問い
それでも先に進むーーそう言ったジャックとフレディにアスタは尋ねた。
「どうして?」
それはアスタにとって、素朴な、それでいて大切な質問だった。なぜならそれがもし偏狭な視野の利己心に満ちたものなら、それは破滅しか生まないからだ。現にベルナルド達がそうだった。彼らは、ゼノ文明を独占し戦争や天変地異で民衆を煽って、脅し、思考力と判断力を奪い取って、この世界を支配しようとしている。二人がベルナルド達の様にならないとは、限らない。
「どうして……か。どうしてだろう……」
二人は、顔を見合わせて考え、そして諦めた様に言った。
「分からないよ」
そんな二人に、だがアスタは、なおも答えを待った。ここで二人から、答えが得られるかどうかがエルランドのシステムを開く鍵なのだが、それは今はアスタの口からは言えない。
そんなアスタの思いを察してか否か、フレディが真剣に考えた末に率直な思いを語った。
「アスタ、正直おいらには、ゼノ文明のことはまだよく分からない。確かに手に負えないくらい凄い文明だってことは分かるし、滅ぶに至った経緯も分かるような気がする。おいら達のこの文明も同じ道を辿るかもしれない。けど……」
そう前置きした後、フレディは続けて言った。
「けどおいらの目の前に未知の世界があるなら、そこには行ってみたい」
それを聞いたジャックもうなずいた。
「きっとエルランドさんだって、そう思っていたはずだよ。確かに失敗もある。思うようにいかないことだってある。それでもずっと新しいことに挑戦し続ける。それは、僕達が少年兵だった頃からの夢なんだ」
この二人の基本的な姿勢は、失う一方で何も得るもののなかった少年兵時代に確立した。知りたい事を自由に知り、行きたい場所に行って、自分達が望む事業をする。押しつけられた価値観でなく、自らの足でそれを切り開いていく。そこに何よりもの喜びを見出す様に気がつけばなっていたのだ。戦争への絶望が二人をたくましくしたと言っていい。
「それに」
とジャックとフレディは、顔を見合わせお互いに言った。
「ジャックとなら」「フレディと一緒なら」
二人一緒なら何とかなる。一度は離ればなれになり、そして、対決をするまでに至り、再び一緒になったことで強固になった二人の絆だった。そんなジャックとフレディの冒険心と射幸心に富んだ目をアスタが眺めていたときだった。不意にエルランドのシステムが開いた。
ーーエルランドが心を開いた……
全てを解放した訳ではなく、極めて限定的ではあったが、アスタは自分以外の人間にシステムが開いたことに驚いた。エルランドは言った。
『ジャックとフレディに我々の成功と失敗の歴史を託そう』
アスタはなおも不安だった。確かに今の二人なら出来る気はする。だが今はよくてもゼノ文明を手にするうちにガラっと人が変わってしまわないだろうか。
そんな不安を拭い去るようにジャックとフレディが言った。
「アスタ、君も一緒だよ。君が僕達を導くんだ」
「おいら達をこれからも頼むよ」
そう笑いかける二人にアスタは、すっと肩の荷が下りる気がした。
ーーそうだ。私はもう一人じゃないんだ。私もこの二人と一緒なんだ。
差し出す二人の手をアスタは、しっかり握り返しながら言った。
「ありがとう。ふたりとも」
その瞬間、ジャック&フレディは、ゼノ文明の正式な後継者となった。あらたな段階に入った三人は、新しい事業に向けて足取り軽く、その場を去って行ったーー




