初任務_開始
⚠️童貞という単語が出ていますが、下ネタ・エッチな小説ではなく完全バトル小説になります。ご了承ください。⚠️
「能力わかったんですか!?」
再び集会所に戻り、先程対応してくれたお姉さんに伝えると驚いていた。
確かにこんな短時間で能力が分かったら驚くだろう。
「タケル君は草原フロアで初心者狩りをしていた人たちを追っ払ったんです!」
ゾエラは俺が行なった行動を自信満々に伝える。
するとお姉さんはパァっと笑顔になりハキハキと喋り始めた。
「追っ払ってくれたんですね!?ありがとうございます!!私達もあの人達には手を焼いていたので……」
ゾエラとお姉さんは2人で意気揚々と喋り始めた。
「……おい、あの人輩を追っ払った人じゃね?」
「ほんとだ、初心者狩りを倒した人よ……!」
草原フロアから帰ってきた初心者達が、俺を見て話題を広げ始めた。
ガヤガヤとだんだん喋り始める集会所の人達。
こんな短時間でヒーローになれた気分になるとは……。
「……ははっ、ど、どうも……」
すると奥から見覚えのある人物達が集会所に入ってきた。あのハゲだ。
「おぅ兄ちゃん!すっかり有名人だな!」
「あ、えっと……誰でしたっけ」
そう言うとハゲはポンポンと背中を叩き笑い始めた。
「ガッハッハ!!そういや自己紹介まだだったな!」
「俺はバロン!このフルトロンで1番の冒険者だ!」
パーティの前に立ち、腕を組みながら叫ぶ。すると周りにいた人達も腕を上げバロンの名前を叫んだ。
「バロンさん、人気なんすね……」
俺は周りを見渡しながらバロンに答えた。
「タ、タケル君!バロンさんを知らないの?!」
ゾエラも何故か手を挙げていた。
「バロンさんは魔王軍の旧四天王を倒した猛者ですよ!?フルトロンに住んでいれば常識ですよ!?」
ゾエラは目をキラキラさせながらグイグイと俺に近づいてくる。
「ねぇ、あなた……名前は?」
バロンの後ろにいた杖を持った女性がこちらに来る。
「……あ、えっと、鈴木タケルです」
そう言うと女性は杖を俺に突き付ける。
当然周りにいた人達もざわつき始める。だがバロンのパーティはビクともしなかった。
「なっ、なにを」
「勝負よ」
俺は突然過ぎて言葉の意味を理解出来なかった。
女性も目をギラつかせこちらをずっと見ている。
「バロンが目を付けた冒険者にはどれぐらい強いのか。バロン以外のパーティメンバー1人と戦ってもらうのがルールなの」
妙なざわつきも……それか?
ゾエラはあわあわしながら俺を見ている。
「10分後、草原フロアよ。あなたの初任務、私を負かせてみなさい」
杖を直し集会所を出ていく。バロンやパーティも俺に手を振り出ていく。
その瞬間集会所にいた人達は俺に飛びかかるように歓喜の声をあげていった。
「すげぇよお前!あのバロンさんに目付けられるなんてよ!」
「バロン様のパーティメンバーと戦闘するのが初心者の憧れなんです!!」
わちゃわちゃする中でゾエラだけはどこか不安そうな顔をしていた。
〜草原〜
「早く来ちまった。」
「……タケル君。私、凄く嬉しいんだ。会って短時間でパーティの人がバロンさんの人と戦えるとこを見れるなんて」
横で喋るゾエラは少しばかりかトーンが小さかった。
「バロンさんのパーティは全員強者揃い。タケル君が酷い傷を貰ったら……って考えると怖くなって……」
ゾエラはモジモジし俺の心配をし始める。
心配させたら可哀想だし俺は笑顔でゾエラに答えた。
「大丈夫だ。見たろ?あの頑丈さにパワー」
「……タケル君」
「並大抵の攻撃じゃ死なねえよ。たぶん」
そう話していると前からバロン含むパーティが来た。
「逃げずにここに来たことは褒めるわ。私の名前はウィドウ、魔法使いよ」
杖を取り出し上にかざす。すると上空の雲行きが怪しくなり始める。
「戦闘は突然始まるものよ!!しっかり身構えておきなさい……!!」
ビリビリと上空に稲妻が見え始める。
「私の能力はほぼ全部上級魔法よ!まずは手締めに…サンダーストライク!」
くるくると杖を回し地面に叩きつけると雷が俺の頭上に落ちてくる。
上級!?と驚く余裕もなかった。
咄嗟に俺はゾエラを押し当たらないようにした。
「タケル君!!」
ゾエラは俺の名前を叫ぶがゾエラに目をやる暇さえもなかった。
今回も出るか不安だが…やってやるしか……!!
