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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
116/120

STAGE☆116 「ぼっち男の仲間たち」



 勇者パーティーに潜り込むことに成功した3人。


 ネフラことオリビア、ベルエルことブレリア、フラナスカことマハーヌは初参加したクエストで、勇者ジオウに大いに気に入られて、二つ目のダンジョン攻略では、前戦を任されるようになった。


 この緊急ダンジョンの少し前に、勇者の加護を受ける事となり、さらなる活躍を期待された。


 ダンジョンも5階層。斥候をしていたフラナスカが戻ってきた。


「オーガロードが大量発生しているのですよ。私が確認できたのは38匹だったのですよ」


「ご苦労さんフラン、その様子だと敵には見つかっていないな」


「どういうことなのですよ? 敵に見つかって引っ張ってきた方が、良かったですよ?」


「違う違う。前に同じことを言って、本当に引っ張ってきたヤツがいたんだよ」


 ジオウは冒険者に成り立ての頃、仲間にしていた斥候を思い出して、顔をしかめた。


「本当に大変だったんだ。独断で魔物を引き連れて、俺達の待機場所に誘導してきたんだ。全滅せずによく倒せたもんだ」


 その後、ゴブリンの巣も潰した勇者パーティーだったが。


「斥候で知りえた情報をただ持ってくるだけで良かった。そうすれば万全の状態で攻略できたんだ」


 そう、戦士のガランドに言われて、ジオウは同意した。


 しかしあの時、敵を二手に分断していなければ、きっと装備を整え直しても、ギリギリの戦いにいなっていただろうし、或いは全滅も有り得ただろう。


 それにあの依頼は、ゴブリンの巣最寄りの農村が危機的状態で、出直す余裕なんてなかった。


 ここはゲーム世界ではない。死んだ人間が生き返ることはないのだ。


 とは言え、ゲーム干渉力が働いている勇者パーティーには、そう言った危機感が乏しくなっている。


「あいつの暴走は2度や3度ではなかった。俺達もレベルアップしてるのに、いつもいつもギリギリの重労働」


 ガランドは辟易して、ジオウに一つの提案をしたそうだ。


「俺達に散々迷惑を掛けといて、分からせてやろうと囮をさせたら、途端にいなくなりやがってな」


 ここまで話を聞けば間違いない、その斥候はテンケの事だ。


「なるほど、そのギリギリの経験があったから、勇者史上最速で進軍してこられたって訳だ」


「どういう事だよ、ベル」


 ブレリアことベルエルは、その斥候の行動が結果として、短期間でレベルを上げる助けになったのだろう。と勇者に問う。


「俺達の努力の成果だ。勘違い野郎の後始末が、どれほど大変だったと思うよ」


 ベルエルはガランドに聞いたわけではない。が、首を縦に振っているジオウを見れば答えは分かる。


「囮にされて、俺達がどれだけの思いをしたか理解したんだろうよ。あいつは死んだわけでもないのに戻ってこなかったさ」


 ガランドは囮とするテンケに呪いの鎧を着させた張本人。


「7人まで許されているパーティーメンバーなら、例え死んでも勇者様が神官様と共に、神に祈りを捧げたら生き返せてくれる。それを知っているのにあいつは戻ってこなかったんだ」


 甦り、それこそが勇者ジオウが女神アブローシュアンから授かった尤も偉大な加護。


 勇者本人が死んでもセーブポイントの祭壇から復活できるという、最大のチートスキル。


「死なないって言うなら、そんなに目くじらを立てる事もないのではないのか?」


 オリビアことネフラは、そんな能力があるなら、それを利用して強くなろうとするテンケの意見にこそ共感できた。


「死ぬのってムッチャ辛いよ。あんた達はまだ経験ないけど、本当にやめておいた方がいいわよ」


 僧侶のコアンナ。彼女が無事なら、神を祀る神殿があれば、神官がいなくても甦生の儀式は行える。


 みんなが庇ってくれるから、死んだ経験こそ一番少ないが、コアンナだって死ぬ辛さは知っている。


 騎士ネフラは剣の手入れを終えて、鞘に納める。


「で、どうする? また私とベルとフランで先に飛び出すか?」


 勇者の仲間であっても、パーティーメンバーではないレイズ、ルーラン、フスフは死んだらそこで終わり。付いてきてしまったお荷物をどうやって守るべきかが問題。


「やはり彼らも帰ってもらうべきではないのか?」


 どう考えてもお荷物を抱えている余裕はない状況。なぜジオウは同行を許しているのだろう?


