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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
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STAGE☆35 「2人ぼっちの極秘対談」



 オリビア達がララハット村に戻ってきたのは、もう日が暮れた後だった。


「なんで一部屋なんだ」


「有り難いですよね。こんな小さな村の宿に、4人部屋があるなんて」


 そもそも男女で分けるなんて贅沢は、冒険者の頭にはない。


 もちろん貞操観念を持っていないわけではなく、魔法が使える者は結界などで自営するし、女性冒険者のほとんどが、オリビアのように貞操具を用意している。


 聞けばピシュも一通りの用意はあるそうなのだが、ギブンを全面的に信用している。だから必要ないと本人はいっていた。


 そりゃあ余計な物は身に付けず寝るのが、いいのだろうろうけど、何をする気もないが警戒はしておいてほしい。


 しかし思い返せばギブンを信用してと言うが、ピシュは初日から不用意な格好で寝ていたような。駄天使はそれを「誘っている」と言っていた。


「今日はもう遅いので、近くの酒場で食事を楽しんで、話し合いは明日にしましょうか」


「待ってオリビアさん、飯なら用意してあるから、ここで食べながら話そう」


 オリビアとブレリアは頭を傾げたが、ギブンの料理を口にすると上機嫌になり、結局手持ちのお酒も飲んで、会議なんてできなくなってしまった。


 明くる朝もいや、昼近くまで眠ってしまったので、余裕はなく慌てて話し合った。


 明日になったら、ウエルシュトークの冒険者が出発をしてしまう。


 ギブンは今日の夕方までには町に戻り、報告をしなくてはならない。


「なるほど、あなたはそんなに前から魔族と関わっていたのですね」


「と言うか4人の魔神があたしらの世界に来て、ギブンが倒したのが4人なんだろ?」


 オリビアとブレリアも、あのオーク討伐の裏に、そんな大事件が起きていたとは、露程にも思っていなかった。


「それなんだけど、さっきのお喋り魔人2人組は、街道で出会した魔虫と羽蛇を従えた魔人の事を、まったく話さなかったんだ」


「もしかしたら他にまだ、私たちが知らない魔族がいるかもしれない。ってこと?」


 ピシュの言う通りかもしれないが、魔人が事件を起こしたなんて聞いたことがない。


「……もしかしたら魔人が1人、この国に潜伏しているかもしれない。ということですね。それは報告すべき事として、あなたが他の場所でも、2人の魔人を倒していた事は伏せておきましょう」


