防御:消滅
〜深淵の森〜
レミィ(?)の暴走が止まらなく死んだと思ったゾエラだが、そこにルルマとダズが参戦してくれた。
そのおかげでゾエラは命拾いし何とか生きている状況だ。
「跪け」
「……っ!!」
レミィ(?)はルルマが放ったその言葉を聞くと、膝が地についてしまい身動きが取れない状況になった。
その間にダズは剣をズアッと持ち上げ、レミィ(?)に斬り掛かる。
「待って!殺さないでって……!!」
「バカてめぇ、あんな程度じゃ死なねえに決まってんだろ」
「でもっ……!!」
「うるせぇな、黙って見とけ雑巾」
ドォンという音と共に衝撃波が走り、土埃が舞う。
視界が悪く二人の状況が分からない。
ゾエラは立ち上がりレミィ(?)に向かって走ろうとする。
だがルルマはそんなゾエラの腕を掴み動きを止めた。
「おい、黙って見とけっつったろ」
「見れるわけないでしょ!?離して!」
「はっ、昔に比べて随分と生意気になったな」
「っ!!この状況でまだ私を……!?」
ルルマはゾエラの腕を離し土埃の方に指を指す。
それに釣られて指している方向に向くゾエラ。
そこにはおでこで剣を受け止めているレミィ(?)がいた。
ダズはルルマの元まで下がり、剣を捨てた。
「てめぇがそのまま突っ込んだら死んでいたぞ」
「っ……」
「ルルマ、もう一度能力をかけろ。その間に錬成して動きを完全に封じる」
「しゃーなしだぞ」
ゾエラは二人の連携に息を飲むことしか出来なかった。
それと同時に自分の弱さを知ってしまう。
ゾエラはその場から全く動けなくなってしまった。
ルルマが能力をかけ、ダズが攻撃する。
繰り返しになってしまう為ダズの寿命がどんどんと減っていく。
「くそっ……こいつ固すぎんだろっ!?」
「全く歯が立たない……!」
ルルマ達は息を荒くしながら、次の攻撃を繰り出そうとしたその時。
後ろからか細い声が聞こえてきた。
「……げよう」
「あ?なんか言ったか?」
「……逃げよう」
「聞こえないぞ、もう少し声を上げてく_______」
「逃げようってば!!!!!」
ゾエラは大声で二人に怒鳴る。
涙目にしながら立ち上がり二人の腕を掴んだ。
「もう無駄なの!!私たちの力では勝てない!」
「何言って……」
「こんな所で寿命なんか削らないで!!早く戻って作戦考えようよ!!」
もうゾエラの心はズダボロだった。
レミィを救えずに操られてしまったこと。
ルルマ達の言うことを聞かなかったこと。
何よりも、初めて己の弱さを感じたこと。
マーチと戦った時に克服したつもりだった。
だけどダリアと戦ってからずっと心残りだった気持ちがようやく分かった。
私、弱いんだ。
「……もう……逃げようよ……」
「じゃあてめぇ一人で逃げろ」
「なっ……!?」
「フルトロンにてめぇの仲間が待ってんだろ。早く行け」
ルルマはレミィ(?)を見てゾエラの質問に問いかけていく。
「……でも私だけじゃ……っ!」
「新人戦の時、てめぇんところのリーダーが命かけて仇取りに来たんだ。てめぇみてぇな命をかける価値もねぇやつにな」
「仇を取ってくれた仲間を裏切るのか?」
「っ……!」
新人戦の時、ルルマとダズはタケル達がゾエラの為に戦っていたことを鮮明に覚えている。
今こうして言葉をかけているのも、タケル達の行動を無駄にしたくないためだ。
「次はてめぇがあいつを止める番だ」
長々と喋っているとレミィ(?)がこちらに近づいてくる。
何やらブツブツ言いながら一歩一歩、ゆっくりと。
その姿を見たゾエラは涙をグッと堪えて目元を擦る。
そうだ。みんな私の力を信じてるんだ。
みんなが私を助けてくれたんだ。
それ相応の……ありったけを……!!