「俺も一緒に前へ出るぜ」


 レイズは前戦で走り回るのが本来のスタイル。言いたいことは分かるが……。


「だったら私とコンビを組むのですよ」


 格闘家フラナスカのフォローがあれば、死亡フラグは格段に減る。


 ジオウはフラナスカに「よろしく頼む」と言う。


「分かったのですよ。レイズさんは私が守るのですよ」


 まだ謎の多い状態だが、3人はうまい具合に勇者パーティーに溶け込んでいた。






「どうかしたのか?」


「いや、5層も突破されたな。と思ってな」


 ソウマ・クラーチはギブン・ネフラに戻り、最下層で待っていたバサラ・ティラムーンと合流した。


「立派な黒魔人に戻ったな」


「まぁな。けどなんだろうな。この黒い肌が誇りだったのに、今はもうそんなに執着もないし、事が治まったらまた、白い肌に戻りたいと思っているよ」


 バサラがここへ来たのは、魔王軍の兵士をギブンに合流させるため。


「本当はこのまま、魔王城に戻ってもらう予定だったんだがな」


「気にしないでいいよ。私はあんたのサポートをしに来たんだ。予定もなにも私らの全部は、あんたが何をしようとしているかだろ」


 勇者パーティーの懐に3人が潜入し、只今このダンジョンを攻略中。


 他の仲間はと言うと。


「テンケは勇者ご一行の監視を続けている。ビギナとレドーラは魔界へ龍人の助っ人を呼びに行った。と言う事だ」


「エミリアから連絡があったのか? それで開発室長とその助手は?」


「ちょっと単独行動をするそうだ。理由は教えてくれなかった」


 ビギナの行動は想定外ではあったが、概ね予定通りに事は運んでいる。


「それじゃあバサラは、テンケと合流して、その他ご一行様の事を頼むよ」


「本当に始末しちまっていいのか?」


「構わないさ。ただし、戦意を喪失したり、逃亡するようなら見逃してやってくれ」


「面倒くせぇな。そんなもんどうやって見極めるんだよ。フリだけして闇討ちみたいな事をされるのは、勘弁して欲しいぜ」


 それを避けるためにテンケと合流させるのだ。


「確かにあいつは優秀だからな。どいつがどんなヤツかって、ちゃんと分類できてるだろうからな」


 もしかしたら、あの3姉妹もいるかもしれないが、状況の見極めができないようなら、遠からず冒険者として朽ち果てるだろう。


 賢明である事を祈る。


「けど本当に1人で良いのか? 真の勇者パーティーを相手にギブンはどうするつもりなんだ?」


「なんにも。ただ勇者パーティーの実力を見ておきたいだけだよ。決戦は魔王城でないといけないはずだから、ここでは何もしない」


 バサラ達が出発したら、ギブンは勇者ジオウの元へ行く。


 1人なら隠蔽スキルもフル稼働できるし、ダンジョンの制御に集中できるだろう。


 そう、この突然発生するダンジョン。これは魔王城を突然人間界に築城したのと同じ技術で、歴代の魔王が作った物。


 そして行く手を阻む魔物達も、ギブンがオーダーした通りに配置できている。


 ここのレベルがひどく厳しくなっているのも、全てギブンの采配。


「この水晶に魔力を込めれば、自由自在に設定を変更できる。かなりの量の魔力が必要だというのに、お前なら問題ないだろうと思っていたが、ここまで自由に扱えるなんてな」


 バサラから制御用の水晶を手渡され、ギブンは数時間でモノにした。


「ピシュに数日掛けて魔力を入れてもらったけど、ここを作ったのはいいけど、もう空っ欠でしばらくは使えねぇと思ってたんだがな」


 大型ダンジョンを作るのなら、確かに数日掛けて魔力を充填しなくてはならないだろうけど、少しずつ弄るくらいなら、そんなに力は必要ではない。


「それじゃあ行くよ」


「外の事は任せた」


 魔王軍を引き連れて、バサラは地上へ向かった。


「こういった物も作れたんだなぁ。魔王軍も」


 ダンジョン精製の法具、2代目の魔王は魔道具作りに長けていたという。


「こいつに魔力を込めて、人間界に放り込むとダンジョンが発生するってわけだ」


 バサラが本当に研究していたのは、この水晶球について。その一環でゲートの事も調べていたのだ。


 ギブンが魔力を込めると水晶球が光り、一行を映し出す。


「おお、映った映った。……これが勇者だな。横にいる3人と合わせて中核となって、前に立つ4人が先行組、後方支援がこの3人ね。先ずはどうにか分断してみようかな」


 できる事なら勇者を一人にして、様子を見てみたい。


 先行する4人は簡単に分断できるだろう。あの3人ならきっと、ギブンの考えを直ぐに理解してくれるだろうから。


「後方支援を引き離すのも……たぶん問題ないな」


 中核の4人だけにできたとして、そこからどうやって勇者だけを孤立させるかだが……。


「あとで考えるか。さぁて、パーティー登録外の3人が、うまくばらけてくれているな。……やってみるか」


 先ず狙うは後方組。


 そこで勇者パーティーにぶつけたのはエレメントの群れ。


 火のエレメントと土のエレメントをそれぞれ5体を先行組にぶつければ、当然中核も前を向く。更にそれぞれ5体を追加投入。


 次第に先鋒も次鋒も関係なく混戦になる。そうなれば後方支援も攻撃のチャンスを窺い、注意が散漫になっていく。


 ターゲットは勇者の恩恵を受けていないガンマン。


「2匹で襲わせるか」


 前衛が火と土に気を取られている間に、水のエレメントを追加して後衛に向かわせる。


「あの銃使い、この上の階層で、水魔法の弾丸を使ってたよな」


 水のエレメントは深い霧を発生させて視界を奪う。


 死んだら復活できないガンマンは慌てて乱射するが、水魔法の弾丸は霧の中に消えてしまう。


 僧侶と魔法使いは風魔法を使おうとするが、呪文が完成する前に、霧に紛れたエレメントが二人に水の弾丸をぶつける。


 完成寸前の風魔法が暴発して、僧侶と魔法使いを吹き飛ばす。


 突然の爆音にパニックになるガンマンがしゃがみ込む。


 ギブンは岩を動かして、3人を閉じ込めた。

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