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デモンストレーション

 ゼノ文明ーー遥か古代に存在し現代を超越する英知を持つとされるその文明は、忽然と現れるやその全盛を極め、そしてあっと言う間に滅んで行った。その謎多き文明の末裔の皇女として産まれたアスタにとって、ゼノ文明は、亡き親の忘れ形見だ。

 かつてアスタの親は、言った。

 ーーここに一つの文明がある。英知の結晶だ。お前はその英知にアクセスする鍵だ。全部、お前の物にしていい。だから、例えそれが血塗られた結末になろうともその結末をお前は見届けるんだ。それがお前の宿命であり、役割だ。

 アスタの親は、一つの文明、一つの時代が終わるときに、その時代がどういう世界であったのか、どうして終わってしまったのかを大きな目で俯瞰しながら、この世を去った。

 正確に言えば、ベルナルドの手によって亡き者にされたのだ。アスタの運命は、言わば生まれながらにして宿命付けられていたと言っていい。

 そのアスタにベルナルドは、ある力の封印を解かせようとして、一度は阻まれた。その力とは、この世に圧倒的な破壊と死をもたらす恐怖の力である。

「あの力の封印を解くために必要なものがある」

 アスタは、フレディに言った。

「ゼノ文明が異世界に遺した有形無形のインフラにアクセスするためにある場所まで赴く飛行船を出して欲しい。そこで異世界への扉を開く」

「分かったよアスタ」

 フレディは、了解しつつも続けた。

「ただ閣下の命令で、アスタには、その力を試しにこの世界でデモンストレーションで示して欲しいんだ」

 アスタは、うなずいた。

「分かった」

 それを聞いたフレディは、ほっと一息ついた。

「でも、アスタがおいら達に従ってくれて、安心したよ」

 アスタは黙っている。フレディは、念を押すように言った。

「アスタ、分かってるだろうと思うけど……」

「大丈夫」

 言葉を遮るように肯定の意を示すアスタにフレディは、それ以上余計な事を言うのは野暮だと感じ黙った。


 フレディからの報告をレオンを通じて受けたベルナルドは、ニンマリと目を細めてほくそ笑んだ。

「ほう、姫様が納得したか」

 ゼノ文明が持つ恐怖の力、それを我が物に出来るならとベルナルドは、アスタが出した条件を飲んだ。

 レオンとしても、その恐怖の力というのがどの程度のものなのかは、気になるところではあった。

「お手並拝見と行こうか」

 レオンは、その実力を測るべく、アスタの言う通りの準備を整えた。


 やがて、作戦決行の日が来た。部屋へやって来たフレディをアスタはいつも通りの表情で出迎えた。

「アスタ」

 アスタは、黙ってうなずき先導するフレディの後について行った。やがて、軍の飛行船に乗り込んだアスタをベルナルドがニヤリと見た。

「しおらしくなったものだ」

 ベルナルドは、それは自らの脅しが効いたものと取った。


 飛行船は、アスタが指定した海域へと向かっている。他の軍の飛行船も並んで艦隊を組み万全の布陣だった。

 やがて、アスタの指定した海域へと飛行船が到着した。艦隊の皆の目が一斉にベルナルドの飛行船の甲板に集まった。アスタがコツコツと歩を刻んで颯爽と現れたのだ。

 ベルナルドとレオンの監視の下、アスタは、皆の注目を集めながら、飛行船の甲板の真ん中で立ち止まるや目の前の海域に向けてそっと手を差し伸ばした。

 しばしの静粛の後、変化がない事にベルナルドは、いきりたった。

「何も起こらないではないか!」

 そう罵った直後だった。突如、海面を閃光が走り轟音とともに、その海域一帯を覆い付くほどの巨大な灼熱の炎が立ち昇った。その炎の塊は全てをなぎ倒し、焼き尽くしながら瞬く間に放射状に広がって行き、やがて衝撃波となって艦隊を襲った。

 その想像を絶する破壊力を前に誰もが、言葉を失った。それはフレディも一緒である。

「これがゼノ文明の力……」

 そのゼノ文明の力を操るアスタにフレディは、底知れぬ恐怖を感じた。

「これ程の力を、巨大な火を……人類は扱いこなせるのだろうか」

 フレディがそう考え直さざるを得ないほどの衝撃だった。アスタが口を開いた。

「今のは、制限された条件下で力を示したに過ぎない。間もなくこの一帯にこの力に自由にアクセスするための異空間が出現する」

 それを聞いたレオンは、はっと我に帰りベルナルドに言った。

「閣下」

 ベルナルドは黙ったままうなずき艦隊にその異空間へ飛び込むよう指示した。

 やがて、アスタが言う通り、異空間への侵入路が空中に開き、艦隊はその宙の裂け目へと飛び込んでいった。

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