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アレックス

 ーージャック、君は僕を、そして僕の故郷を売っただろう……

 そう罵ったフレディの言葉が何度も頭の中で蘇っては消え、微睡む意識の中をさまよい続けたジャックは、はたと目を覚ました。見慣れない天井が広がっていた。

「目が覚めたかい?」

 そこには、やさぐれた感じの成年男性がいた。

「あなたは?」

「俺かい?、そうだね。アレックスとでも名乗っておこうかな。ジャック君」

 意味深に微笑みかけるアレックスにジャックは、尋ねた。

「どうして僕の事を?」

「君はこちらの世界では、有名人だからね。それに君には、まだ死んでもらったら困るんだよ。君にはまだまだやってもらいたい事が山程ある」

 ジャックは、すぐに悟った。

「アレックスさん。あなたは、軍の方ですね」

 アレックスは、ふっと笑みを浮かべた。

「軍の中も色々あってね。何かと思惑が錯綜してるんだよ。俺達は、そう……レオンやベルナルドとは、一線を画したグループって所かな」

 アレックスの説明によるとジャックは、その後、河口付近で見つけられアレックス達に密かに運ばれて来たのだそうだった。ジャックは、アレックスに礼を言った。

「助けてくれてありがとうございます」

「いや、あの高さから飛び降りて助かったのなら礼は、神様に言ったほうがいいぜ」

 そう話すアレックスにジャックは、うなずいた。

 ーーそうか、僕は助かったのか……

 ふとジャックは、気になっていた事を尋ねた。

「それで、アスタは、どうなりましたか?」

「あぁ、お姫様は……連れて行かれたよ」

「アスタを助けないと」

 動こうとしたジャックは、腹部に激痛を覚え、再び横たわった。

「まだじっとしていた方がいいよ。傷口に触るからね。しばらくここでゆっくりしていったらいい」

 ジャックの脳裏にフレディに撃たれた時の記憶が蘇った。

 ーーフレディ……

 無口になるジャックにアレックスが察した様に言った。

「親友に撃たれたんだってね。心中察するよ」

 だが、とアレックスは続けた。

「彼は、もう以前の彼じゃない」

 ジャックは、おもむろにうなずいた。

「分かってます」

 そう答えつつ、瞳は虚ろだった。


 ノックと共に入って来たレオンをベルナルドは、ニヤリとした笑顔で出迎えた。

「閣下、お耳にも入ってると思いますが」

「あぁ、レオン、姫様を捕らえたそうだな」

 ベルナルドは、下品な笑顔のまま言った。

「なぜここへ連れて来ない?」

 レオンはそれには答えず、ベルナルドに言った。

「閣下、お姫様の扱いについては、私に任せて頂けませんか?」

 ベルナルドは、ジロっとレオンを見たが、やがて、ふんっと鼻息を鳴らしてうなずいた。

「まぁいいだろう。せいぜい調教する事だ」


 フレディは、アスタが監禁されている部屋へ食事を運びに入った。だが、肝心のアスタは、そっぽを向いて外を眺めている。

「アスタ、食べないと体を壊すぜ」

 溜まりかねた様に諭すフレディにアスタは、なおも無視を貫いた。そんなアスタにフレディは、溜息を漏らした。

「アスタ、もう意地張ってないでおいらに協力してくれ」

「出来ない」

「何でだい?」

「私が託したのはジャック&フレディに対してだ。今のフレディは、違う」

 そう話すアスタにフレディは、両手を広げて言った。

「違わないさ。おいらならゼノ文明を正しく導ける」

 それに、とフレディは続けた。

「もっと知りたいんだ。ゼノ文明の英知を、そして、この体に取り込みたい。そう考えるだけでゾクゾクする。夜も眠れないんだ。こんなのは……」

 そこまで言ってフレディは、口をつぐんだ。アスタがじっと見つめている。フレディは、首を振った。

「ジャックは、もういない。あいつはおいらとおいらの故郷を売ったんだ」

 正直、フレディはジャックを撃つつもりはなかった。だが、成り行きでああなってしまったのだ。口をつぐんだフレディにアスタは聞いた。

「フレディ、そんなにジャックの事が許せない?」

 フレディは、虚ろな瞳でこたえた。

「あぁ……許せない」

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