破損
何とか峡谷の割れ目に飛行船を不時着させたフレディは、ジャックが取り持つ機関室へと走った。
「ジャック、どうだ?」
「何とか火災は抑えたよ、ただ機関がやられて修理に時間が」
「賊が来る。おいらが守るから急いでくれ」
「分かった」
ジャックはうなずき、スパナを手に再び機関室に潜り込み、その一方でフレディは、銃を取り出し、弾を込めるや船外に出た。
「ダメだ。主要な部分が破損してる」
ジャックはパーツを交換しながら額に汗を流し、その絶望的な状況に頭を抱えた。
「ジャック、何とかなるよ」
ふとかかる声に横を見ると、アスタがダリヤ鉱石が入った燃料庫を眺めている。
「アスタ、そこに触れないで、まだそこの仕組みはよく分かっていないんだ」
「ここはね、こうなってるの」
アスタは、近くにあった紙に仕組みを書き、それを横から眺めたジャックが息を飲んでその紙を手に取って食い入る様に眺めた。
「これは……」
たちまち応急措置のアイデアが閃き、ジャックは機関室と燃料庫をつなぎ始めた。
「ジャック、スパナ」
「ありがとう、アスタ」
「それとこの装置は、こっちに繋いで」
ジャックは、己の閃きとアスタの助言と助けを得て、破損した飛行船を物凄い勢いで修理して行った。
と、そこへ外から銃弾が飛び交う音が聞こえた。
「ジャック、急いで」
「うん」
ジャックは、アスタにうなずき黙々と作業を続けた。
「くそ、賊の奴ら。もうここを嗅ぎつけやがった」
銃を手にフレディは、峡谷へと近寄って来る賊に威嚇射撃を繰り返した。
だが、多勢に無勢で制圧されるのは時間の問題だった。
「こんなところで賊に積荷を奪われてたまるかよ」
フレディは、弾を込め直し、狙いを定めた。と、至近距離に飛んできた弾が跳ね、フレディの腕をかすった。
「くそ、やられた」
飛び散る鮮血にフレディは、腕を押さえた。
「これまでか」
フレディが観念しかけたとき、後ろで飛行船が音を立てて動き始めた。
「フレディ、直った。行こう」
見るとジャックとアスタがこちらに手を振っている。
「でかしたジャック!」
フレディは、笑顔を綻ばせて弾が飛び交う中、飛行船へと飛び乗った。
「行け行け行け行けっ!」
賊を置き去りにしてぐんぐん上昇していく飛行船の甲板でフレディは、腕を振りまわし、小さくなっていく賊を挑発した。
「ざまぁみやがれ、こんなところでお前らにやられてたまるかってんだ」
やがて、賊の放つ弾の届かない高度まで上がったところで操舵室に戻って来たフレディに、舵を握るジャックが言った。
「フレディ、怪我してる」
「大丈夫、かすり傷だ」
腕を押さえるフレディにアスタが慌てて応急措置を施し始めた。
「なぁアスタ、あんま大層にしないでくれ」
「いいから黙ってて」
フレディは、アスタの言われるがまま包帯を巻かれた。
ふと、床に落ちているアスタの書いた機関室でのメモ書きを見たフレディにジャックが言った。
「フレディ、凄いんだ。あのダリア鉱石が積まれた燃料庫は……」
ジャックはひとしきり説明をはじめ、それをフレディがじっと聞き耳を立て、やがて、説明が佳境に差し掛かったところで大きくうなずき唸った。
「で、そのコンセプトがアスタが書いたそのメモなんだ」
ジャックは、操舵輪を手にしたままフレディに言った後、アスタを見た。
「アスタ、凄いよ。どうしてそんなに超古代文明に……」
「関係ないよ。直したのはジャックだ。私は何もしてない」
食い入るように眺める二人にアスタは、ぷいっと顔を背けた。それ以上、触れてくれるなと言ってるような顔だった。