「ルルマ君、レミィちゃんの動きを止めてくださいっ……!!」
「……やる気になったかオンボロ」
「オンボロじゃない!!」
ルルマとダズは互いに見つめ合いニヤリと笑った。
ゾエラがレミィ(?)の前まで走っていき、拳を握り力を込めた。
「レミィ・ヴァン・ボルザーク、喋るな!」
「!!」
レミィ(?)が口を開こうとした瞬間、ルルマの能力によって声が出なくなっていた。
ゾエラの拳が当たろうがどんな攻撃も絶対無効化するレミィ(?)には叶わない。
だけどそんなのはどうでもいい、今はレミィ(?)の目を覚まさせるのが第一条件だ。
ゾエラの拳がレミィ(?)の顔面に強く当たる。
「目を覚ましてレミィちゃん!」
全く効いていない。
それどころかレミィ(?)は笑っていた。
「……ダズ」
「なんだ?」
「俺が長期戦は苦手なのは知ってるよな」
「……?」
衝撃波が走る中、ルルマとダズは2人で話していた。
唐突な質問に返答が困ってしまうダズ。
「使っちまうかぁ?秘密兵器」
「……ま、まさかお前……やめろっ!それを使うと暫く能力が使えなくなるぞ!!」
「こうでもしねぇとただの泥試合になっちまう。ここらで一発でかいのをかましとかないとな」
ルルマはポケットから小型のナイフを取りだし、自分の喉元に傷を入れた。
その血を右手で抑え、口を開いた。
『レミィ・ヴァン・ボルザーク、能力解除』
甲高い音が鳴り響いた瞬間、レミィ(?)の完全防御が解除されゾエラの拳が当たった。
「っ……!!」
「あ、当たった……!?」
ルルマの限定解除。
喉元に傷を入れることによって命令するラインが格段にアップする。
通常状態で能力解除と命令しても発動は出来るものの、体への負担が大きくなる。
ならば予め負担をかけさせている状態で発動すれば変わらないと思ったルルマは、自己流の限定解除を生み出したのだ。
「オンボロ!さっさと決着つけろ!」
「う、うん!」
「がっ……ガアアアあアアアアあ!!!!!」
攻撃が当たったことにより、レミィの目から血が止まらなく暴走状態が始まった。
もう元のレミィには戻れないほど豹変していた。
「レミィ……ちゃん」
レミィがゆっくりとまるでゾンビのようにこっちに近づいてくる。
それと同じようにゾエラは拳を握り、レミィに近づいていく。
「……っ!!」
拳を振り上げ、レミィの顔面に向かって殴ろうとしたその時。
レミィがその場で倒れてしまった。
「……レミィちゃん!?」
「オンボロ!下がれ!!」
レミィが倒れた瞬間、後ろの方から人影がこちらに向かって歩いてきた。
ゾエラはその人影を見た瞬間、背筋が凍り動けなくなる。
ダズはゾエラを抱え、ルルマと一緒に森から出ていく。
「ま、、待ってよ!レミィちゃんが……!!」
「あいつはもうダメだ……!今は俺達が生き残らねえと……!!」
「離してよ!助けるって決めたの!レミィちゃん!!!」
どんどん遠ざかっていく。
手を伸ばしても、いくら叫んでもレミィは寝たままだ。
そのままレミィが見えなくなった。
「……もう倒れたか」
レミィの首を掴み、魔王はボソッと呟く。
「……呆気ない最後だったな。レミィ・ヴァン・ボルザーク」
魔王の右手が黒く光る。
その瞬間レミィの腹に穴を開け、鳥達が木から飛び立つ。
フルトロンにいたガルドは何かに気づいたかのように、深淵の森に振り向いた。
「どうした、ガルド」
「いや……何でもない」




