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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
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STAGE☆06 「ぼっちの討伐隊」



 ギブンはエンザの葬儀どころか、夜のお別れ会にも参加する事もできず、町を出たのは領主様からの直接の依頼がためだった。


 冒険者登録を済ませ、昼食をエレラと共に街中で入ったお店で済ませて、屋敷に戻ると待ちかまえていたフランとナビアに連れていかれた執務室で、仕事を頼まれて即出発となったのだ。


 領主オバートからは、2人のDランク冒険者が先行していると言われたが、馬をとばす2人よりも、自らの足で走るギブンが先に目的地へ到着する。


「ここで間違いないよね。ゴブリンの出入りもあるし」


 フランお嬢様達を襲ったゴブリンの寝床があると、森の入り口で足止めをしてくれた護衛団の生き残り4人は、今朝になって歩いて町まで戻ってきた。


 彼らから森の外れの洞窟から、大量のゴブリンが出てきた。と報告があった場所とも一致する。


「おい兄さん、あんたがギブンか?」


「ひっ! ……ああ」


 途中で追い抜いた馬に乗っていた2人だ。


「冒険者ギルドから依頼を受けた時に聞いたんだが、あんた本当にFランクなのか?」


 厳しい表情のモヒカン男が、威圧的に聞いてきた。


「本当だ」


「ちっ! 依頼主からの条件だって話だが、邪魔だからここで待ってろよ」


 後ろの黒髪男も同じ表情で首を縦に振る。


「領主の命だ」


 ギブンは精一杯の返事をした。飛ばされるガンを受け止めることはできない。


「じゃあ勝手に死にな」


 新人の目も合わせない態度に悪態をついて、男達は洞窟に入っていった。


「……はぁ~、また1人か。でもしょうがないよな。確かに最下級ランクの人間なんて、普通は足手まといにしか思わないもんな」


 知り合いでも何でもないのだから、彼らの態度は当たり前なのだ。


「まぁいいや。この洞窟に討伐対象がいるってことだよな。中のMAPもない状態だけど、索敵検索!」


 スキル使用にアイコンを通さずとも、音声入力で発動できることを知った。索敵対象はもちろんゴブリン。


 大小反応もそれぞれ違えど、その数は255匹。


 今ギブンのいる一番近い群れの数が減っていく。


「へぇ、言うだけの事はあるんだ。けどたった2人で、この数を片付けられるもんなのか?」


 実はお嬢様の護衛をしていた生き残りは、嘘の報告をしていた。


 あの時に遭遇した100匹以上のゴブリン。そのほとんどを倒したと言っていたそうだが実際は、馬車を逃がした後、十数人いた護衛団は散り散りに逃げ出し、統制のとれたゴブリン達に殺されてしまった。