 ほんの1時間ほどで、簡単に話をまとめて二組は別れた。


 ハクウが随分とブレリアに慣れているので、2人をエバーランスまで送らせた。


 ギブンはレヴィアタンのヴィヴィを呼びだし、ピシュを乗せてビレッジフォーに向かう。


「温泉を越えた辺りで降りて、その後は全力で走るつもりだ。けど無理はしないで遅い方に合わせるようにしよう」


「OK、私はギブンを置いていったりしないから、安心して」


 なんて、ピシュは先輩転生者っぽく言ってみたが、勉強家で魔法研究に熱心なギブンに、魔法で勝てる要素はないと自覚をしている。


 案の定ピシュが少し遅れはしたが、昼までに町に着く事ができて、門塀に王子との謁見の取り次ぎをお願いした。


 しばらくして王宮から早馬がやって来て、馬車に2人を乗せる。


 そして連れて行かれたのは、またもや牢屋だった。






『王子、これはどういう?』


「お前らの行動を監視する目があってな。そのまま普段通りに謁見の間でなんて訳にいかなかった。許せ」


 相手の目を誤魔化すために地下へ。それは分かるがなぜ牢屋の中に入れるかである。


 最初の招待状の時もそうだ。洒落にしても質が悪い。


 相手の立場を考えて大人しく従っているが、もしかしたらオリビアの警告が正しいのかもしれない。


 彼女はこう言っていた。「ゼオール王子は第一王子のラフォーゼ様への対抗心が強く、ゲート騒動で功績を重ねたいのですよ」と。


 ギブンがこの頃の、全てのゲートに関わるっているから「なるほどな、こいつを抱え込もうとするかもしれない。と言いたいんだな」とブレリアが読み取った。


 オリビアは「北岸は騎士団を遠征させる事もなく、最初から自然消滅を待った。そう噂されています」と耳にしたことがあると言っていた。


 あまりに遠すぎて南境からは人を出せず、第一王子が動いていない事もあって、ウエルシュトークも静観したと見られている。


「とにかく外に出してください。こんなのはあんまりです」


 ピシュも今度は牢に入れられた。彼女は見るからに機嫌を損ねている。いつ暴れ出してもおかしくない。


「まったく君らは本当に、規格外が過ぎて笑えない存在だ。昨日出発したばかりで、まさかダンジョンを攻略してくるとは思わなかった」


 第二王子は、ピシュを無視して話し続ける。


「私が付けた監視が2時間後に帰ってきた時は、思わず彼らの首を刎ねるところだったよ」


 監視に付いた4人は、騎士団の中でも有能な斥候ばかり、団長の懇願を受け入れ、彼らに恩赦を与えたことで、王子は寛大な自分に満足げに笑う。


「だのに迷いもせず、奴隷の首輪を付けてくれるとはね。先日にそうしておかなかった、参謀大臣を更迭するとしよう」


 馬車の中で2人に渡された首輪。その正体を知った上で、ピシュにも付けるように促した。


「触るだけで痺れるだろ? 無理矢理外そうとすれば廃人になるという話だ」


 勝ち誇った顔が腹立たしい。こんなにあっさり正体を明かすなら、最初の取り繕いにもムカついてくる。


「やはり君たちが異世界人という話は、間違いじゃあなかったようだな。そいつは奴隷に付ける物さ。そんな物も知らないなんてね」


 確かに触れるとピリピリするが、ただそれだけの事。


 状態異常が効かない2人なら、痛みを感じることなく力尽くで!


「なっ!? なにをした? 解除魔法か、それは?!」


 王子は2人が異世界人と信じているようだが、そのアタリはボヤかしておきたい。


『そうだな、昔から奴隷の首輪は厄介だと思っていたから、解除方は冒険者を目指した頃から研究対象だったからな』


 この後、子サラマンダーの2匹を呼びだして牢屋から出ると、できる限り怪我人を出さないように気を付けながら外に出た。


 剣や槍や弓を構える兵士に囲まれる。


 王子は先を見越して2人を誘導して、逃げ場のない2人を包囲する。


 しかしギブンたちは風の結界を張り、空中へと飛び去った。


「フビライさんの用件を、確認することができなかったな」


「しょうがないよ。きっとすぐに町にも行けなくなるよ」


「……ごめんなさい、フビライさん。どこかで縁があったらその時に」


 2人はそのまま自力で温泉まで飛んだ。


「あれが陥没の跡か、かなりの規模だったんだな」


「私たち、この前は行きも帰りも気にせず、ハクウちゃんの上でお喋りしてたからね」


 オリビアとブレリアを送るように、言って聞かせたハクウはまだ帰ってこない。


 召還獣なので命令を済ませたら、次元を超えて直ぐに戻ってくるはずなのに。


「なにがあったか気にはなるけど、もうしばらく様子を見るか」


 もう太陽が山向こうに隠れてしまう。


 暗い中を進路を変えれば、追手があっても撒くことは簡単だろう。しかし……。


「ギブン、温泉に浸かって行こうよ。どこに向かうか知らないけど、今夜くらいはさぁ」


「ピシュは肝が据わってるな。けど宿は無理だよ、あの女将さんの所とか、迷惑はかけられないからね」


「あちこちで湧き出しているんだし、適当なところで入ればいいよ。……その、もうお互い見せ合った仲だし」


「そんな心配はしてないよ。キミが入っている間は獣がこないか見張ってないとだし」


 ピシュは真っ赤になった。それはそうだ、交代で入れば見られる心配なんて……。


「はっ! もしかしてギブン、こっそり覗こうなんて……」


「しないしない、だいたい温泉宿で水着買っただろ」


 そう、お風呂を出た後に女将さんに抗議したら、水着の存在を教えてくれた。


 あの時の女将さんは、2人を夫婦と勘違いして、気を利かせたつもりだった。


 ただの旅の連れと聞いて、謝りながら紹介してくれた。その場で水着を即買いしたが、こんなに早く役に立つとは思ってなかった。


 適温の温泉を見つけ、エバーランスで買ってあった小さめのテントを立てる。


 ピシュが脱衣をしている間に火を起こして、就寝用に大きめのテントも立てた。


 今日も作り置きを食べることになるけど、近いうちにまた料理をしないといけない。


 貯蔵してある肉や魚もかなり減ったし、野菜も少しだけ乏しくなった。


 ビレッジフォーでまとめ買いした調味料以外を、狩りをしたり大きな町で補充したりが必要だ。


「じゃじゃ~ん、どうかな、どうかな?」


 ビキニの水着姿をしたピシュが、テントから出てきた。


「いいんじゃあないか? どうする、先にお湯に浸かるか?」


「うぅ~うん。火も起こしてくれてるし、先にご飯食べる」


 もう腹ペコで待てそうもないピシュに、ギブンはシャツを肩にかけてやる。


「せっかくだからギブンも一緒に入ろうよ。危険そうな獣や魔物もいなさそうじゃん」


 暗がりで炎が顔を照らす、赤くなるピシュの頬に気付かれることはない。


 索敵持ちの2人である、ギブンも納得して食後の片付けを済ませると、水着に着替えて2人で温泉に浸かる。


「さてとだ、これからどこへ向かうかなんだけど……」


 エバーランスは関わりたくない貴族がいる。


 王都はまだ11歳の第七王子が祭り上げられている都市で、第二王子も手を回しやすい。


 北岸はビレッジフォーにほど近いし。


「だったら第一王子を頼るといい」


 ピシュではないその声は、広い天然温泉の暗がり、湯煙で隠れていた姿を現した。

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