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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
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STAGE☆46 「ぼっち男と4人の仲間」



 大量発生が問題視されるクレイジーボア。


 大型獣は森の中で捕食していた小さな生き物がいなくなると、近くの集落を襲うようになる。


 今は畑の作物を荒らすだけだが、雑食性のクレイジーボアが肉を欲すれば、きっと人間が襲われるだろう。


 ギブンたちは朝一番に仕事を開始する。


「一匹目。ようやく捕まえた。なんでこんなに森の中を全力で逃げ回れるのよ!」


 ピシュはクレイジーボアの鼻先に火の玉を投げつけた。四方八方に氷柱を立てて逃げられなくしてからだ。


 ギブンは3人で連係を捕ろうと言ったが、ピシュとマハーヌが啀み合って、いつの間にか勝負が成立していた。


 事の発端は昨晩の事。


 マハーヌは寝ている間に変身が解けるといけないと言って、ズボンとパンツを脱ぎ、オマケに全裸になって長丈シャツに着替えた。ギブンが見ている前で堂々と。


 ピシュは慌てて、ギブンの目を手で隠した。


 その後ピシュも、ギブンに「こっち見ないでね」と言って、部屋着に着替えるとランプの火を落として、各々のベッドに入った。


 夜になると時々、駄天使が起きてきてはギブンの結界を破ってくるが、この日は大人しくしていた。


 程なくしてギブンは深い眠りに落ちる。


「本当に天子様がいてくれてよかったわ」


 マハーヌが約束を破って夜這いを目論むのを、駄天使に起こされたピシュがくい止めてくれた。


「そうしてケンカの果てに、クレイジーボア退治での勝負に発展したと」


「だってあの子ったら、あなたのハーレムが勢揃いしたら……」


 聞き捨てならない、「ハーレム」という単語だったが、ギブンはグッと堪えてスルーする。


「雌が増えたら順番が回ってこなくなるから、先に奪うしかないんだよ。って言ったのよ」


 ギブンとしても、勝負に持って行ってくれたピシュには、よく頑張ってくれたと感謝をしている。


「あの2人が仲良くするためには、……俺がケジメを付けるしかないのかな」


 それはきっとその通りなのだが、ギブンは意外とそれだけじゃあない状況でもあると、気付いている。






 魔物の大群を討伐することに比べれば、大きな獣を狩り尽くすくらいは朝飯前に終わらせられたかもしれない。


 仕事は昼前に終わった。


 勝敗はギブンの圧勝で、2位はピシュ、マハーヌはようやく1匹だけ見つけることができて、狩る事もできた。


 クレイジーボアは、ちゃんと索敵も使って全滅させたが、スキルの事は隠しておきたい。お茶を濁すためにも、一日かかった振りをすることになった。


 その日の夕方。


「全部で22匹。報酬は金貨44枚だな」


 涙目のマハーヌは「詐欺だぁ~、インチキだぁ~、出来レースだぁ~」と騒いだが、前もって自分の不利を理解していなかった彼女が悪い。


 人魚は特別な魔法を持っている。索敵魔法もその一つ。


 しかしギブンやピシュの、女神様から授かったスキルには遠く及ばず、勝てる要素は何一つなかったのだ。


 色を付けて分けたように、獲物を感じ取れるギブン。


 魔力あるモノの区別は出来ないが、居場所はハッキリ分かるピシュ。


 索敵魔法で気配だけを感知するマハーヌでは、ハンデが大き過ぎたのだ。


「分かった。分かったからもう! あなた私より1歳年上なんでしょ? 子供みたいに泣くんじゃあないわよ」


 マハーヌ16歳は世間知らずである。


「子供じゃあないんだよ。ちゃんと繁殖もできるんだよ。私は大人なんだよ!」


「そう言う意味じゃあないわよ。まぁいいわ。大人なら約束は守りなさいよ。夜の話はオリビアとブレリアが到着してから、改めて話し合って、落としどころを見つける。いいわね」


