無線
「ジャック」
操舵輪を握るジャックを呼び止めたフレディが傍受した無線を流した。
「舵を替わる」
フレディが操舵輪を握り、ジャックはメモ帳を取り出し、傍受した無線を解読しはじめた。
「アスタ、手伝ってくれ」
ジャックは、近くにいたアスタを呼び止めた。
「ジャック、読めるの?」
隣から覗き込むアスタにフレディが答えた。
「こいつは、一時、通信兵やってたんだ」
「へぇ」
アスタは驚きの表情でうなずいた。やがて、暗号を解読し終えたジャックは顔をしかめた。
「フレディ、軍が西に動いて来る」
「何だって!?」
不服そうな声を上げるフレディにジャックが続けた。
「多分、僕達が出会った軍の船から見て、東部の軍で動きが激しくなってるんだろう」
「勘弁してくれよぉ」
フレディが苦虫を噛み殺した様な顔で舌打ちした。
「フレディ、とにかく慎重に行こう」
「あぁ」
二人は、相談した後、空路を変更することにした。
それからしばらく経ってからの事だった。
「フレディ」
双眼鏡を手に西の空の遠方を眺めながら、ジャックが操舵輪を握るフレディを呼び止めた。
見ると壮々たる飛行船艦隊が隊列を組んで西へと向かっている。
「ジャック、空路を変えておいて正解だったな」
フレディがポツリと言い、ジャックがうなずき答えた。
「多分、何かあったんだろう」
「何かって?」
「賊の討伐か、あるいは……」
しばし考え、ジャックは言った。
「超古代文明絡みかな」
あれだけの軍勢が移動しているのは、普通では考えられない事だけにあり得る可能性も限られている。
「どっちにしても、穏やかにやって欲しいもんだぜ。こっちは商売上がったりだ」
フレディがボヤいた。
その後、二人は軍に見つかりにくい迂回ルートを通って、西の都ランスまで辿り着くことが出来た。
「ここがランスか」
新しい場所に来る度にテンションが上がる二人は、目を輝かせて街中に降り立った。
積荷のオクトルは、飛ぶように売れた。たちまち大金を手にした二人は、にんまり目を細め顔を突きつけあって喜んだ。
その夜、ジャックとフレディは大盤振る舞いでアスタとともに高級飲食店に入った。
「一番高い料理にしてくれ。何たって俺達は今、大金持ちだからな」
メニューを手に鼻高々でほくそ笑むフレディにボウイが恭しく頭を下げつつ如何わしい目で一瞥し去って行った。
「乾杯〜!」
料理が運ばれて来ると三人は、グラスを傾けあった。ジャックとフレディは、すぐさまアスタに頭を下げた。
「有難う、アスタのお陰だ」
「あぁ、アスタが口利きしてくれたお陰でおいら達も事業の一歩を踏み出すことが出来た。感謝してる」
そんな二人にアスタは、どうってことないよと無愛想に答えた。
「それよりジャック、これからどうする?」
「え?、どうするってゼーレに帰るんじゃ」
「馬鹿だな。手ぶらで帰るなんて勿体ないじゃないか。帰りも向こうで高値で売れそうなモノを見つけて行こうぜ」
「そうか!。そうと決まれば、明日にでも……」
そこまで話しかけた時だった。
いきなりガチャリとドアが開く音がして、衛兵が流れ込んで来た。
「な、何すんだよ」
ジャックとフレディは、たちまち取り押さえられ、床で暴れた。
「一体おいら達が何したって言うんだよ」
心あたりがありまくりながらも軍にいい思い出がないフレディが詰った。
「誘拐の罪だ。大人しくしろ」
「誘拐?」
てっきりオクトルの一件での取り締まりだと思った二人は、顔を見合わせた。
そこへ一人の小太りの中年男がアスタの前に歩み寄った。
「ベルナルド!」
いきりたつアスタにベルナルドはニヤリと笑い、こう言った。
「お天馬は、いけませんなぁ。お姫様」
「お姫様ぁ?!」
ジャックとフレディは思わずアスタの顔を見た。
アスタは、歯軋りしながら、周囲を取り囲むベルナルドの兵を睨んでいた。




