表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ぼっち  作者: Penjamin名島
119/120

STAGE☆119 「ぼっち男と重要会議」



 魔王城に戻り、アビスはピシュに声を掛け、幹部を招集し、会議を開いた。


 アビスとエミリア、バサラとビギナにテンケ、それと四天王が顔を揃えた。


「それでピシュは?」


「今も我らが悲願のために、死力を尽くしてくださっている」


 参謀官ラージ・レベックはギブンの問いに答える。


 魔族の世界は実力主義、魔族軍四天王はじめ、魔王軍がピシュを魔王と認めた事で、魔界を治める立場となった彼女は、向こうの魔王城である儀式を行っている最中だとか。


「この魔王城と向こうの魔王城を繋ぐゲートが完成し、安定すれば、魔界の環境が改善される。間違いないのだな?」


 腕組みをして豪奢な椅子に踏ん反り返る将軍ルグラブル・グーブルはまだ半信半疑なようだ。


「ああ、ゲートを通じて、この世界のマナを魔界に送れるようになれば。だよなエミリア」


「ピシュの魔力なら、きっと成功するわ」


 それはギブンがこの世界で見聞きし、ネフラージュ様に教わったこの世界の理を元に思いついた事。


 相談を受けたエミリアは、バサラのゲート研究の資料を基に、ダンジョン精製の法具を調整した。


「これでもう魔王軍は、人間界に侵攻する必要はなくなるわけだ」


「まだまだですよギブン=ネフラ。我々の目的は繁殖繁栄です」


 魔王軍が人間界を乗っ取ろうとするのは、魔界が強者しか生きていけない世界であるため。


 大人になるまで生き残れない。そもそも子供が生まれてくることすら難しい環境に、見切りをつけるためだった。


「子孫を残す。当然手を貸してくれますよねギブン=ネフラ。そして……分かってますね、バサラ=ティラムーン」


 参謀官に名指しされて、立ち上がる魔剣士は「はっ!」と声を上げて敬礼する。


「はぁ? ワタシですか?」


 勢いで返事をしたが、バサラにはなにがなにやら。


「いや、むしろ私が立候補しよう」


 環境が改善されて、安全に出産できるようになっても、生まれる子が強い子であることに越したことはない。


「それはさておき」


 ギブンは話題を変えた。


「交渉の末、この森はグレバランス国王から、現魔王ピシュに譲渡されたわけだけど」


 難色を示していたグレバランスの上位貴族を、幼き王を支えるオバート・フォン・エバーランス公爵が強権を行使する。


 反感を示す貴族が他の王子に働きかけるが、エバーランス領主の娘であり、現国王の許嫁であるフロワランスがずっと根回しをしてきた為、誰も味方に付ける事ができなかった。


「じゃあ戦争は終結と言う事でいいんだ」


「戦争らしい事は、ほぼなかったけどね」


 ホッとするビギナに突っ込むエミリア。


「あとは勇者だけだな」


 この世界の設定が生まれたのは、ギブンが転生するたった数年前。


 なのにこの世界の歴史は古い。


 創造神クリエイターがそこまで細かく設定していたのかはともかく、歴史が物語るように、勇者は必ずやってくるだろう。


 こちらがシステムの枠をはみ出した事で、これからいったい何が起こるかは想像しようもなく、勇者が責めて来るという、定められたレールは生きたままなのだから。


「最悪の場合、この和平も白紙になる可能性も残っている。か……」


 ギブンは会議の議題を敵の戦力分析に切り替えた。


「ここに来るまでにバサラから受けた報告で、勇者のパーティーメンバーでもないのに、協力していた冒険者は無力化したっていう話だけど、バサラ、もう一度説明してもらえないか」