「分かったんだよ。私は大人だから約束は守るんだよ」


「一度は破ったけどね」


「約束は守るんだよ! それにあれは破りそうになっただけで、破ったわけじゃあないんだよ!」


「……はいはい、分かりました。それじゃあ村へ帰りましょう」


 日が暮れて村に戻るとオリビアとブレリアが来ていた。


「なんだか急に村中が慌ただしくなりましたわね」


「2人ともお疲れ。ごめんな、クエスト中に読んだりして」


「別に構いませんよ。お仕事は終わらせてきましたから。それでギブンさんは?」


「ギブンは村長のギルドマスターのところ。もうすぐこっちに来るんじゃあないかな」


 オリビアが先にハクウから降りて、ピシュと挨拶を交わす。


 ハクウを子虎サイズにしたブレリアも寄ってきた。


「久し振りだな」


「再会を喜ぶって程でもないけどね」


 しばらくしてギブンが戻ってきて、村人がクレイジーボア討伐のお礼に宴会を開いてくれると言った。


 ギブンはオリビアと握手をし、ブレリアにも手を差し出すと、その手を取られてヘッドロックをされてしまう。


「いたいいたい、人前で止めてくれよ」


 慌てて抜け出すギブンを、村の女性達は笑い飛ばし、男達は嫉妬の念を飛ばしてくる。


「ありがとう2人とも来てくれて」


 ハクウと心を通わせあったブレリアには、念話で伝わってくるギブンの言葉を聞く事が出来る。


 『手が空いたら来て欲しい』と伝えたら、夕方にはそちらに迎えると返事があり、風魔法で結界を張った2人は、ハクウの全速力に耐えてやって来てくれた。


「それで、なにがあったんだ?」


 内容を知らない2人は用件を確かめる。


 オリビアとブレリアの手を取るピシュは、宴会の料理を1人で平らげようと構えているマハーヌの所へ連れて行く。


「また1人になっちゃった。どうしようかな?」


「おっ! 冒険者さん。なんだい1人飲みかい? あんな美人ばかりお仲間にして、羨ましい限りだねぇ」


 猟師だという村人男性が近付いてくる。まだ乾杯の合図前なのに、かなり良い具合にできあがっている。


 かなり度数の強い酒を渡され、猟師と2人で先にグラスを傾けあう。


 アルコールがスキルで分解されるギブンはこの時、こういう風に自分も酔ってみたいと考えてしまった。


「……あれ? この感覚? 頭がボーッとして、眠気も感じる。なのに心地良い高揚感。これが酔うってことか」


 明確なイメージがあれば、スキルも思い通りに調整できる。


 初めて試してみたが、大人がアルコールを摂る理由が分かった気がする。


 気が付いたら村中から乾杯の声が聞こえてきて、ギブンは瞬く間に村人に囲まれた。


「ギブン!」


「おお、みんなご一緒で、どうだ、楽しんでるか?」


 話し合いを終えて、ピシュが戻ってくるとギブンは上機嫌。


 ピシュもお酒をもらって草の上、地べたに座るギブンの隣にしゃがんだ。


「もう、食べもしないで飲んでるの? それもスキルを切って」


 機嫌よさそうなギブンを見て、ピシュも酔ってみよう考えるがやめた。


「それよりもギブンあのね、宿の人に聞いたら今夜は空きがあんだって。もう一部屋借りたから、????てもいいかな?」


「ああ、うん、うん、うん、いいよ」


 話し合いはピシュがジャンケンを教えて、順番決めもしたと言ったら、それもOKしてくれた。


 それから村人が片づけを始めるまで宴会に付き合い、パーティーは宿に戻った。


 ギブンがどんな反応をするのかドキドキのピシュは、ギブンの部屋は今日借りた方に変えて欲しい。とお願いした。


 ギブンはこれも快く承諾してくれて、2人部屋に入ってくれた。


 ピシュ達は一先ず4人とも3人部屋に入り、ジャンケン勝負で決めた1番手、ブレリアが男のいる部屋へ移った。


 ブレリアが3人の元へ返ってきたのは10分後。


「早かったわね。って、なんでそんな顔してるの? 1番手を譲ったのに」


「譲ってもらった覚えはないぞピシュ。それに順番決めの意味もなかったぜ」


 薄着になったブレリアがギブンのいる部屋に入ると、男はベッドで横になっていた。


 ちゃんと鎧を脱いで部屋着になっている。


 準備を整えているものだと思い、ブレリアは背中を向ける床のベッドに潜り込んだ。


「結果だけ言うぞ。あいつ、マジ寝してて、揺すっても抓っても全く起きなかった。……今夜は終了だ」


 女性達のドキドキがイライラに変わる夜だった。


 そうして迎えた明くる朝、その日はギブンのパニックからの奇声で始まった。


「あっ、頭いてぇ~」


 初めての二日酔いは、自分の出した大声でのダメージで実感した。


 状態異常無効化を有効化させて、頭痛が引いたところで状況確認。


「なんでみんなで、一緒のベッドで寝てるんだ!?」


 追加で取った部屋の二つのベッドを横に並べてギブンは中央に、ピシュは男の右腕を抱えていて、左腕にはオリビアがしがみついている。


 マハーヌの胸で頭を支えられて、男の下腹部を枕に脚の間にブレリアが寝ている。


 ギブンはもう一度大声を上げて、全員が一斉に目を覚ます。                   


「こ、こここ、これってどういう?」


「だから昨日、「もう一部屋借りたから、子作りしてもいいかな?」って聞いたでしょ!」


 1番寝起きがいいのはピシュだった。


「確かにそんな事を聞かれたような? 記憶は曖昧だけど」


「つまり昨日は誰も、ナニをできなかったって事だ」


 お腹の上からどいてくれないブレリアが上を向いたまま教えてくれた。


「ブ、ブレリアさん。だからそう言う言い回しはお止しなさいと」


「はん、そんな男を誘うカッコウをしておいて、よく言うよ。お前、先っぽ立ってるぞ」


 オリビアは慌てて抱え込んだままのギブンの左腕を、更に引き寄せて胸を押し当てる。


「なぁ、ギブン。私はお腹が空いたんだよ」


 最後に目覚めたマハーヌは、まだこの状況が把握できていない様子だ。


「そう言いながらギブンの頭に、無駄に大きいオッパイ乗せてるんじゃあないわよ」


「ピシュは朝から、よくそんな大きな声が出るもんなんだよ」


 人魚はまだ寝ぼけている。


「もう、いいから離れなさい」


 と勢いよくマハーヌを押しのけると、そのままギブンにも乗っかって、ピシュは男の顔をオッパイに沈めた。


 ギブンは、回復した二日酔いを、どうにか呼び戻せないかと悩むのだった。

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