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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
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STAGE☆09 「ぼっちと合同作戦」



「俺はなぜまた、ぼっちで戦ってるんだぁ~!?」


 いや、なぜも何も、これは誰の所為でもない。自分の所為でもないと大声で言いたい。


 陽も登らぬ早朝から叩き起こされ、この日の行動を聞かれたかと思うと、馬車に押し込まれた。


 4頭引きの早馬車は、替え馬も用意されてずっと飛ばす車内、走り続けながら朝食も昼食も済ませた。


 そうして王都にたどり着くやいなや、休むことなく王宮へ連れて行かれ、そこに集められた冒険者達と共に急遽、大量発生したオーク討伐に参加する事になってしまったギブン。


 敵は数えきれぬほどの凶暴な魔物の群れ。


 オークの目的は、小国グレバランスの王都にほど近い、小さな山の森林に済むエルフの里。


 エバーランス領主に世話になっているギブンは、齢13歳である領主令嬢、フロワランス・フォン・エバーランスから父の名代として、魔物討伐の依頼をされて了承した。


 ギブンは準備を整える暇も与えられずに、用意周到な討伐隊と共に王都を後にした。


 まではまあまあ良かったのだが。

 馬郡に交じり、自らの足で走っていたギブンは、魔物の数があまりにも多すぎて、しかも仲間がいると言

う状況に、マーカーをうまくセットできずに焦る。


 誰にも声を掛けず、立ち止まってセット画面を呼び出すと、絞った範囲の魔物を赤、味方を青に表示するように変更した。


 旅の友であるはずの妖精ピシュが、質問に何も答えてくれないので、女神様から賜ったスキルを持て余すばかりのギブンだが、ここのところ、ようやく少しだけ扱えるようになってきた。


「けどこれで本当に敵味方識別が上手くできるのかな? ……そうだ! 討伐隊が魔物の群れを見つける前に、山の南側にたどり着いて、騒動を起こせばオーク共を混乱させられるぞ」


 という予定だったはずが、気が付けばオークが大量発生している、所謂ところの“巣”に突っ込んでしまっていた。


 オークの巣は山の南側、麓にある洞の中。ゴブリンと言い、魔物というのはどうしてこう、陰鬱な場所を好むのか。


 索敵範囲を絞ったままだった事を、うっかり忘れてしまっていたギブンは、敵の数を見誤り、信じられない数の敵を1人で相手する事になってしまった。


「不味いぞこれは!? 流石にこの数と真正面から戦ってしまえば、いずれ魔力が底をついて本当に死んでしまう。どうにか工夫して、攻撃をなるべく受けないようにしなければ!」


