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廃屋

 軍の内通者であるブライアンからジャックの元に連絡が入った。アスタに直接接触したいと言う。

「アスタ」

「私は、別に構わないよ」

 アスタはうなずくもののジャックは、何やら違和感を感じた。いつもとブライアンからの報告の様式が違うのである。几帳面で判を押した様な性格のブライアンにとっては、異例の事と言ってもいい。

「ブライアンは、密かに何かを伝えようとしている」

 そう直感したジャックは、迷った。だが、フレディに繋がる情報が得られるかも知らないことを考え、悩んだ末に応じることにした。

 落ち合わせ場所は、廃墟となった工場跡である。ジャックとアスタは、密かにその場所へと向かった。

「アスタは、ここで待っていてくれ」

 ジャックは、アスタを外で待たせて朽ち果てた建屋の中に入り、目的の場所まで来た。見るとブライアンがベンチに腰掛けている。

「ブライアンさん?」

 問いかけるものの返事がない。妙に感じたジャックは、さらに近寄り息を飲んだ。

「死んでる……」

 と、周囲を包囲する軍の兵に気付いたジャックは、舌打ちした。

「しまった。やられた」

 そこへアスタの悲鳴が響き渡り、駆けつけるとアスタがレオンに捕らえられていた。

「アスタ!」

「ジャック、逃げて!」

 だがあっという間にジャックは、廃墟の端まで追い込まれてしまった。ピストルを片手にジリジリ後退りするジャックにレオンは、言った。

「ジャック君、君に会わせたい人がいるよ」

 何を言い出すのかと警戒するジャックは、レオンの後ろから現れた人影に目を見開いた。

「フレディ!」

「そう言う事なんだ。ジャック」

 事情を察したジャックは、叫んだ。

「フレディ、なぜなんだ?」

「それはこっちの台詞だよ」

 怒りの瞳で睨むフレディにジャックは、聞いた。

「どう言う事?。何を言ってるのフレディ」

「ジャック、君は僕を、そして僕の故郷を売っただろう」

 それを聞いたジャックは、はっと息を飲み、だが、必死に訴えた。

「フレディ、違うんだ。あれは……あれは仕方がなかったんだ」

「言い訳はいい」

 フレディの瞳は、怒りに満ちている。

「ジャック、決着を付けよう。勝負だ」

 フレディは、ピストルを構えた。

「フレディ、こんなのやめてよ!」

 叫ぶジャックにアスタがレオンの拘束を振り切り、フレディに飛びついた。

「ジャック、逃げて」

 その反動でフレディのピストルの手元が狂い、引き金が引かれ銃声が鳴った。

 ジャックは、目を見開いて自らの体を見た。鮮血が飛び散っている。

「フレディ……」

 ジャックは親友に撃たれた事のショックと激痛に耐えながら背後を振り返った。遥か下を用水路が流れている。

「一か八か……」

 ジャックは恐怖を振り払って、工場の廃屋から用水路へと飛び降りた。


「逃げたか……」

 レオンは、ジャックが飛び降りた用水路を確認した。

「だが、この高さだ。助かるまい」

 銃をしまい、フレディの肩をポンと叩いた。

「よくやったフレディ」

 足元では、アスタがショックで崩れ落ちている。

「ジャック……」

「さ、お姫様。行こうか」

 レオンは、呆然とするアスタを連れて、工場の廃屋を去っていった。

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