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Lady Now Cinderella

作者: うお子

 おしゃれが大好きなシングリィは、今日は特別な日だそう。ワクワクしながら、クリスマス前の街へ、駆け出していきました。さぁ、一体、今日はどんな一日になるのでしょう。

 「赤いカチューシャ。これは私!黒いメガネ…これは違うわ。私じゃない。裾は長い方がいい。そうそう!引きずっちゃうくらいのね!」

 シングリィは鏡の中の自分をしげしげと見つめながら言いました。


 取っ替え引っ替え、あっちこっちから、お気に入りの洋服を、出してはしまい、していたので、セーターやスカートが、タンスからはみ出しています。 


 それから、赤い缶の箱を、机に置きました。お気に入りのティーカップも一緒に並べました。


 ウサギのワッペンの付いた青いコートを羽織ると、玄関に置いてあった赤いブーツに勢いよく足を入れて、飛び出て行きました。


 シングリィは年に一度、街のお菓子屋さんへ、大好物のココナッツクッキーを買いに行く事を決めていました。今日がその日です。


 クリスマス前の街は、大賑わいです。たくさんの人が、楽しそうに荷物を抱えています。クリスマスのために準備をしているのです。


 お菓子屋さんの前には、金と銀と赤色で装飾された、大きな大きなもみの木がありました。みんなが立ち止まって、見上げています。シングリィは長い間、もみの木を見ていたので、首が痛くなってしまいました。


 「ため息がでちゃうくらいステキね!」シングリィの思ったことが、自然と口から出て来ました。


 「さて、ココナッツクッキーを探さなきゃ!」

 クッキー売り場には列が出来ていました。なにせ、こちらのお店は、街から少し離れたシングリィの村まで届くほどの評判だったからです。そして、そのクッキーは、珍しい事に、たいへん大きくて、ふかふかのクッキーでした。


 シングリィの順番が来たとき、アーモンドクッキーは7枚、ジンジャークッキーが5枚、イチゴとチョコレートのクッキーが3枚ずつ。もうココナッツクッキーはありませんでした。

 

 シングリィはガッカリしました。今日のためにおしゃれをして、紅茶の用意もしてきたのに。と思いました。


 お店を出ると、悲しくて、悲しくて、みんなが見ているのもお構いなく、泣き出しました。

 「うわーん。うわーん。ひっくひっく。」

 

 シングリィが、なぜ泣いているのか分からなくて、不思議な顔をしている人がいました。心配そうに見ている人もいました。


 ひとしきり泣くと、シングリィは落ち着きました。そこへ、「どうしたんだい?」と、一人のおじいさんが歩み寄って来ました。

 シングリィは、ココナッツクッキーが買えなかった事を話しました。すると、おじいさんは、大事そうに抱えた紙袋の中から、小さな袋を取り出して、シングリィの手に握らせました。「どうぞ。」


 開けてみると、さっきのお店のココナッツクッキーが一枚入っています。

「差し上げますから、半分こしましょう。」おじいさんは、ニッコリと笑いました。


 シングリィは嬉しくて嬉しくて、また泣いてしまいそうになりました。「ありがとう!おじいさん!」


 2人は、もみの木の下にあった椅子にこしかけて、また、もみの木を見上げました。そして、ココナッツクッキーをサクッと割ると、中から甘い匂いがしました。口に入れるとふわっとまた甘い香りが広がりました。


 シングリィは言いました。

 「今日は、あたしのお誕生日なの。今年は食べられないかと思ったけど、あなたのおかげで、すてきな日になったわ!ありがとう!」

 

 「そうかい。それは良かった!おめでとう!キミはいくつになったんだい?」


 シングリィは目を輝かせて言いました。

 「77歳よ!」


 シングリィは家に帰ると、ココナッツクッキーの代わりに、レーズンを添えて紅茶を飲みました。「おめでとう!私!」

 入れ立ての紅茶が、またシングリィの心の中でほわっと香りました。

 いくつになっても、好きな物を好きと、ひるまず公言出来る生き方であり、世の中であって欲しいと言う願いを込めました。近頃では、本当に、年齢不詳な方が増えた気もしますが、もっともっと、見た目や枠に収まらない、自由な心を持った人が増えると良いなぁ…と言う思いでいます。作者も、いつまで経っても、心はフレッシュでいるぞ!と意気込んでいます。

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