表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

「馬鹿野郎! 何でこの程度なんだ!」

 私の少なすぎる売り上げを知って、父は激しく怒鳴り付けた。いつものことだから慣れたが、理不尽さはどうやっても拭えない。

「来週までに目標の一万円いかなかったら、お前を家から追い出すからな!それまでちゃんとやれよ!」 

 言われなくても私はちゃんとやっている。しかし、ちゃんとやっていても、できることとできないことがある。今回できなかったのは、完全に私のせいだろうか……。

「平日の夜、土日に一日一万円行かないようじゃ、学校なんか行かせてる場合じゃねぇ。来週までに一日一万円以上売れなかったら、お前は学校を辞めて電池売りに専念しろ」

 父のこの言葉は、今後の私に大いなる不安と絶望をもたらした。しかし、家庭の事情を考えると反論はできなかった。

 次の夜も学校が終わった後、渋谷に直行した。夕方から夜にかけての渋谷は相変わらず人通りが多い。

「電池はいかがですかー、いざという時に役に立つ電池はいかがですかー」

いつもの通り、私の売る電池に興味を示す人は出ない。出てくれるはずもない。そのまま、意味のない販売をやっている時、急に「チリンチリン」という音が聞こえた。自転車のベルか――その時だった。

「どっけー」

「きゃーっ!」

 歩道を凄まじいスピードで走っている自転車が私の体にぶつかりそうになったので、ぎりぎりで避けた瞬間、体勢を崩し、地面に倒れた。売り物の電池も籠から全部飛び出て、歩道上に広く散らばった。

「大丈夫ですか?」

 付近を歩いていた若い高校生くらいの男の人が声を掛けてくれた。

「だ、大丈夫です……」

 膝に痛みを感じながらも、辛うじて起き上がろうとした時、その人は言った。

「膝を擦り剥いてるじゃない。近くの病院に行って手当してもらった方がいいですよ」

 道理で痛いと感じたわけだ。右膝に擦り傷ができ、血がぽたぼた垂れている。

「近くに病院があるから、そこに行こう。一緒に連れて行ってあげるよ」

 その言葉に、私はドキッとした。

続きは次節(3)にて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