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芝居

「分かった。うちもお前に合わせてやるよ」

 イザベラは、目の前のジャックにうなずき、その目をじっと見据えながら念を押した。

「ジャック、いよいよやるんだね」

 ジャックは、決意に満ちた瞳で返した。

「えぇ、昔の友達に借りを返しに行きます」

「そうかい」

 イザベラは目を細めた。やがて、立ち去ろうとするジャックをイザベラは呼び止めた。

「ジャック」

 振り返るジャックにイザベラは、言った。

「うまくやんなよ」


 ジャックが生きているーーその事実をアレックスを通じて密かに知らせられたアスタは、両手を合わせ目に大粒の涙を浮かべた。

「それは、本当なの?!」

 なおも念を押す声に力が入るアスタをアレックスは、人差し指を立てながら言った。

「この事は、くれぐれも内密に」

 ーーよかった……

 あんな事になって以降、絶望の淵にあったアスタは、一途の光を見た思いだった。アスタは、溢れる思いを抑えながら聞いた。

「それで、私にどうしろと?」

 アレックスは、辺りを警戒しながらもアスタに言った。

「一芝居、打って頂けますか?」

「一芝居?」

 聞き返すアスタの耳許でアレックスは、囁きかけ、その内容は聞いたアスタはアレックスに黙ったままうなずいた。


 やがて、食事を引き下げていくアレックスと入れ替わりにフレディがアスタの部屋へやって来た。

「アスタ、もう意地張ってないでおいら達に従ってくれよ。そろそろアスタがうなずいてくれないとおいら、レオンさんに合わせる顔がないよ」

「分かった」

「アスタの気持ちも分かるけど……って、えぇ?!」

 あまりにも突拍子に肯定の意を示すアスタにフレディは、思わず聞き返した。

「今、アスタ。何て言った?」

「分かったって言ったの」

「そいじゃ……」

「あぁ、フレディ達に従う」

 それを聞いたフレディは、笑顔を弾けさせてアスタの手を取った。

「ありがとう、アスタ。アスタなら分かってくれると思ったよ」

 ゼノ文明を切り開く先頭に立つーーそう意気込むフレディは、大喜びだった。

「早速、レオンさんに知らせないと」

 フレディは、すぐさま飛び出るように部屋を出て行った。


「こんなにとんとん拍子にうまくいくとはな」

 ベルナルドは、キニシスを含むほぼ全ての異世界鉱石を手中に収め、全土から賊を排除した成功を誇った。

「聞けばアスタも軍に従うというではないか」

「はぁ……」

 レオンは、首を傾げた。

「どうしたレオン、何か不満か?」

「いえ」

 レオンにとっては意外だった。もう少し抵抗すると思っていただけに解せないものを感じていた。

「考えすぎだ。所詮、どいつもこいつも我々の敵ではなかったという事だ」

 ベルナルドは満足そうにうなずいた。

「それよりレオン」

 レオンに鋭い目を向けながらベルナルドが聞いた。

「あれはどうだ?」

 レオンは、背筋をのばし答えた。

「はい。計画通り。閣下のご命令があれば、すぐにでも出来ます」

「よし、進めろ。ワシも行く」

「直々に行かれるので?」

「そうだ」

 念を押すレオンにベルナルドは、ほくそ笑みながらうなずいた。


 やがて、レオンが部屋を出るとフレディが待っていた。レオンは、話のあらましをフレディに話し、それを聞いたフレディが口を挟んだ。

「レオンさん、計画は分かりますが、少々早過ぎやしませんか」

 だが、レオンは逆に目を光らせて言った。

「いや、願ってもない機会だ。計画を早めるぞ。それで例の鉱石の方はどうだ?」

「調べてますよ」

 フレディは、レオンに確信を持って言った。

「おいらの見る限り、明らかにあの遺跡があった異世界への扉を開く触媒になります。ゼノ文明が張り巡らせた膨大な遺跡インフラが使えれば、ね」

「つまり、あとはお姫様次第、という訳か」

 レオンは、うなずいた。

「いいだろう。お姫様にさらなるゼノ文明の扉を開かせるのだ」

 行けっと目で合図するレオンにフレディは、うなずき足早に去って行った。

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