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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
101/120

STAGE☆101 「ぼっち男は壁役?」



 魔王城の大広間、こんな狭いところで決闘が行われようとしている。


「なんで俺が?」


 狭いと言っても、バスケットコートが4面は取れる広さがあり、高さも学校の体育館の2.3倍はある。


 しかし戦うには微妙な広さである。


 このメンツが暴れれば、建物は崩壊してしまうだろう。


「いいから手伝いなさい。私一人で抑えられるわけないんだから」


 と言うギブンの目の前にプカプカ浮いている、アメリカ製の着せ替え人形サイズの女の子。


 顔はピシュそっくりで、背中に白鳥のような羽根を生やしている。


「嘘だと言ってくれ」


 肉体を手に入れた駄天使が、突然目の前に現れて驚きはしたが、不思議には思わなかった。


 ギブンが慌てているのは……。


「その名前って、ピシュの前世の記憶から適当に付けただけなんだろ?」


「だぁかぁらぁ~、適当じゃあないって、記憶には違いないけど、私がずっと使ってたアバターネームなの。ピシュは別人格のために改めて考えた名前なの」


「だってお前、“アイシェ”と言えばネトゲ界でけっこう有名な名前だぞ。そうか! 彼女に憧れて……」


「あんたがそう思うのなら、それはそれで構わないけど。この私の名前はアイシェ、誰がなんと言おうとアイシェなのよ」


 対戦は基本格ゲー派のギブンも、シューティングゲームもずっとプレーしてきた。


 eスポーツのTOPプレーヤーも一目置いていると聞く。無冠の帝王。


「格ゲーではあんたに全然勝てなかったけど、アイシェの名前を覚えていてくれたなんて光栄だわ。ほら、無駄話はこのくらいにして、むこうはもう準備が整っているわ。はやく防御障壁を張りなさいよ」


 第1試合はバサラ対ラージ。


 魔界の剣士同士の戦い。


 これまでバサラは自分の魔力で作ったオーラブレイドで戦ってきたが、ギブンから譲り受けたパートナーを手に入れた今、握られるのは相棒でジャガービートルのアード、六本あるうちの中足が変化した二振りの剣。


 一方のラージが持つのは、魔界で名高い魔剣ベレンクランデ。


 バサラの剣の師でもあるラージとの一騎打ちは、驚くほどあっさりと決着がついた。


「私のベレンクランデが……」


「申し訳ございません。まさかこんな」


 四天王に上り詰める糧となった。ラージの拠り所。


「……まぁ、よい。折れたものは仕方がない。おい、そこの魔工技師」


「私の事かしら? 私は魔道具の研究者であって、技師ではないのだけれど、私にその剣を直せと言いたいのでしょ?」


「人間ごときに直せるかは疑問ではあるが、見てくれを元に戻すくらいはできるであろう?」


 勝負に負けたことは仕方ない。


 剣の技量はまだまだだが、バサラが手に入れた力は、明らかに自分を上回ってしまっている。


 アードと呼ぶ魔物との同調、そこにギブン・ネフラの魔力が絡んでいるのだとすれば、致し方ないことなのかも知れない。


「ベレンクランデがないと寂しいのでな。なに、武器として使えなくてもいいのだ」


「随分と安い挑発だけど、買ってあげてもいいわよ。しっかりとお代は頂くけど、なんならもっと強固にしてあげてもいいわ」


「本当か!? しかしお代か、如何ほどになるかは分からないが、安くはないよな。こうして見知った仲なのだから少し勉強してほしいのだが」


 エミリアはこの後、魔剣を数倍強化した状態で修復してみせるのだが、ラージの宝物庫が空になったとかならなかったとか、それはまた別のお話。


「それじゃあ、第2試合といきましょうか」


 障壁係をギブンに押し付けて、進行役をするアイシェが二人の名前を呼ぶ。


「オイラの番っすね。勇者パーティーにいた頃は思いもしなかったっす。こんなオイラでも戦闘の役に立てるかもって、ここでしっかり証明してやるっす」


 フライングサーペントのラフォが変化した二振りのナイフ、2本を繋ぐ魔獣の胴体は、テンケの体を何周か回って蜷局を巻いている。


 勇者パーティーの一員として、雑用をさせられていたとしても冒険者としての経験値はそれなり以上だろう。実力の一端を見せてもらう絶好の機会と言える。


「それじゃあ頼んだわよ」


「なに言ってるの? 私を作ったのはあなたなんだから分かってるでしょ」


 対するはエミリア。がリッチを基に製造した、ゴーストゴーレム名前はエレ。


 彼女の作る魔道具は、どれもギブンが認める一級品。


 明らかに冒険ファンタジーの世界では異質な、科学的分野の産物。


 科学と魔法を融合した、オーバーテクノロジーによって産み出された魔獣が、どんな戦いを見せるのか?


