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戦い

 フレディが抜けた事を聞いたイザベラはラウリとクスティに言った。

「お前達、ジャックの元に行ってやりな」

 ラウリとクスティは、思わず顔を見合わせた。病原菌騒動で壊滅の危機にあるのは、イザベラの一団も同様だったからだ。

「いいから行きな!」

 イザベラにどやされるようにしてラウリとクスティは、ジャックの元に駆けつけた。

 必要なものがあったら遠慮無く言えーーイザベラからの言付けを受けたジャックは、その熱い思いに胸が溢れた。


「カーティス、少しは休め」

 持ち込まれた鉱石から不眠不休で抗体を作っているカーティスをカルロは気遣った。

「カルロ、私の性格は知っているだろう」

 気難しいカーティスは、こういう非常時にあって、その中に全身全霊を投入することに何よりも生き甲斐を感じるタイプだ。当然、カルロの言うことなど耳にも貸さない。扱いづらいこの友人をカルロは、頼もしくも感じていたとき、上層部から呼び出しが掛かった。

「うちの研究所を閉鎖?」

 想像もしていなかった内容にカルロは、声を失った。

「どう言う事です?」

 カルロは顔色を変えて聞いた。それによるとこの病原菌騒動がラトニア商会の陰謀で行われているというのだ。

「冗談じゃない。うちにやましいことはない」

 さらにカルロが問い詰めるとどうやら上層部に軍の圧力がかかっている様だった。

「そんなもの、蹴って下さい」

 声を張り上げてカルロは、会議を一人で押し切った。

 その日以降、カルロに対する陰湿な嫌がらせが急増した。社内では、陰口を叩かれ、家に帰ると扉には、誰が書いたのか数々の罵詈雑言が書き連ねられていた。

 キニシスでの成功を一手に収めてきたことへの嫉妬を買っていた事がここで一気に表面化したのだ。

『もうお前には、同じ失敗をして欲しくない。これは友人としての忠告だ』

 そう告げたカーティスの言葉がカルロの身に染みた。

 ある日、カルロはいつもの調子で会社に向かっていたとき、その通勤路でカルロは、突如、前から来る男にドンっとぶつかられた。

 言いようのない激痛に襲われたカルロが胸元を見ると、何かが刺さっている。途端に目の前が真っ暗になり、強烈な苦しみの中でカルロはその場に崩れ落ちた。


「カルロさんが刺されたっ!?」

 その知らせを聞いたジャックは、取るものも取らずにラトニア商会に駆け付けた。病院に運ばれたと聞き、慌ててアスタとともに向かうと病床は空だった。

「カルロさん?」

 二人は、辺りを見渡し、周りの者に聞いて回った。

「あの、今日ここに運ばれた男の人を知りませんか?」

 そのうち一人がジャックとアスタに答えた。

「あぁ、そう言えば、さっきまでいたけどねぇ」

 そこで口を濁し、二人が要領を得ないでいると、後ろから聞き覚えのある声がした。

「やぁ。ジャック、アスタ」

 振り返ると退院手続きを終えたカルロが立っていた。

「カルロさん、大丈夫なんですか!?。刺されたって知らせを聞いて」

「あぁ、どうって事ない」

 そう笑うカルロの後ろから医者が罵った。

「どうって事ないことあるか!。安静してろというのに聞く耳を持たんでこの男は」

 それを聞いて苦笑するカルロをジャックは、心配げな顔で見上げた。

「ジャック、そんな顔するな。このくらい本当に大丈夫なんだ」

 それに、とカルロは真剣な顔で付け加えた。

「今、俺が抜ける訳には行かないんだ」

「で、でもカルロさん……」

「ジャック」

 カルロは、自らに言い聞かせるように言った。

「これは、俺達の戦いなんだ」

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