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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
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STAGE☆11 「ぼっちの決意」



「どうですかフランお嬢様?」


 エルフに聞いたところ、こんな所に以前は洞窟なんかなかったという。


「うっすらですけど、強い魔力の反応があります」


 ギブンが見つけたというオークの巣。


 中を調べたところ、金銀財宝が入り組んだ横穴から見つかった。


「ここがダンジョンなのは、間違いないようです」


「攻略報酬があって、強い魔力が残ってて……。ギブン様も王宮に呼ばれているのですか?」


「そうなるでしょうね。ギブンさんには語ってもらわなくてはならない事が、山のようにありますから」


「なるほど、分かりましたわ、お姉さま。ありがとうございます」


 細かく取ったメモ用紙を、カバンに入れるフランは笑顔でオリビアに礼をする。


「では私も必要でありましたら、王宮にお呼びください」


「はい! 国王様に伝えておきますわ」


 フランは護衛の兵士と共に洞窟を出て行った。


「さて、ここがダンジョンなら、財宝を回収したら消滅しちゃうのよね。急いで調査を終えなければ」


 それにしてもである。オリビアは思わず溜め息を吐いてしまう。


「これまではずっとお姉様、お姉様とくっついてきてた子が、こうもあっさり鞍替えされちゃうと、ほんのちょっとだけど妬けちゃうわよね。まぁ、まだ13歳の子供だもの、しょうがないわ」


 残されたオークの死骸は88匹分。それを1人で片付けたとなると、それはそれで驚きなのだけど。


「外で暴れた魔物の数が、報告通りなら227匹。ここで彼が倒したのがたったの88匹だったと言うなら、とっくにゲートは消滅していたはず」


 できる事なら報告を疑いたくはない。ないのだけれども。


「冒険者だからゲートと言う言葉は知っててもおかしくない。けど新人冒険者が見た事もないはずのそれが消滅した。と報告してくれた」


 彼は二つの魔物の巣を潰している。或いはゲートを見た事があるのかも。


「なんにしてもギブン=ネフラ。謎多き少年ね。興味深いわ」


 次元収納に財宝を収めたオリビアは、探索をしていた冒険者と共に王都へ戻った。






 昨夜は適当に見つけた宿屋で一晩を過ごしたギブンは、人に尋ねながら、王都の冒険者ギルドを目指した。


 しかし一言や片言での質問では、誰にも理解してもらえず、果ては不審者扱いされて、憲兵を呼ばれてしまった。


 ギブンは憲兵の詰め所に連れて行かれて、そこで鑑定魔法を掛けられ、エバーランスで〝審判の宝珠”に表示されたみたいに、偽りのステータスを確認された。詐称スキルである。


