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訳あり

「さぁ、お姫様」

 ベルナルドに捕らえられ部屋に通されたアスタは、拘束を振り解き逃げようとした。そのアスタの頰をベルナルドは思いっきり引っ叩き、近くのベッドにアスタの体を叩きつけた。

 豹変した態度でアスタに馬乗りになるやその頰を何度も引っ叩き、最後には掌で掴み上げ、自身の顔をアスタの目の前に突き付け罵った。

「このアバズレが!、貴様などこの私がいなければ、ただの小娘に過ぎないんだ」

 大の男に力尽くで押さえ込まれ、脅し上げられたアスタの目に悔し涙が滲み出た。

「ふん、思い知ったか」

 ベルナルドは、吐き捨てる様に罵ると、しばらくそこで大人しくしてろ、と部屋を出て行った。

「悔しい……」

 後に残されたアスタは、一人ベッドで嗚咽し始めた。

 やがて、散々泣きはらしたアスタは、胸元のペンダントを取り出し中を開くと家族写真をながめた。

「お父様、お母様……」

 そして、ベルナルドを思い出し、拳を握りしめた。

「あんな卑劣な奴に超古代文明を渡せない……」

 ふと、アスタは虚な目で窓の外を眺めた。空にはベルナルドの飛行船艦隊が隊列をなして浮かんでいる。さらに扉の向こうは衛兵が待ち構えている。もう逃げ場所はない。

 アスタは、唇を噛み締めて窓の外を茫然と眺め、やがて、いつしか眠りについてしまった。

 しばらく経った後の事だった。突然、鳴り響く轟音にアスタは、はっと目を覚ました。

「何?」

 アスタは慌てて起き上がり窓の外を見て息を飲んだ。飛行船艦隊の周りが煙幕に包まれ、その下を物凄い数の小規模な飛行船が襲って来ているのである。

 さらに聞き耳を立てると、外で盛んに「賊だ」と騒ぎ声が響いていた。


「参ったぜ。全く」

 軍に捕らえられ牢の中に放り込まれたジャックとフレディは、ため息をついた。

「まさかアスタがお姫様だったなんてね」

 ジャックが呟き、フレディがふと思うことを言った。

「でも何のお姫様なんだ?。確か皇女は別にいただろう」

「そういえば……」

「まぁ、どうでもいい。とにかく俺達の事だ。折角、事業の一歩を踏み出せたというのに、とんだケチがついたもんだぜ」

 フレディは、ゴロリと冷たい牢の上に寝転がった。

「これから僕達、どうなるのかなぁ」

「知るか」

 不安げに尋ねるジャックにフレディは、ふてくれされたように答えた。

「それはそうとフレディ、何か聞こえない?」

「何かって?」

 不機嫌気味に上体を起こしたフレディが耳を澄ませていたその直後だった。物凄い轟音が鳴り響き、牢の中のジャックとフレディは、吹き飛ばされた。


 ………

 ……

 …


「……ャック……おい、ジャック!」

 呼び止めるフレディの声に気がついたジャックが、ぐわんぐわんする頭を押さえ、起き上がると一面は火の海だった。

「フレディ、これは一体?」

「分かんねぇ、とにかく今のうちだ。ズラかるぜ」

 ジャックはうなずき、フレディとともに立ち上がるとへし曲がった牢の扉をこじ開け、外に出た。

 見ると賊の飛行船が、軍の飛行船艦隊を煙幕で目眩しをして街へ襲い掛かって軍と撃ち合いをしていた。

「おいジャック、行くぞ」

「えぇ!?、どこへ?!」

「お姫様のところだ」

 フレディは、ほくそ笑んで付け足した。

「あの訳ありは絶対、金になる」


「逃げないと」

 アスタは、燃え盛る炎を避けて部屋から屋敷を出て、はっと息を飲んだ。

 見ると賊が目の前に迫っているのである。アスタは一目散に逃げ、ある街角でばったり人と出会った。

「おやおやお姫様」

 その顔を見てアスタは戦慄を覚えた。さっきまで自身を罵倒し、張り倒したベルナルドが立っていたのである。

「どうやらもう一度お仕置きが必要の様ですな」

 そうにんまりと微笑むベルナルドにアスタが目を見開いて後退りしていると、不意にドンっと音がしてベルナルドが白目をひん剥いてバタリとその場に倒れ込んだ。

「さっきはよくもやってくれたな」

 見るとジャックとフレディがベルナルドの後ろで鈍器を片手に立っていた。

「ジャック、フレディ!」

「アスタ、こっちだ」

 ジャックとフレディは、アスタを引き連れ、飛行場のある場所へと走った。

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