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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
72/120

STAGE☆72 「ぼっち男の出番はまだ……」



 ゲートを破壊した事で、援軍の心配はなくなった。


 魔族はこれまで何度も作戦を邪魔されてきた。


 この妨害行動は想定済み。ピシュとブレリア目掛け、一斉に襲いかかってくる。


 こんな時にギブンのように索敵スキルを使って、敵をまとめてマーキングし、一斉に魔法をぶつけられたら楽だったのだろうけど、ピシュにできるのは、視界にいる相手の目前に魔法をぶち込む事だけ。


「よし! ドラゴン以外のゾンビはやっつけたよ」


 しかし魔人たちの動きは早く、1人としてピシュの魔法が当たる者はいなかった。


「おうおう、焦ってる焦ってる。そりゃいきなり目の前に魔弾が現れるんだもんな。それじゃああたしは、急いでギブンを呼びに行ってくるから、足止めよろしく」


「ちょっ!? 本気じゃあないよね」


 本気も本気じゃあないもない。


 今の遠距離魔法のお陰で、魔人は尻込みをしている。


 ドラゴンゾンビがどれだけの力を持っているかは分からないが、これは千載一遇のチャンスだ。


「残されるのがイヤなら、お前も外に向かって走れ!」


 どうやらブレリアは本当に逃げに転じるようだ。


 ピシュは一瞬だけドラゴンを見上げて、ブレリアの後を追う。


 クーヌフガルーの走力、翼を広げたホワイトウイングタイガーの飛行速度に、魔人が追いつく事はできない。


「見えた! 出口だ。んなっ!? こなくそ!」


「外に……出られない」


 外の明かりは中に届いているのに、目に見えない壁が2人の道を閉ざす。


「やつらの仕業か? めんどうくさい」


「えええっ!? これって結界って言うんだっけ? どうしたらいいの?」


「おまっ、魔法使いなんだろ? エキスパートなんだろ?」


「いや、私は攻撃呪文専門だから、そんなチマチマした解除とかはできないよ」


 結界に焦る2人に追いつく魔人。


 ドラゴンは大きさが邪魔してだろうか? ここにはいないが、恐らく厄介なのはゾンビなんかではなく、目の前の黒い顔の8人。


「どうだピシュ、お前ならどう戦う?」


 1人1人の魔力の強さがプレッシャーとなって圧し寄せる。ブレリアは冷や汗を流して、相方の様子を窺う。


「強いよね。ぜったいに。1人でもトンでもない強さだった。それもあの時よりも高い魔力持ちが8人だなんて」


 中でも魔人の中には2人ほど、戦ったら無事ではいられなさそうなのがいる。勝てる自信はない。けど諦めはしない。終わったりできない。


「なぁ、ピシュ。結界が張ってあるのは入り口だけじゃあないのか? 岩を砕いて外に出ればいいんじゃあないのか?」


「……結界って、だいたい球形に発生するよ。逃げ場なんてないんだよ」


「さいで……」


 きっと並の人間が張った結界なら、畑違いのピシュでも、強引に払いのける自信はある。


 しかしこの結界は構造が人間が作るものと違い過ぎて、どうにも破壊できそうにない。


 ピシュは相手の魔力に集中する。


「一番奥の2人」


「ああん? なんだそれ!? いいからお前も戦えよ!」


 追い込まれる2人を、4人の魔人が剣を手に襲い来る。


「卑怯な連中だ。女相手に恥ずかしくないのか!」


 魔人はギブンやバサラから聞いていたよりも強く、ブレリアは岸壁を背にし追い込まれてしまう。


 狭い洞窟では大きな戦斧は上手く振り回せない。


 ブレリアはハクウを纏い速力を上げる。2人からの同時攻撃を魔法で硬化した体で正面から受け止め、カウンターの爪攻撃で魔人を切り裂いた。


「すごいすごい、やるじゃないブレリア」


「ピシュ、おまえなぁ!? ……いや、なんだ、流石だな」


 傍観しているものと勘違いして非難するが、よく見たらブレリアが倒した、後ろにいた2人が真っ黒焦げになっている。


 ピシュもピントを呼び戻して、遠距離魔法攻撃、魔人は内部から焼き尽くされた。


「これで後は6人。……じゃあないや、すまないピシュ、あたしの攻撃は浅かったようだ」


 ハクウの後ろ足が靴のようになり、ブレリアはそれを履くと、更にスピードを上げて立ち上がる敵にトドメを刺す。


「へぇ、やるじゃあないか。人間風情が」


「ホントぉ~、いったいどうやったの? 魔法をそんなに便利にしちゃうなんて驚きぃ~」


「お前らじゃあ、同じ目に合うだけだな。相手が人間だからと侮るな。下がっていろ」


「あなた達、結界の維持、手を抜いたらダメよぉ~」


「ってピシュ、もしかして一番奥のって?」


「だから結界を張っているんだってば」


 2人の前に歩み出してきたのは2人の魔人。


 魔人は肌は黒、髪は灰色で見分けるのが難しいのだが、この2人は特徴的だ。


 1人は大振りの剣を片手で振り回している、短髪で長身の巨乳女。日々鍛えているブレリア以上の筋力の持ち主である。


 もう1人は巻き髪にした縦ロール。顔立ちや体系からして子供かもしれないが、上位らしい振る舞いから、成人しているのかもしれない。両手にはタリスマンの付いたグローブ。ピシュは直感で魔女と見抜く。