 隠蔽魔法では隠し通せない鑑定魔法対策に、女神さまが裏スキルを隠し入れてくれていた。


 今のギブンのレベルは22。しかし詐称スキルで表示は13になっている。


 知らない人が見れば、立派な期待の新人冒険者だ。


 あとは所持品も確認されて、出てきた冒険者証を見てもらい、身分の証明されたギブンを憲兵がギルドまで案内してくれた。


「よぉ、ようやく来たか。昨日はお前が夜這いに来るのを待ってたんだぜ」


「ブレリア、さん……」


 一番会いたくなかった1人に、扉を潜った初っ端に声を掛けられ、ギブンはパニックを起こして回れ右して走り出した。


「待ちな!」


「待ちなさい」


 ブレリアに捕まれる距離ではなかった。ギブンに足を引っ掛けて、すっころばしてきたのは。


「なにするんですか!?」


「いや、君はおそらく私より素早いからな。逃がさないためには、こうするのが一番だと思ったんだ」


 打った後頭部を抑えてギブンが講義を続ける。その剣幕にオリビアは少し怯えたが、怯むわけにはいかない。彼に伝えなくてはならない事柄があるのだから。


「待ちなギブン」


「そうです。そうですよ。待ってくださいギブンさん。王宮で国王様とフラン様がお待ちですよ」


 立ち上がったところをブレリアに首を絡め取られ、放漫な胸で鼻と口を塞がれたギブンに、オリビアが良くない報せを持ってきた。


「手を離しなさい。ブレリアさん。国王様がお待ちなのです。あなたと遊んでいる暇はありませんのよ」


 そして冒険者代表として召還されているのは、オリビアのみ。先ほど伝令をもらった。


 舌打ちをしながら、ブレリアはギルド内に戻っていった。


「それでは行きましょうか」


「あの、えっと、どうしても?」


「どうしてもです。それといつまでそんな、オドオドとした態度でいるんです? シャンとしてください」


 ギブンは今まで、本気で“放浪の騎士プレー”が通じていると思っていた。


「そんなのが通じるのは13歳の夢見る少女までです」


「す、すみません……」


「まったく、あなたは冒険者として一級の光るものをお持ちなのです。ちゃんと胸を張って、堂々と顔をあげなさい。先輩冒険者としてのアドバイスです」


 オリビアにはまた1つ、大きな興味が沸いた。


 なんとも世話を焼きたくなる、この頼りない少年に、オリビア本人はそれが何かに気付いていないが、ここで初めて母性に目覚めるのだった。






 国王直々の依頼を受ける事になってしまった。


 向かうのは北の海。港町“フォートバーン”。


 海の魔物相手に王国騎士団は、王都とエバーランスの上級冒険者数名と共に戦ったが、状況は思わしくないのだという。


「近隣諸国にも応援を求めているのですが、我がグレバランスは大陸北西にある小国、その応援を待つ間にも被害は拡大すると思われます」


 玉座にいる、小さな国王が報告を受けている。


「すみませんギブン様。今現在この王都に大人といえるのは近衛騎士とメイドの方々だけなのです」


 玉座の傍らに立つフランがそう教えてくれた。


「えーっと、王様? ですか?」


 玉座にいるのは急死した先代王の跡継ぎ。


「あの第四王子様、は?」


「大臣と共に北へ向かいました。それだけピンチという事です」


 玉座にいるのは戴冠したばかりの新国王。ケーリッヒ・オーセグ・グレバランス、10歳の少年である。


「事情があって、本妃さまのご子息がこのお歳で即位成されたのです」


 お妃さまにはご息女が3人名。ケーリッヒ陛下の姉君がおいでだが、男児は王1人だけ。


 6人の兄君は皆、妾の子であることを理由に、即位を辞退した。


「このグレバランスは、初代国王陛下が国土の全てを見渡すためにと、領内で一番高い山の上に王都と王宮を築いたのです。言わば辺境です。それを他の王子様方は継承を嫌がって、10歳のケーリッヒ様に全てを押しつけたのです」


 しかし王がまだ、成人もしていないため、相談役にフランが大抜擢されたというのだ。


 本人曰く、「親族の中で私が一番年が近かったので……」との事である。


「安心ください。この国では、わが父エバーランス公爵の領土と、第一王子ラフォーゼ・ウルグランド・グレバランス様が治める、この国最南端にあるバンクイゼ領で、ほとんどの政は決められています」


 つまりここは飾りばかりの王都という事だ。


「それでも最終決定権はケーリッヒ様が握っておいでです。国王の決定で近衛だけ残した出兵。なのに良い報せはまだ届かないのです」


 大事な第二の人生。前世では成し遂げられなかった、仲間達に囲まれた、慎ましやかな生活を目指す新世界。


「それではギブン様、お姉様とブレリアさんの3人でフォートバーンへ向かってください」


 やはり、行くしかないのか……。


 いや、行くしかない。モブとして生きて行く為にも、このファンタジーワールドを失うわけにはいかない。


「今回ワタクシは国王の元を離れられませんが、王都にてご無事をお祈りしております」


 北の港町フォートバーン。


 王都のある山脈から北へ斜面を下れば、すぐにたどり着ける大陸最北端の都市。


 その賑わいは王都以上。


 ホンの1日も馬車に揺られれば到着する、エバーランスに次ぐ王都に近い町は、税収のほとんどを占める海産物が捕れず、また港が封鎖されているため、貿易もままならない状態。


 そこへ魔物討伐のためとは言え、多くの兵が滞在していて、食糧難にも陥っている。


 ギブンはまだこの世界に来て日は浅いが、既に夢にまで見ている海の幸を取り戻すためにも、今度こそ1人ではなく、仲間と共に魔物を討伐する。


 理想の冒険者としてのデビューを、あまり目立たないモブとして。


 今度こそ全ての目標を達成すると胸に誓った。

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― 新着の感想 ―
[一言] オリビアとか、女性陣がひどすぎる。 これに従っちゃう主人公がおかしすぎる。 確かに魚とか一部魅力はあるにしても。 特に人に関して、マイナス方向に振り切ってきている気が。 責任とか義務とかの、…
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