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出会い

間違い、読みづらさ等ありましたら申し訳ございません。

「信じらんない!」


心底軽蔑したように発している言葉に滲み出る希求。

睨みつける目に含まれている熱。


「なに急に。びっくりした」


今まで見ないようにしていたが思わず振り返ってしまった。ごちゃごちゃした感情を抑えきれずに叫ぶ彼女とは対照的に、その前に座る人物は機械のように無表情だった。


正確に言えば口元は笑っている。じゃあ目元が笑っていない、所謂アルカイックスマイルかと聞かれればそれも違う。少し切長なものを柔らかく歪ませ、泣き出さんばかりの彼女を見つめている。


傍から見れば、仲の良い友達とすれ違い、口論になってしまった。そんな、誰でも通りそうな、穏やかな日常に溶け込む刺激。少し感情が高ぶってしまった友達をもう1人が宥める。そう見えるのだろう。


実際、先程まで少し息を殺して見守っていた飲食店の客達は、ポツポツとまた、各々の会話を始めた。

やがて全ての人が関心を無くし、また元の日常へと帰って行った。


私1人を除いて。


私は冷ややかな微笑を浮かべる人物から目が離せなかった。あの人は笑っていない。何も感情がない。あれ程冷たい人間を私は初めてみた。心が冷えきっている。まるで温かさなど知らない。


勝手ながらも確信があった。ただの推測だとか言われてしまえばそれで終わり。だが不動の冷たさを確かに感じた。


「…私の事、好きって言ったじゃん」


「うん、好きだよ。」


「じゃあどうして他の人にも言うの?どうしてあなたから何も言ってくれないの?どうして…」

「他の人にキスするの?」


…付き合っていたのか。別に女の子同士の恋愛に偏見もないし珍しくも思わない。それなのにこんなに不意を突かれたように驚いてしまうのは、あの冷たさのせい。


「してって言われたから。」


「…は?」


「好きって言われたから好きって返した。キスしてって言われたからキスした」


…あぁ、やっぱりそうなんだ。あの人は愛を知らない。

すれ違うのも無理はない。寧ろそれが当然だ。


「なにそれ。え、ごめん、意味がわからない」

「頼まれたら誰にでも、なんでもするの?」


「そうだよ。」


聞きたくなかった。そう彼女の顔が言っていた。そして、やっと、気がついたみたいだ。


自分もその中の1人だと。


何も言わず、振り返らず、彼女は出ていった。

その姿を目で追うこともせず、頬杖をついて、微笑を貼り付けたまま外を見ていた。それを、


とても綺麗だと、思った。





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