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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
105/120

STAGE☆105 「ぼっち男の次の展開」



「それでは円卓会議をはじめます」


 魔王城に戻ってきた一同は、集合させられて円卓に着かされた。


「遊んでいる場合ではないので」


 帰りの道中でギブンから聞いた内容を、ピシュは馬車にいるオリビア達にも聞かせたいと、2人で乗り移って座談した結果の円卓会議。


「お嫁さんランキングは一時中断です」


 アニメに影響を受けたか、芝居掛かった口調のピシュは、両肘を突いて汲んだ手の甲に口を当て、ボソボソと低い声でイベント終了を宣言した。


「それで問題は、その勇者って連中ね」


 気が済んだのかピシュは表情を一転させて、間抜けた声でテンケに勇者の事を尋ねる。


「勇者様は強いっす。正直ギブンの旦那に会うまでは、魔王なんてあっさりと倒して、派手な凱旋にオイラもパーティーの一員として、さほど苦労することなく、今後の人生を勝ち組で過ごしていけるって、本気で思ってたっす」


 アホ丸出しのピシュの陽気さに当てられて、テンケはオブラートに包むことなく、本音をだだ漏れさせた。


「ご、ごめんなさいっす」


「いいから続けて」


 睨んでおいて、それはないだろうピシュよ。ギブンは思う。


「ああ、えーっと、勇者パーティーはオイラが知っているだけで、勇者様を除いて4人っす。と言っても行程の半分が過ぎたくらいまでのことっすけど」


 前置きをしてから、テンケは戦士に武闘家、僧侶と魔法使いの仲間がいることを教えてくれる。


 戦士の名前はガランド・オーガスト26歳。


 パーティーの最年長で出自は片田舎の農村から、身一つで騎士団入りを果たした叩き上げだそうだ。


「実力はS級の冒険者をも凌駕するそうっす。あの頃のオイラでは計れない強さだったっす。騎士団にいながら戦い方は型破りで、ジョブ変更は勇者様のパーティーに入った後だそうっす」


 武闘家は女性、ララミヤ・ノーツ17歳。


 流派でも2人しかいない、竜の鱗を叩き割れる奥義を修得しており、拳聖の位を賜っているとのこと。


「気性の荒さはパーティー1っす。彼女の話を信じるなら、単独でダンジョンを攻略できるらしいっす」


 コアンナ・フララ21歳、僧侶。


 役職は僧侶だが、剣聖人と謳われるほどの剣の達人でもある。


「ミスリル製の盾や鎧を裁ち切ることができるんすよ。鋼の剣でっす。オイラはあの人が怒っているところを見たことないっす。いつも冷静で博識でもある、パーティーの司令塔なんす」


 魔法使いミラウ・パンヤ。


 15歳にして大陸に伝わる魔法書の全てを暗記、そのほとんどを使える天才。


「今は古代魔法の習得を生き甲斐にしているらしいっす。あっ、ミウラさんはハイエルフで、15歳というのは見た目の話で、本当は百歳を越えているという噂っす」


 テンケの言う通り、魔法使いは確かにエルフであるが、上位の存在であるかどうかは定かではないとのこと。年齢も非公開にしている。


 そして勇者の名はジオウ・イイセ17歳。


 なんとも判断しづらいがその名は本名であり、ちゃんと日本人らしく漢字表記もある。


 ギブンが今後知ることはない井伊瀬 次王という名が。


 テンケには明かしていないと言うが、フェロー界(人間界)の女神アブローシュアンが喚び寄せた歴とした転生者だ。


「勇者様はあちらこちらで協力者を得て、実力ある人に同行を求め、仲間を増やしているっす。オイラも荷物持ち兼斥候として一緒に旅をしてたっすが、ちょっとした行き違いで、ガランドさんからのアタリが強くなり、勇者様からも邪魔者扱いされるようになったっす」


