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デューリオ

「姫様を奪われるとはな……」

 憤るレオンにフレディは、言った。

「レオンさん、アスタの事はおいらに任せて下さい」

 レオンはじっとフレディを見たが、やがて、うなずいた。

「いいだろう。必要なものがあったら私に言い給え」

「じゃぁ早速」

 フレディは、言った。

「カンパニーを一つ、作らせて下さい」

「カンパニー?」

 レオンは、しばし考え思い当たる節にうなずいた。

「キニシスの専売公社か?」

 にっと笑うフレディにレオンは、いいだろう、と許可した。

「派手にやり給え」

「へへっ、そうさせて頂きます」

 そこからフレディは、早かった。あっという間に専売公社『デューリオ』を立ち上げた。フレディの母国語でリベンジを指す言葉だ。このデューリオの事業を軌道に乗せるべく、フレディは次々に手を打ち始めた。その第一歩がラトニア商会の鉱石研究の第一人者カーティスの買収だ。

「バカにするな!」

 フレディの引き抜きに対し、カーティスは当初頑なだった。もともとカーティスは出世欲がない。ただ単に自らの器量を表現することにのみ快楽を覚えるタイプだ。

「そうはいうものの、どこかに弱点はあるはずだ」

 そう睨んだフレディは、このカーティスをものにすべく探偵のベンを呼んだ。

「頼むよベンさん」

 報酬を示すフレディにベンは、胡散臭い笑顔を作り、仕事へと去って行った。結果はすぐに出た。カーティスには娘がいたのだが、最近、難病にかかり頭を痛めていたのだ。

 フレディはすぐさま手を打った。軍の病院に掛け合い、一番の医者にあたらせ破格の条件で入院させるとカーティスに言い寄ったのだ。

 これには、頑固なカーティスの心も揺らいだ。事務所で一人、悩むカーティスは、ついに折れ、カルロに言った。

「カルロ、すまない……」

 この気に病む友をカルロは止める事は出来なかった。

「カーティス、君は君の道を歩めばいい」

 カルロは、憔悴し切ったカーティスが去って行くのを見送った。カルロの心境は複雑だった。

「フレディのデューリオは、もしかしたら大化けするかもしれない」

 その予感は、的中した。開発の第一人者を得たフレディは、次にキニシスの採掘専門の部隊を組織化した。もはやフレディにとってキニシスの採掘は、お手の物だ。アスタがいなくても異世界鉱脈を掘り当てる技術を独学で開発したフレディは、これを一人でノウハウ化し、供給ルートを完全に確立し、市場の川上から川下までをすべて制圧した。

 始めはフレディをただのレオンの取り巻きの子供と思っていた周りの大人達は、次第に目の色を変えることになった。

「フレディは、いつ寝てるのだ?」

 そう影で噂される程、フレディは多忙を極め、デューリオの事業に鬼気迫る迫力で没頭し、そんな事業の最前線に立つフレディをデューリオのトップとして、レオンは人モノカネの全てを注ぎ込んで支援し続けた。

 レオンにとってフレディは、ただの道具だ。ひたすら道具としての利便性のみを追求した。フレディもそれは心得ている。あの海域でアスタが見せたゼノ文明の破壊力に魅せられて以降、それを自らに取り込むべく身を粉にして働いた。

「フレディを助けてやれ」

 レオンの影からの指図の下、フレディはメキメキと才覚を露わにして行った。

 多々ますます弁ずーー軍の出資とレオンの援助を受けたフレディは水を得た魚の如く、その勢いは止まるところを知らない。事業という才覚の渡世で、フレディのデューリオは、いつしか飛行船数隻を保有する伸び盛りの公社となって行った。


「デューリオ……かぁ」

 ジャックは、フレディのキニシス専売公社が物凄い勢いで爆発的に伸びていくのを横目に見ながら、一人、呟いた。

「やっぱりフレディは、天才だ」

 フレディの事業の才覚にジャックは、舌を巻くしかなかった。だが、さらに厄介なことにフレディはこれにとどまらなかった。あるときを境にフレディはデューリオを営利目的のカンパニーからゼノ文明全てを暴き、制圧を目的とする結社として機関化し始め、自ら傭兵を持つまで到るようになったのだ。

 まさにジャック&フレディを潰すための組織と言っていい。アスタを手元に置いているとは言え、圧倒的なパワーとなったデューリオを前にジャックは、受け身に回らざるを得なかった。

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