 2人の魔力の高さは、ここにいる魔人の中で群を抜いている。


「こんな狭いところでそんなデカいもん振ろうってのか? お前ももっと広い場所の方がいいだろう?」


「はん、別にあたしはどこでもいいぜ人間、場所なんてどこでもな! どんなやつもあたしの前じゃあ数秒も立っていられないからさ」


 ブレリアも戦斧を拾い上げるが、どちらの武器も狭いところで振り回すには不向き。


 魔人の剣士はそんなのは関係ないと自信満々だが、その考えは両者の刃がぶつかり合った瞬間に変わってしまう。


「面白れぇ~」


 狭い中での戦いはもう一つ。


「もう、なになに厄介な子! その離れた場所に魔法を出すのやめなさいよ」


「しょうがないじゃない! ここで派手な魔法なんて使ったら、生き埋めになっちゃう。それよりもあなたのお腹をボカンとする方が安全でしょ」


 どう聞いてみてもピシュの方が悪役的発想だが、彼女の遠距離発動魔法は、魔法が顕現する直前に縦巻きロールが掻き消してしまう。


「あなただって、厄介なスキルもってるようだけど?」


「あんたの凶暴さに比べたら、かわいいものでしょ」


 ピシュは奥の結界を張っている2人を狙うが、それさえも阻害されて上手く魔法が発動しない。マジックキャンセラー、死ぬ前にやっていたゲームでも重宝したし苦労もしたスキルだ。


 今のピシュは使えないスキル。どうにか場所を変えて大技で勝負をつけたい。ピシュの索敵スキルが発動する。


「やっぱりここ狭すぎ! 面倒くさい!」


 ピシュは魔人に魔法を放った後、地面に大きな穴を開けた。


「ブレリア、こっち!」


「あん? おぉ……」


 足を止めての鍔迫り合いはキモを冷やす。できる事ならもっと大きく立ち回りたい。


 ブレリアは事情の説明も求めずにピシュを追う。


「へへっ、一瞬だったが、このあたしに力で勝つとはな」


「わたしたちへの攻撃は囮ぃ~? バカにしてぇ~、逃げ出したのぉ~? 外には出られないからって、また下に行っちゃったりしてぇ、なんなのぉ?」


 ピシュ達が向かったのはゲートがあったエリア、あそこにはまだドラゴンゾンビを残している。


「あんた達はここで、あいつらが逃げないように注意してな」


「うんうん! わたしたちはぁ~あいつらの首を取りに行くけど安心してねぇ~。わたしが作ったアーティファクトをぉ~、きみに貸してあげるぅ~」


 魔道具を一人の部下に渡すと、縦巻きロールは短髪剣士に続いて穴の中へ。


 剣士は自由落下で下層へ、魔法使いも宙に浮いて降下する。


「おい、ドラゴンがいないぞ」


 2人が降り立ったのは、大きな空洞のまだ高いところにある足場。ここはドラゴンの頭がちょうど見える高さになるはず。


「えっ、なんでぇ~? ここの瘴気なら消滅なんてぇ~するはずないよぉ~」


「つまりは先に行ったあいつらが、何かをしたって事だろ?」


「確かにあの魔法使いの子はぁ~普通じゃあなかったけどぉ~、ゾンビ化したドラゴンだよぉ~」


 ドラゴンと正面から戦って、討伐できる冒険者はあまりいない。それが1人~2人でとなると皆無に近い。


「しかもぉ~ゾンビだよぉ~、普通じゃあないんだよぉ~」


 ゾンビ化したドラゴンは、生前よりも能力が大幅に向上する。


 しかし欠点も生まれる。当然野生の勘などは失われており、傷にも鈍感で動きも遅くなる。


「どうだ? お前なら単独であいつらを倒せるか?」


「それは問題ないよぉ~。だってあの子達はぁ~わたしの拘束具でぇ~従わせてるんだからぁ~」


「そう言う意味じゃあない。敵として、正面から倒せるかを聞いているんだ」


「無理じゃあないと思うよぉ~。けどこんなに短時間でって言われたらぁ~面倒かなぁ~?」


 かく言う剣士の魔人も、時間を掛けていいなら問題ないという。


「けどぉ~あの離れた場所に魔法を出せるあの子ならぁ~、やれちゃっても驚かないかなぁ~」


「あれはなんなんだ? なにをどうすれば、あんなことができるんだ?」


「さぁねぇ~。捕まえて拷問でもすればぁ~聞けるんじゃあないぁ~?」


 物騒な事を話ながら、2人の魔神はピシュとブレリアの姿を探す。


「いたいた、逃げも隠れもしないで、突っ立ってやがる」


 2人は燃え尽きたドラゴンゾンビの灰の上に立っていた。ドラゴンは一瞬で焼かれたようだ。


「待って待って、もしかしてあれがあの子達の成れの果てぇ~? それだけの火力が出せるって事ぉ~?」


「おいおい、どういうことだよ。何に焦ってるんだ? お前は」


「ええ? 焦ってなんかないよぉ~。だってこんなにワクワクした事なんてぇ~わたしないもん。あの子と遊べるんでしょぉ~? 壊しちゃってもいいんだよねぇ~?」


「あーーーぁ、好きにすればいいけど。……捕まえて拷問するんなら、ほどほどにしろよ」


「大丈夫だよぉ~。最悪ゾンビにしちゃえばぁ~いいんだからぁ~」


 魔法使いはありったけの魔弾を眼下に投げ込み、剣士は大剣を抱えて飛び降りた。

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