 ギブンが女神様より賜りし“ソード・オブ・ゴッデス”は、どれだけの魔物を斬っても切れ味が落ちない神秘の剣。


 同じく女神様から頂いた“奇跡の鎧”は経験値が倍加される伝説級の武具。


 ギブンは闘いながらステータスを調整する。討伐隊がこの巣に気付いてくれるまで、負けるわけにはいかない。






 討伐隊を指揮するA級冒険者、オリビア・シェレンコフは隊を二分し、片方の隊をB級冒険者、ブレリア・アウグハーゲンに預けた。


 D級以上の冒険者で構成された討伐隊の総数は38人。トップクラスがほとんど不在ではあるが、王都とエバーランスではそれなりに名の売れた冒険者達。


「38人? 1人足りないではないですか」


 その1人がギブンだと知って、オリビアはかなり動揺した。


「なんでリーダーのくせに、脱落者に気づかなかったんだよ」


「それはあなたも同じでしょう。それにまさか彼が馬にも乗らず走っているなんて、誰が思いますか!」


「そいつは同感だ」


 期待のルーキーを本当は探しに行きたいが、しかし士気の高められた討伐隊の足を止めるわけにはいかない。


「それじゃあブレリアさん、そちらはお願いしましたよ」


 オリビアは冒険者18人を預かり、急いで山林の西サイドへ馬を走らせる。


 東西から敵を討ちつつ、エルフの里で落ち合う作戦。


 ギブンには自分の傍らについてもらって、フォローをしてもらうつもりだったのだが。


「まさか!? ブレリアさんが隠していて、ギブンさんを自分の側に引き寄せたのでは?」


 あの粗暴だが、見た目だけは自分には劣るけれど、かなり美人な怪力女。


 彼女の人気はギルドを二分して、オリビアの票を下げている。


「ブレリアさん支持者に匿わせて、私を出し抜こうということもある……か」


 別にオリビアはそこまで、ギブンを気に掛けているわけではないが、何かと絡んでくるブレリアには負けたくない。


「皆さん、エルフの里が心配です。急いで魔物を排除して、合流地点に向かいますわよ」


 ブレリアもまた、似たようなことを考え、両隊のエルフの里到着は、予定よりかなり早まったそうだ。






「ちょ、ちょちょっと、まっ、待って」


 ギブンの孤軍奮闘は、短時間でかなりのオークを動かぬ肉塊に変えていった。


 まだまだ魔力は十分。


 防御はおろか、身体強化もまだまだ余裕で続けられる。


 しかし体は動くが、かなりの空腹感がギブンを疲弊させる。


 異次元収納には討伐隊全員の分、三日相当の調理済み食料を用意してある。


 しかし敵は次々と襲いかかってきており、食べている余裕なんてどこにもない。


「ダメだ。目が回ってきた。俺は食うぞ。そうだ、戦いながら食うんだ」


 両手持ちの剣を片手持ちにし、左手を異次元収納に突っ込む。


「こいつなら食べながらでも!」


 濃い口に味付けしたスペアリブを取り出しかぶりつく。


 口いっぱいに肉を頬張ると、仕入れておいた果実酒を胃の中に流し込む。


「よし、これならもうしばらくは戦える。早く巣の中にあるはずの、発生源を特定しなくては」


 エバーランスの冒険者ギルドでは、魔物の大量発生はある程度で落ち着き、発生源の異次元ゲートは消滅すると教えられた。


 しかしここのオークは未だ残数が把握できない。おそらくは今もなお増え続けているのだろう。


「先ずはゲートの消滅だ。そうすれば、少しは休憩も取れるはず」


 ようやく使い方のコツを得た魔法も駆使して、討伐した数は78体。


 予定ではとっくにエルフの里に到着していて、野営の準備を始めている頃だ。


 夜のオークの行動に警戒したスタートだった。外はもう陽も暮れているはずだ。


「合流地点に行って、ゆっくりしたいなぁ。けどゲートの消滅を確認しなくちゃ、ここも離れられないよな」


 オークの行動もパターンが変わったのか、ギブンを執拗に襲う個体数が急に激減する。


「今なら結界が張れるかな」


 入口が一つの横穴を見つけ、そこを拠点として、休憩を挟みながらゲートを探すことにする。


 地図を見れば、洞の1/5は踏破できている。


 朝までには全てを確認して回れるだろう。


「よし、この結界なら、オークレベルの魔物は入って来られないよな。テントを張ったら、もう少し見回らなきゃな」


「きゃーーーーーっ!?」


 絹を裂くような悲鳴。そんな言葉があるって聞いた事あるよなぁ~と、思い浮かべてボーッとしてしまったギブンは、すぐに我に返って声のした方に走り出す。


「あれは、エルフ? 危ない!?」


 拠点からは見えなかったが、直ぐ傍でオークに襲われるエルフを発見し、ギブンは風魔法で魔物を討ち取る。


「……」


 声を掛けようとしたが、何を言えばいいか分からない。急に怖くなって回れ右をするギブンに。


「あっ、ありがとう。助かったわ」


 向こうから近付いてきて、両手で両手を握られて感謝された。


「あっ、うっ、あっ!? 怪我をしてるじゃあないか?」


 血を見たギブンは、却って冷静になって傷口を確認する。


「た、大したことないのよ」


「ダメだ!」


 ギブンは安全なところで治療しようと、彼女をお姫様抱っこにし、結界内に連れて行った。


「出血がひどいな。再生(ヒーリン)……、これで大丈夫か? 念のために治癒(キュアー)もしておくか?」


「平気平気! ……えっと、はい。キュアーもお願いします」


 目を見開いて睨んでくるギブンの眼圧に押されて、エルフは治癒も受け入れた。


 再生魔法で傷ついた部分を元に戻してもらい。神経や精神のダメージを治癒魔法で癒してもらう。


「あ、ありがとう。もうダメかと思っちゃった」


「いや、その……こちらも……」


 落ち着いたところで溜息をついたら現実が鮮やかになった。いつものしどろもどろギブンになってしまう。


「まさかこんな所に人間がいるとは思わなかったわ」


「もしかして、オークを? 一人で?」


「ええ、そうよ。私はウルエラ=エイプナ。ヒーデの森にあるエルフ族の里、エイプナの戦士よ」


「里の名前と同じ?」


「えっ? ああ、エルフは自分の名前と、生まれた里の名前を相手に告げるの。人間みたいに名前で生まれがどうとか、くだらない諍いの種を口にしたりしないわ」


 エルフは家名ではなく、部族名を名告るという事だ。


「あなたは?」


「ギブン……、ネフラ。エバーランス、冒険ギルド所属だ」


「ああ、里長が言ってた、討伐を手伝ってくれる冒険者の?」


「……おそらく」


「おそい! まったく今まで何をしてたのよ。3日も前に救援要請を出したって、里長は言ってたのに、なかなか来ないから、私1人で突っ走っちゃったじゃない」


 そんな事は知ったこっちゃない。


「はぁ……」


 焦って入った洞はオークの巣。


 孤軍奮闘していたら出会ったエルフは、ギブンの苦手なタイプでした。

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