俺は能力が出るようにと願いふんばった。
ジジッ…体に電流が走るも全然痛くなかった。
「……っと。やっぱ痛くねえな……」
ウィドウ含めバロン達もその様子に少し驚く。
ウィドウは杖を再びくるくるし始める。
「思った通り……この子は何か化け物級の能力を持っている……。私の1億Vを簡単に…」
「ではこれならどう!?フレアゾーン!!」
ボウっと音とともに俺の周りが炎で囲まれる。
ゾエラも熱すぎたのかその場から少し離れた。
ウィドウは杖をプルプルさせ俺の方をじっくり見る。
「……なんだこれ熱くねえぞ」
「!?……ちっ!!」
後ろにダッと引き、地面に文字を書き始めなにか呪文のようなことを喋り始めた。
「この世に宿る魂たちよ……そしてこの地に立つ人類達よ……我が魔法に力を貸してくれたまえ……!」
すると杖が光りだし、甲高い音が鳴り響く。
「ウィドウがこの魔法を使うとは……」
「余程の相手ってことだな、面白ぇなあの兄ちゃん」
バロン含むパーティはウィドウの焦り具合を見て少々苦笑いをする。
杖の上で東京ドームよりも大きい炎の球体が現れる。
ウィドウは思い切り俺に向かって球体を投げてきた。
「くらえ……インフィニティストライク!!」
上級魔法。魔法使いが長い年月をかけて、やっと完成させる事が出来る。彼女は生まれつき上級魔法使いの親の元に生まれた一人っ子だ。
みんなから魔女と言われ虐められていた。
そんな奴らを見返す為、彼女は学校をやめ毎日のように魔法の修行に取り組んだ。
彼女が23歳の頃。バロンに拾われパーティに入団。
バロンに認められるほどフルトロンで最強の魔法使いだった。
インフィニティストライク。彼女が持つ最上級魔法。
この魔法を使えば暫く魔法が使えないほどの最大火力。フルトロン内で1番最強と言われているそんな魔法を彼女は今、5年振りに使用した。
そんな最大火力にて最上級魔法を彼は。
「うわあぶな」
アホみたいな言葉を発し手ではたき打ち消した。
バロン含むパーティ、ゾエラ、そしてウィドウ。
そこにいた人達は驚くよりも唖然をしていた。
「"うわあぶな"……だとっ……!?」
バロンは座っていたが立ち上がり俺を見た。
「ウィドウさん、今のって切り札か?」
唖然としているウィドウに向かって歩いていく。
「正直俺もびびってるよ。能力脳筋すぎて」
俺はウィドウに目線を合わせるようしゃがむ。
「任務完了だな」
〜集会所〜
ゾエラは俺にジュースを買ってきてくれた。
「ありがとなゾエラ」
「いいですよ〜!にしてもあの最上級魔法を叩くなんて……化け物みたいな能力じゃないですか……!?」
ゾエラはジュースの缶を開け飲み始める。
「あれはぶっちゃけ死ぬかと思った……俺は一体なんの能力を持ってるんだ……?」
俺は自分の手を見て深く考える。
金棒を頭で砕く、殴られてもビクともしないし最上級魔法も叩き落とした。
『あるじゃないですか!取っておきの武器が!』
……これが俺の取っておきの武器なら、不明点ばかりだぞ……?
「君?……ル君?……タケル君?」
俺はゾエラの声を聞き我に返った。
「んぁ、あぁ……悪ぃ」
とにかく今俺の能力は……まぁド脳筋でいいか。
「あ、タケル君。そういえば明日、クエスト受けませんか!?」
ゾエラは依頼掲示板を指差し提案をする。
「そうだな。出来るだけ簡単なクエストで行こう」
最初からアホみたいな難易度はお断りだ。こういうのは初級から徐々に上がって行くのが普通ってもんだ。
「じゃあまた明日ですね!今日はもう遅いので私はこれにて!あ、明日10時にここで〜!」
スタスタァっと集会所を後にするゾエラ。
現在の時刻は21:30。
「あ」
俺はこの時まで考えていなかった。とんでもないことを忘れていた。
家が、ない。
「どどどど、どうする……!!」
ここの集会所は確か強制参加緊急クエスト以外23:00で閉まるんだ!
それまでに家を……いや違う無理だ!!家なんて買います。はいどうぞ。で終わる話じゃねえし!!
ゾエラの家に泊まるか?嫌でもそれは親御さんに失礼だな……くっそ!!
「野宿……だな」
もうそれしかない。
〜河川敷の橋の下〜
「はぁ……今日は色々あったな。ねっむ」
異世界転生1日目。フルトロンを魔王から守れなんて無茶を聞かなかったら、今頃俺は天国でグースカ寝てるんだろうな…。
「就活のメールも気にしなくて寝れるのは最高だな」
いつの間にか俺は瞼が落ちていた。
〜朝,8:40〜
「……まっぶし」
小鳥がなく声に川の流れる音、子どもが追いかけっこしてる楽しそうな声がする。
「んしょっと……」
立ち上がると横から視線を感じた。
じーっとこちらを見る髪が短い女性がいた。
「どわぁ!?」
俺は驚き尻もちを着く。流石にびっくりした。
「フルトロンに存在しない住人を発見。魔王軍の幹部と思われます。今から質問する内容にお答えください」
ロボット的な口調で俺に話しかけてくる。
「いやぁ、悪いな俺集会所向かわなきゃいけn」
「逃走を認知。始末します」
女性は右手を剣に変え俺に斬り掛かる。
でもいつもみたいに踏ん張れば……!!
目を開けると頬に違和感を感じた。
ジンジンと痛く手で確認すると血が出ていた。
「……っ!?」
「頬に損傷を確認。始末を継続します」
ま、待て……待て待て待て!!??
「ちょ、ちょっと待て!俺はフルトロンに昨日来た住人だ!鈴木タケルだ!!」
咄嗟に俺は頬を押え女性から逃げようとする。
それよりも踏ん張ったのに何故か攻撃を喰らった。
それの驚きがあまりにも恐怖で逃げることしか考えれなかった。
「……スズキタケル。集会所にいた初心者狩りを逃がした男ですか?」
「そ、そう!!それそいつだよ!!」
女性は剣を直しこちらに近づいてくる。
「失礼しました。見ない顔ですが噂で聞いていたので」
女性は左手で回復魔法を使い頬に当てる。内心まだドキドキして心臓が止まらない。
「私はフルトロン用量産型警備ロボット、CORE:01です。この度は申し訳ございませんでした」
深く頭を下げロボットの女性は俺を後にした。
「…あれ、治ってる……」
頬から血はもう出ていなかった。
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