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作用

 エルランドの一生、それは栄光の絶頂感とと絶望の悲壮感の極端さ満ちている。彼はゼノ文明史上最高と思われる英知を手作りで作ったが、その頭には、常に文明の滅亡と言うものがあった。

 時あたかも文明が成熟し、組織的硬直が蔓延する中、エルランドはその君主として生まれた。

 君主と言っても象徴に過ぎず、政治は衆愚化し、彼は子供ながらに自らの文明が限界を迎えている事を悟った。だが、どうすればいいのかは分からなかった。

 やがて、彼に転機が訪れる。この世界に異世界が存在すると言う説に出会ったのだ。彼はこの異世界転移論に夢中になった。

 そして、思い立った彼は突如として単身、王宮を去る。この説を唱える学者にその身分を隠して弟子入りしてしまったのだ。

 学会の有力者に自分が君主である事を明かさないよう根回ししていた為、周囲は何も知らずに彼と接した。

 そして、学者は、この風変わりな弟子をこき使い、そこで彼は学者に怒鳴られながらも、あらゆる実験に従事した。

 学者にとって弟子は使い捨ての道具に過ぎず、彼にとってその学者も自らの見識を深めるための踏み台に過ぎない。彼にとって必要なのは、くだらない感傷主義ではなく、常に現状を打開するエネルギーだ。

 そんなドライな関係の中でやがて、自らの異世界転移理論と技術を確立した彼は、その運用に必要と思われる知識を全て独学で学んだ。

 全て、偏狭な利己心からでなく、文明を再興させたいと言う思いからだ。生まれながらに君主の座にあった彼にとっての宿命だと言っていい。

 そして、王宮に戻るや周囲の反対を押し切り、彼は一大事業を起こす。自らの異世界転移理論をもってして、その存在を明らかにしようとしたのだ。

 始めは失敗の連続だった。やがて、計画は暗礁に乗り上げ、彼は何度も窮地に立ったが諦めなかった。

 彼はその事業をやり切るための強い意志と信念があった。

 やがて、数々の苦難の末、送り出したある一団が遂に異世界への転移に成功する。机上の空論に過ぎなかった異世界の存在が実証されたのだ。

 そこからは掴み取りの時代だった。ゼノ文明に空前の異世界ブームが巻き起こり、その技術は日進月歩で飛躍し、膨大な富と栄光を築いて行った。

 異世界鉱脈を求めて人が殺到し、そこから採掘される異世界鉱石が人々の生活を一変させたのだ。

 ーー遂に自分の時代を自分で掴み取った。

 このとき、得意の絶頂にあった彼は、成功に浮かれる周囲の中である仮説にはたとぶち当たった。それは異世界鉱石についてである。

 この異世界で結晶化した鉱石は、元を辿ればこちら側の作用によって生まれたものではないのか、と。

 だが、成功と富を築いた彼にとってその説はあまりに危険だった。これまでの成功を否定しかねないこの仮説を自ら封印した。

 そこに悲劇があった。こちら側の作用が異世界に影響を及ぼす様に乱開発された異世界側の変化がこちら側の世界にも影響を及ぼし始めたのだ。

 天変地異や原因不明の疫病が流行し、人々の生活は混乱を極めた。栄華からの転落は早かった。

 やがて、これを機に王家の跡目争いが発生し、幾つもに分裂し、争いが起こった。

 ーーこの文明は、いずれ滅びる。

 常に文明の滅亡の危機感を抱いて来た自分がかえってこの文明を危機に陥れてしまった失意の中でそう悟った彼は、ある決意をする。自らが次の文明の為の礎になろうとしたのだ。

 ーー私は確かに成功した。だがその成功に囚われるあまり、全てを失ってしまった。

 もし、この思いを継ぐ者達が現れたら、そのときは……

 彼は、自らの持てる全てを投じ、ゼノ文明のあらゆる英知をある異世界へと隠し、自らそこへアクセスするためのシステムとなるべく散ったのだった。


「これがエルランドの一生だよ」

 アスタは、呆然とする二人に言った。

 そんな壮大な一生を見させられたジャックとフレディは、まだ言葉を失っている。

 栄光と破滅ーーそれは、事業を志す者にとって切っても切れない要素かもしれない。

 さらにアスタは言った。

「エルランドは、その事業で全てを手に入れたが、同時に全てを失った」

 アスタは、ジャックとフレディを見た。

「二人はどうする?」

 そう問うアスタに二人は黙りこくった。言葉が出なかったのだ。アスタは、そんな二人を何も言わずにじっと見ている。

 やがて、フレディが言った。

「それでも……おいらは先に進むよ」

「僕もそうする」

 ジャックもフレディに続いた。

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