牢
デューリオが軍にもたらした損害を知りベルナルドは、怒り狂っていた。
「今すぐ、あいつの首を切り落とせ!」
そんなベルナルドを見たレオンも見切りをつけた。
「フレディもここまでの男だったか」
そうと決まれば早いのがレオンだ。事業の損害が少ないうちにフレディをデューリオから切り離すと牢屋にぶち込んだ。
フレディは、何も言わずにそれに従った。だが、その心中は無念一色だった。
「こんなところでおいらは、終わる訳にはいかない」
冷たい牢の中でほぞを噛みつつ、密かに再起を窺っていた。
フレディが自らの手で組織したデューリオの、思っても見なかったつまずきをジャックは、風の便りに聞いている。ジャックの心境は複雑だった。
確かに自分達はそのおかげで助かったものの、成長が急だっただけに階段を転げ落ちるように勢いを失っていくデューリオを見ているのは、あまりに酷だった。やがて、ジャックは意を決した。
「アレックスに連絡を取ろう」
ジャックは、軍の内通者であるアレックスのルートを使って、策を練り始めた。思い通りにいくかどうかは、分からない。だが、自分達のこの先の展望を描くには、それしか無い気がしていた。
「ジャック、それは本気かい?」
イザベラは、現れたジャックに何度も念を押した。
「イザベラおばさん、お願いっ!」
そう頭を下げるジャックにイザベラは苦笑し、うなずいた。
「もしうまく行ったら倍にして返すから」
そう言ってのけるジャックをイザベラは、ニヤリと笑って見た。
「ほぉ、そいつは楽しみだね」
そう言いつつ、確かにもし上手くいけば、それはそれで面白そうなことになりそうな気がしていた。
「まぁ付き合ってやるか」
イザベラは、ジャックの計画を了承した。
その後、ジャックは、さらに足を伸ばしラトニア商会のカルロとも連絡を取った。
「カルロさん、この計画について、うちは持てる全てを投じます。だから、協力して下さい」
そこまで言うジャックにカルロも肯定の意を示した。
「分かったよジャック、協力しよう。何がいる?」
「ラトニア商会のすべてです」
そう言ってのけるジャックにカルロは、苦笑した。
「おいおい、ジャック。俺は社長じゃないぞ」
そう言いつつ、カルロは内々にジャックの計画を了承した。
ーーおいらもいよいよ終わったのかな……
牢の中にいたフレディは、何もできない現状に溜息をつくしかなかった。そんなある日、フレディは、出された食事にあるメモが挟まれていることを見つけ、目を走らせた。
「これは……」
アレックスと名乗る人物からの正体不明のメッセージーーそこに書いてあるのは、脱走の手引だった。その真の差出人の心当たりについて、フレディに思い当たる節は一つしかない。
「ジャックか……」
フレディに複雑な思いがよぎった。ジャックにリベンジし、アスタのゼノ文明を手中に収めるまであと一歩のところまで行った自分が今度は、逆にジャックに助けられようとしているのである。
「皮肉なものだな」
フレディは、自嘲し、そして悟った。
「結局、おいらの器量はここまでだったんだ……」
ジャック&フレディのときは、フレディが作った急成長をジャックがその後の安定へと繋げていた。言わば動と静の両輪だったといっていい。その静の部分を欠いたフレディは、たちまちその限界を露わにし崖っぷちに立った。
薄々感じていた事だったが、自分には、足らないものがあり、それをジャックは全て持っているのである。
ーーそれに……
フレディは考えた。あのアスタが持つゼノ文明についてだ。あれは、自分の様な新参者がおいそれと手を出すべきものでは無い。
悔しいかな、やはり、あれはアスタのものなのだ。
ーーおいらがこの先、事を成すにはジャックとアスタの助けがいる。
そう悟ったフレディは、悩んだ末にその脱出計画に賭けることにした。その夜、フレディは密かに手引きに従って軍の牢を脱出した。
「フレディか?」
待ち合わせ場所に来たフレディをある男が待っていた。
「あなたは?」
「アレックスだ」
アレックスはフレディを連れて、軍の牢を去って行った。