 と言うのがテンケの見解。


 本当のところは向こうの話を聞かないと判断できないが、あまり好感を持てる性格ではない。今はそういった印象だ。


 勇者パーティーには、警戒が必要だろう。


 道中、仲間を増やしながら向かってきていると言うなら、もしかしたらこちら以上の戦力になっている可能性もある。


「現状の戦力がどれだけなのか、知っておきたいな」


「それならオイラが偵察に行くっすよ」


「う~ん、そうだな。そうしてもらえると助かるが、勇者がどこにいるか知っている訳じゃあないんだろ?」


「そうっすね。アタリを付けて聞き回って、居場所を突きとめたら見つからないようにかぎ回って、必要な情報を集めてとなると、けっこう時間がかかるっすね」


 情報は欲しいが時間的余裕がどれだけあるのかは、おおよそでしか計れない。


 顔見知りのテンケでどれだけ近付けるのか? 万が一捕まるようなことがあれば、逆に向こうに情報を与えてしまう事にはならないか?


「だったら私が一緒に行って上げるわよ。あなたから頼まれていたあれも、試してみたいしね」


 エミリアが一緒なら、あれというのがギブンが考えているモノだとするなら、確かに危険度を下げることも時間短縮も可能だろう。


「私も一度家に戻り、今回の魔王軍の進軍について、父とラフォーゼ様にご報告をしてまいります」


「そう言うことならあたしも、獣人の谷に帰るかな」


 オリビアに続いてブレリアも手を上げる。


「族長の判断も聞かなきゃならんだろう」


「ブレリアさん、私も連れて行ってもらえませんか?」


「ビギナ、なんでだ?」


「獣人の谷の族長様に挨拶をしておきたいのです」


 人間界に来る龍人は、まず獣人の谷に向かう者が多い。


「挨拶な、そいつは大事なことだ」


 オリビアとブレリア、ビギンが別行動を決めた。


「そう言うことなら、私もオーセンに戻りたいのですよ」


「マハーヌもか?」


「陸が穏やかでなくなるのなら、報せておく必要があるのですよ」


 皆の行動方針を聞いて、ギブンはバサラの顔を見る。


「魔王軍はまた、人間軍が責めてこないかの警戒をしなくちゃならんからな。ここに留まりはするが、やるべき事はいっぱいあるぞ」


 できる事なら西嶺に行って、グレバランス王国第二王子ゼオール・アウグス・グレバランスと話をしておきたい。ギブンはそう考えている。


「なんで西嶺に?」


「みんなと同じだよ。気になることは潰しておかないとな」


 ピシュは首を傾げた。


「この世界の神様であるネフラージュ様が嘘を吐くとは思えない。ここはゲームが基板になった世界なのは間違いないだろう」


「……そうね」


「となるとだよ。せっかく気付いてきた人間関係も、ゲームシステムの介入で狂わされるかもしれないよな。って」


「ゲームの強制力が働くだろうって事?」


「そうなった時に一番厄介そうな、ゼオール殿下の様子を見に行こうかと」


「強制力なんて本当に働くの? 何かの兆候を見つけたとか?」


「いや」


「はぁあ? だったらなんなの?」


 ピシュは眉を顰めた。ギブンは何を気にしているというのか?


「だってお約束だろ? この展開なら」


 ピシュは吹き出した。この期に及んでこの男は、プレーヤーとしてゲームを楽しんでいる。


「そう言うのって大概、主人公がやり込んでトッププレイヤーとなったとかで、非常識な展開に巻き込まれるモンでしょ」


「完成前にお蔵入りしたゲームが基になってるんだもんな。仕上げもされていないってんだから、設定も穴だらけって感じか? こうなったら気になるもんは、全部押さえておくべきだろう?」


「確かに」


 みんなは別行動で、それぞれがギブンの懸念を晴らすように動いてくれようとしている。


「それじゃあ、私もあなたと……」


「何を言っているピシュ、魔王様が魔王軍をまとめないでどうするんだ」


 バサラがピシュの首根っこを掴む。


 男はまたひとりぼっちになった。


 だったらヴィヴィに乗って、パッと行ってパッと帰ってくるのもアリかと思ったが、あの王子にはあまり突っ込みどころを見せるべきではない。と考えを改める。


「……歩いていくか」


 昔にこの森に作った抜け道を使えば、そこまで面倒な道程でもないだろう。


 みんなと違い、一緒に歩いてくれるような従魔はいないけど。


「……さびしいな」

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