 逃げ果せた4人を除いて。


 逃げのびた護衛がゴブリンの巣を見つけたのも、たまたまの事だった。


「ゴブリンの巣は50匹ほどの群れがほとんどで、百を超えるなんて希な事、護衛が100匹以上を倒したとすれば、残りは大したことない。領主様はそう言ってたんだけどな」


 邪魔をするなと言われたギブンは、洞窟入り口から動くことなく探索を続けた。


「あの2人、引き返してくる」


 二つ目の群れはさっきの3倍、22匹を前にDランクは逃走した。


「邪魔なんだよ。どけガキ!」


 モヒカンはギブンを押しのけて、黒髪と共に走り去っていった。


「流石は経験豊富な冒険者だ。お見事な引き際だな」


 ギブンは少し考えて洞窟内に入った。


「一つ一つの群れは多くて25、6匹くらい。群れの数は18。これならどうにか各個撃破できるんじゃあないか」


 昨日の森での戦いを考慮に入れ、ギブンはDランクの2人が逃げ出した二つ目の群れを、あっさりと片付けて先に進む。


「この剣、本当にすごいな。ソード・オブ・ゴッデス! 名前に負けない名剣だな」


 耐久力78程度のゴブリンなら一撃で討ち取る事ができる。


 ただ洞窟内は狭くて長い剣を振り回すのは難しい。


 ギブンの筋力と剣の切れ味なら、岩を斬り砕くのも簡単だが、下手に岩壁を傷つけて崩落したらゲームオーバーだ。


 同じ理由で土魔法は使えないし、閉鎖された空間で火魔法なんか使ったら、酸欠になり窒息しておしまいだ。


 水魔法にしてもここで使って、水の逃げ道がなかったら水没する事になる。


「結局使えるのは風魔法だけだけど。この剣の魔石のお陰で、致命傷を与えられる威力の風刃ウインドカッターが出せるもんな」


 洞窟内を歩いた分だけMAPが埋まっていく。


 時々少人数で小さな穴に身を寄せているのは、身ごもった雌のゴブリン。


 悩みに悩んだがゴブリンの凶暴性を考えたら、群れごと排除する必要があると思い、容赦なく始末する。


 しかし悩んだ割には罪悪感はない。人間の心臓の辺りにある核を抜き取り、更に奥へと進んでいく。


「ゴブリンの核の数はこれで183個か。潰してしまって回収できなかったのが17匹分。ちょうど200匹だな」


 残る群れは後1つ。


 ゴブリン達も異変に気付いてか、残りは1つにまとまっていく。


「ゴブリンよりも大きな反応が34、反応は弱いが魔力の桁外れなのが5匹、一際大きいのが1つ。これまでと同じ反応の物が15匹だな」


 残りは55匹。


「おそらくはゴブリンが15匹、ゴブリンメイジが5匹、ホブゴブリンは34匹だな。それでこの大きな1つはきっとキングだろうな。どれくらいの強さなんだろう?」


 これだけ数を減らしたのだし、一度引くのも手だとは思うのだけれど。


「こいつらの動き方、もしかしてこの先は開けた空洞になってるんじゃあ……」


 マーカーの動きだけの判断だけど、通路を抜ければ広い場所に出られそうだ。


 ここまででギブンのレベルは13になった。


 スキルポイントも3つほど溜まっている。女神の加護はなくても取得できるスキルは、あの一覧にあった物から選ぶことができる。


「そうだ! 火魔法を1から一気に4まで上げて」


 これで全体攻撃の火雨ファイヤーレインが使える。


「MAPに出てるやつら、全部にマーカーをつけたら、もしかして……」


 読みはアタリを引いた。


 一区画向こうから複数の悲鳴が上がり、奥に進んだギブンが地下空洞に見たのは54の死体。


「キングは耐えたか」


 大きな剣を持ったゴブリンは、雄叫びを上げた。


「ここなら俺も剣を振れる」


 さながら“ゴブリン王の間”での一騎打ち。


 巨体に似合わない俊敏さで飛び回るキングに、風刃ウインドカッターを当てられない。


 キングの剣が岩を砕く。筋力は500越えといったところか? 鑑定で見るステイタス以上の破壊力が生まれている。


「あの剣の力か」


 相手の力量は把握した。ギブンは真っ向勝負でキングの剣を叩き折り、反す刃で魔物の首を刎ねた。


「任務完了だな」


 このあたりのMAPが埋まる。


「まだこの先にも穴がある」


 魔物はいないが警戒を怠らず、中を覗き込む。


「へぇ、魔物なのに、金や宝石を集める習性があるんだな」


 午前中に街の中を少し見て回ったが、この国の貨幣は金銀銅の硬貨を使用していて、野菜などに付いていた値札を見るに、銅貨は一枚10円程度で銀貨は1000円。


 頑張ってエレラに聞いてみると、金貨は一枚で10万円の価値があるようだった。


「宝石の価値は分からないけど、この量の金貨と銀貨だけで、一等地に領主邸並のお屋敷を建てられるんじゃあないか?」


 ギブンは財布を取り出し、少し迷ったが目の前の金銀も宝石もまとめて収めた。全部が入った事に安堵する。


「魔石238個と財宝、独り占めしていいのかな? 7匹は彼らが倒したんだけど……」


 魔石の回収を後回しにし、逃げてしまった彼らだが、後から訴えられても面倒だ。


 衆目にさらされて一言も喋れず、ない事ない事並べられたら、隠し財宝まで奪われてしまうかもしれない。


「魔石7個くらいは、さっさと渡してしまう方がいいな」


 外は日も暮れて真っ暗だった。


 光魔法レベル1で覚えた灯火ライティング。これを頭上に掲げて走る。


「って、制御が難しいな。ちょっと走っただけで灯りを置いていってしまう。……歩くと遠いよな」


 落ちている木に火をつけて灯りとするか?


 それでも本気で走ったら、火は消えてしまうだろう。


「歩くよりは早く着くだろうけど。……これくらいの距離なら、歩いても朝までには着けるよな」


 走って帰るのを諦めて、町に向かって足を運ぶ。


「うん? あれって……」


 いくつもの光が遠くから近付いてくる。


「なるほど、あの中にライティングを入れれば、置いていく心配はない。ランタンは持っておくべきだな」


 馬に乗った男達がギブンの元で静止した。


「おお、無事だったか」


「あんたは……」


 先頭にいたモヒカンと黒髪が馬から下りる。


「応援を呼んできた。ゴブリンは? 外には出てきていないか?」


 やってきたのは冒険者の一団だ。大勢の目がギブンに向けられる。


 あまりの緊張感に硬直するギブンを見て、モヒカンは誤解した。


「お前、無茶して中に入ったんだな。冒険者なら怖い思いは最初のうちにしておくもんだ。よく逃げ帰ったな」


「えっと、そこのお前、こいつを町まで運んでやってくれないか?」


 黒髪男が選んだ女冒険者の馬に乗せられ、ギブンは一足先に町に連れ帰ってもらった。


 明朝、受付嬢のフィービーが、冒険者ギルドへ来るようにと呼びにきたのだった。

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