「武器の1つも用意しないで、私に何をしろというのよ。アホマスター」


「アホマスター!? この天才を捉まえてよくそんな!」


「最終調整をしてくれたフリュイの方がまだ良い仕事してるわよ。彼女に言われていたでしょ? 装備とチェック、「任された」って言ってなかったかしら?」


 喋り方は創造主と同じ、声もそっくりだから、ちゃんと見ていないと、どっちの発言か分からなくなる。


「そう言えば、まだ戦闘プログラムもセットしてなかったわね。……ということは?」


「私たちはここで棄権しまぁ~す。アホマスターのお陰ね、不戦勝おめでとう」


 あっけなさは第1試合以上、これで第2回戦第1試合はバサラ対テンケに確定した。






 第3試合はブレリア対マハーヌ。


 ギブンはここ最近ずっと一緒に行動していた、ブレリアの実力はよく知っている。


 つもりだったが短時間でこれほど変わってしまうとは。


「俺との従魔契約は破棄された。けど魔獣同調は繋がっていて、俺の魔力をハクウは使えるんだよな」


 ギブンが意識して拒めば、魔力供給はカットできるがそんなことはしない。


 ブレリアを契約者としたハクウがどう変わったのかが楽しみだ。


「マハーヌは師匠である海の魔女から、また修行をつけてもらったんだってな。お前は身体能力だけでも侮れないのに、いったい何を学んできたんだろうな」


 ブレリアに海の魔女の事を教えたのはギブンである。


 マハーヌ対策なのか? 愛用の戦斧を持たず、戦闘スタイルは素手での殴り合い? いや、両手にはハクウの爪がある。殺傷力はあるようだが、獲物の間合いも破壊力も段違いのはず、これでどんな戦い方をみせてくれるのだろう。


「期待させておいて御免なさいなのですよ。魔女様から学んだのは魔力調整だけで、あとはずっと人魚の里の戦士団から武器の扱いを習っていたのですよ」


 そう言うと、ドレスの一部が槍となり、持ち手がマハーヌの手の中に収まる。


「こうしてスライムのフラムちゃんが、色んな武器に変化してくれるので、徒手空拳は卒業したのですよ」


 剣にかぎ爪、籠手や鞭にまで姿を変える、スライムの特性を活かすための武術を叩き込まれてきたと言う。


「そうか、敢えてあたしの土俵で戦おうってのか? 笑わせてくれる」


 ブレリアがハクウに爪を収めさせる。狭い空間での近接戦に不要と判断して翼も畳む。


「従魔を武器にしているのはみんな同じだ。マハーヌ、お前の武術がどれほど成長しているのかは知らんが、全力でぶっ潰してやるよ」


 ブレリアが巨大な戦斧を握った。


 今まで使ってきた物とは違う。


「それは……ハクウちゃんの?」


「ああ、翼だ。言わば羽毛でできているわけだが」


 羽根の斧、フェザーアックスを床へ振り下ろす。


「切れ味は抜群だぜ」


「ちょっとギブン! ちゃんと床にも障壁はりなさいよ」


 アイシェが割れた床に体の半分を隠してギブンを注意する。


「すごい破壊力なのですよ。なら私は……」


 マハーヌのイブニングドレスがチャイナドレスに変わる。


「この世界にも、チャイナドレスなんてあるのか?」


 ギブンは素足を露わにし、真っ赤なドレスのスリットからのぞける、白い布が極めて少ない下着をバッチリ拝む。


「動きやすそうなカッコウになったじゃあないか」


「ブレリアちゃんは強いのですよ。私も全力でやるのですよ。そしてギブンにもっともっと可愛がってもらうのですよ」


 ブレリアの戦斧に対し、マハーヌは湾曲した大剣を握る。


 大物同士のぶつかり合いは、迫力ある大音響で始まった。

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