 バサラはギブンが勇者ぱーてぃーと遊んでいる間、魔王軍と龍人兵を率いて、ラドメリファ共和国ラドア領都アブレラを襲撃。


 地方都市であっても、ラドアには守備隊が存在した。先ずはその兵舎を、龍人達が空から急襲をかけて制圧、その間に魔人達は冒険者ギルドを抑えた。


「住人が避難した住居をいくつか潰して、広場は使えないようにしておいた。復興には時間がかかるだろう」


 冒険者達には重傷者もでたが、1人も殺す事はしなかった。


「少なくとも、勇者に付き従い、ここまで来たところで、なんの役にも立てないと思い知らせる事はできたはずだ」


 圧倒的戦力差を見せつけられて、それでも戦意を失わないなら、魔王城までやってくるといい。


 バサラはそう言葉を残して、アブレラを跡にした。


「そうか、ありがとう」


 後は勇者パーティーだが、ジオウの実力の程はギブン自らが直に試した。


「ダンジョンでジオウと別れた、パーティーメンバーの戦闘データは、この宝玉が記録してくれている」


 羽の生えた目玉は、壁に記録した動画を投影しだした。


「ふふっ、私からの贈り物、しっかりと役立ててくれたみたいね」


 エミリアが作った記録装置、勇者パーティーと魔物の戦いを再生させる。






 勇者ジオウがソロになったところで、隔離した3人を元の場所に戻し、ギブンは上位モンスターを投入した。


『なにあれ?』


『ミノタウロスと、ケンタウロスだろう?』


 いち早く魔物に気付いた詐欺師のルーランの問いに兄の暗殺者レイズが答えるが、知っている魔物の姿とは違っている。


『ちょっと、ジオウはどこに行ったの?』


 みんなに合流してホッとするのも束の間、いきなりな局面に魔法使いミラウが声を大きくする。


『気が付いたらいなくなってた。だがあいつは勇者だ。1人でも心配ねぇ~。俺達は目の前のやつらに集中するぞ! あいつを捜すのはその後だ』


 ジオウがいない時、パーティーを指揮するのは戦士のガランドの役目だ。


 戦闘以外の時は僧侶のコアンナが、それこそジオウよりも前に出て交渉事も仕切るまとめ役だが、戦況を後方で観察し、ガランドに伝える役目をしてくれる。


『このプレッシャーは……確かにただのミノタウロスやケンタウロスではないですね』


 コアンナの意見はレブルス兄妹と同じ、こちらに気付いているのに近付いてこようとしない、二匹の魔物は普通ではない。


『あれは……上位種であるハイケンタウロスとハイミノタウロスです』


 ガンマンのフスフは絵で見た事がある。屋敷の書物庫に資料本があった。


『散開!』


 ガランドの号令で前衛のネフラ(オリビア)ベルエル(ブレリア)が飛び出す。


 2人の実力なら、単身でもケンタウロスやミノタウロスを倒す事ができるだろう。


『ミノタウロス如きが! なんてパワーだよ!?』


『ベルさん、だからそれは上位種なんですって、早くこちらへ! まったく、独りで無理しないでください』


 無謀にも突っ込んでいき、ミノタウロスの振り回す大戦斧を避けきれず、左腕から出血するベルエル(ブレリア)に、コアンナは再生ヒーリン聖治癒セイントキュアーを二重詠唱で使って回復させる。


『サンキュー、まさかこんな深手を負うなんてな』


 落ちかけていた腕が元に戻り、コアンナに礼を言うとベルエル(ブレリア)はまたハイミノタウロスに立ち向かう。


 ベルエル(ブレリア)が下がっている間、精霊魔法で抑えてくれていたフラナスカ(マハーヌ)の脇を抜けて、無謀に見える真正面から魔物に斬り掛かる。


『一人で戦ってんじゃないんだぞ、ネフラ』


 巨大な槍を使うハイケンタウロスの長いリーチを、ネフラ(オリビア)はギリギリで躱して、近接距離でないと届かない細身の剣で、ガランドの目には危なげに見える戦い方を続けている。


 ハイケンタウロスの右側にはガランド、左側にレイズがいて牽制しているが、ネフラ(オリビア)のように接近することはできないでいた。


『ああ、もう! これじゃあ魔法での援護ができないじゃない。なんでみんなあんなに魔物にくっ付いてるのよ』


 ミラウは小さな魔法を放つも、魔物に届く前にキャンセルされてしまう。二匹の特殊なスキルによるものだろう。


 しかしこの狭い場所で、前衛が魔物とクロスレンジで戦っていては、大きな魔法を放つ事はできない。


 フスフの小銃もそうだ。弾に魔力を込めても、魔法は魔物が打ち消してしまうから、威力はあっても小さな口径の弾丸では、傷1つ付けることができない。


『ララミヤ、ルーラン、あなた達も行きなさいな』


『無理言わないでよコアンナ。あたしの武闘も、ルーランの魔鞭だって魔法が通用しない相手に、なんの役も立たないわよ」


 普通のミノタウロスやケンタウロスなら、決して敵わない相手ではないとララミヤもルーランも自信満々に言えるのだが、その気持ちはミラウやコアンナも同じだ。


『はーあ!!』


 パーティーメンバーが手をこまねいている中、ネフラ(オリビア)が目にもとまらぬ早業でハイケンタウロスに斬り掛かる。


『それっ!』


『このっ、クソが!!』


 フラナスカ(マハーヌ)がハイミノタウロスへ、水の精霊を通じて生みだした刃で魔物の武器を打ち払い、ベルエル(ブレリア)が頭から縦に戦斧を振り落とす。


『そんな、一撃であのハイミノタウロスを……』


 ララミヤは驚愕する。頭から胸の辺りまで真っ二つになるハイミノタウロスを凝視して。


『こ、こちらも決着がついたようですわ……』


 フスフも瞬く剣技に目を見開き、体中から血を流し、直立したまま絶命するハイケンタウロスの姿を、瞬いた瞼の裏に焼きつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