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佐野さんに連れられ、私は佐野さんの家まで来た。六本木の一角にある高層マンションの十五階に、その家はあった。
広くて大きいリビングで、私と佐野さんは、資産家の威厳を放っている佐野さんの父と向かい合って、応接テーブルに座った。
佐野さんは私の電池売りによる経済事情について話した。電池の売れ行きが不振なこと、今後、私が学校に行かせてもらえなくなることを切々とした口調で話してくれた。そして、最後に「父さん、彼女の父の工場と契約してくれないか。よろしくお願いしたい」と言ってくれた。一通り話を聞いて、佐野さんの父は、しばらく考え込んで厳格そうな感じだったが、やがて口を開いてくれた。
「そう簡単な話じゃないが、電池は貴重な資源だ。ちょうど私も生活資源の事業を拡大したいと思っていてね、その一つである電池を商材とできるのは有難い話だ。まずは引き受けよう。具体的にどうしていくかは後々考えればいい」
「ありがとうございます!」
私は心の底から感謝した。本当に嬉しくて涙が止まらなかった。
それから、父の工場は佐野さんの父の事業と契約し、電池の売り上げも地道にも伸びていった。電池の需要も人々には根付いており、やがて一日一万円を優に超えるくらいの売り上げを出していった。
今や私も普通に学校に通えているし、もう渋谷の街で電池を直接売ることもしなくて済む。
あの時助けてくれた佐野さんと、佐野さんの父への感謝は、この先もずっと忘れないようにしよう。
(終)
最後まで読んでいただきありがとうございました。本小説は、今から6~7年前に個人的に執筆した短編小説の1つです。