壇のような場所に私と奴を大切そうに奉った。


その後の勇者はこの地まで馬車が行き来できる道を整備し

簡易な宿泊所を作り湧き水を引き、復興の人手が確保できるようにした。


半年ほどたち、復興が進んでくるとそのまま居つく人たちも現れ始めた。



1年経ち、小さな街と言えるほどの規模になると、魔王の襲撃を受けた痕はほぼ見えなくなっていた。



3年経ち、特産品や名物となるものが出てくるほど栄えてくると、勇者は自宅を少し改築した。

私と奴を奉る神殿も巨大なものとし、私たちは豪華絢爛な祭壇に奉られた。

多くの人々が私と奴を『勇者のうんこ』と有難そうに拝んでいった。


何があったのか、涙を流しながら私たちに頭を下げてお礼を言う人までいた。

勇者も私たちも知らぬうちにご神体(私と奴だ)のご利益の噂は世界中に伝播し、新しく宗教が興った。




『勇者のうんこ教』であるー。

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