再会
飲食店での出来事があってからというもの、なんとなく気になって何回か行ってみたが、彼女が現れることはなかった。
それから約1ヶ月後。
景色は淡いピンク色の4月となっていた。そしてとなりは学年が1つ上がり、高校2年。つまり後輩が出来るのだ。なんとなく、勉強も行事も人付き合いもこなし、気付けば先輩となるらしい。
入学式を終え、昨日から1年生の姿を見るようになった。学校を先生に案内されながら、これからを楽しみにしているようだった。私はあの時あんなに目を輝かせていたかなぁ、なんて物思いにふけたりした。
事が起きたのはそんな日の2時間目。
2、3年生は通常授業で、となりは体育の授業だった。体育着に着替え、皆で校庭に向かう。春とはいえ、半袖で外に出るとさすがに寒かった。先生も皆んなの様子を見て、
「1周校庭を走ってあったまってこーい」
と声をかけた。
各々が友達と話しながら、あるいは1人で淡々と走り始める。となりも集団についていきつつも、誰かに話しかけたりはしなかった。すると後ろからスピードを合わせ、横に並んできた女子がいた。堀内いろはだ。身長は、155cmのとなりより小さく、ボブショートのサラサラした髪を揺らしながら笑いかけてきた。
「おはよ!一緒のクラスで良かったぁ」
…かわいい。こんな無邪気で天然無垢な笑顔を向けられたらどんな頼みも聞いてしまいそうだ。寒さで真っ白な肌の所々を赤く染めているからか、余計に愛おしい。
「となり?何ニヤニヤしてるの」
「や、別に。」
そっけなく返しながらも口角は上がっていた。となりはお世話にも友達が多いとは言えない。少し内気に見えるせいなのか、あまり話しかけて来る人がいないのだ。そんな中、元気に挨拶をしてくれるいろはの存在はとてもありがたいものだった。
「とっとなりぃ、速いよ」
「…いろは、陸上選手みたいでかっこいいなぁ?」
「ほら、となり行くよ!」
単純だ。単純過ぎる。だからかわいい。推せる。
そうこうしながら走り終えて、あることに気づく。
「水筒教室だ…」
「ちょっととってくる」
先生に許可を得て再び走り出す。しかしすぐに息が上がり歩き始めた。校舎内に入り教室に近い階段を目指して1階を歩く。横を見れば、新入生が自己紹介をしていた。制服をきちんと着て、緊張している様子にクスっと笑った。
「波川衣瑠です。45歳」
聞き覚えのある声だった。色素がなくサラサラとしていて、それでいてよく通る声。間違えるわけもない。あの子だ。
しかも45歳って…なに?クラスメイト達もどよめいていた。
「…の猫を飼っています。よろしくお願いします」
一瞬の静寂。それから巻き起こる笑い。なんだあれは。なんなんだあの子は。普通じゃない。でもやっぱり思うのは、
「綺麗な子だなぁ。」