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鉱石

「噂は聞いているよ。面白いことをやっているらしいじゃないか」

 イザベラは、取引にやって来たジャックとフレディに目を細めた。二人がキニシスで成功をおさめ、さらに何やら色合いの濃い結社になろうとしていることを耳にしているのだ。

「それで用向きっていうのは、何だい?」

 尋ねるイザベラにフレディが言った。

「実は軍に新たに内通者を持ったんだ。それによると今、鉱石研究局は最近、ある異世界鉱石を研究しているらしい。ベルナルドの側近のレオンって奴の指示らしいんだけど」

「お前達が扱ってるキニシスとは、違うのかい?」

「うん」

 ジャックとフレディは、その特徴を説明し、それを聞いたイザベラは眉を潜めた。すぐさま古文書を取り出し、調べ始めある一節で手を止めた。

「まさかこれを発掘する気じゃないだろうね」

 イザベラは、二人を見た。

「以前、ベルナルドはアスタに何をさせようとしていたか分かるかい?」

 二人の脳裏にあの異世界の中にあった遺跡でアスタが暴走した出来事が蘇った。イザベラは、言った。

「超古代文明が発掘されて以降、世の中は変わったけどね。ゼノ文明はまだその全容を現した訳じゃないんだよ。今表に出ている技術はほんの一部に過ぎない。その中には、発掘させていいものといけないものがある。その鍵を握っているのが、あのアスタだ。ベルナルド達はどうやらゼノ文明の禁忌に触れようとしているようだね」

 イザベラは、しばし考えた後、聞いた。

「それでアスタは、何て言ってる?」

 二人は顔を見合わせ、やがて、言った。

「世界が滅ぶって」

「世界が滅ぶ……か」

 イザベラは腕を組んでいる。やがて、イザベラは荷を運んでいる双子のラウリとクスティに言った。

「お前達、あれを持って来な」

 それは、一冊の古文書だった。

「そこにこれからの道標となる知識がある。貸してやるよ」

 さっそくイザベラの元を去ったジャックとフレディは、その古文書を開いた。荒廃した文明の知能を一つ一つ読み進めていくうちに世界がある期限に向かって刻々と準備を進めていることが分かった。

 ーー時間があまり残されていない……

 そう語るアスタの気持ちが分かるような気がした。


 軍の鉱石研究局のブライアンは、ベルナルドとレオンが密かに進めている計画を知ったとき我が耳を疑った。

 ーーこのままでは、大惨事になる。

「なんとかしなくては……」

 気がついたときには、資料を鞄に入れ研究室を立っていた。だが、運悪く廊下でベルナルドに出会ってしまった。

「おい、お前。どこへ行く?」

 ベルナルドは、ぎょろっとした目でブライアンを睨んだ。

「別になんでもありません」

「怪しいな。その鞄を見せろ」

 ベルナルドはブライアンから鞄を取り上げた。万事休すとなったブライアンは冷や汗が出る思いで自身の鞄を漁るベルナルドを見つめた。ベルナルドは、盛んに鞄の中を探ったが、大したものは出てこない。やがて、諦めたようにベルナルドはブライアンに鞄を返した。

「ふん、まぁいいだろう」

 そして、偉そうにふんぞり返って去って行った。

 ーー鞄を二重底にしておいて助かった……

 ブライアンは、ほっと溜息をつき、今だに高鳴る心臓を抑えきれず、震える思いで極秘資料の入った鞄を持って、外に出た。

 やがて、いつもの公園に来たブライアンは、ベンチに腰掛けるや資料を入れた包みをベンチの裏に仕込み印をつけるや席を立った。


 軍が病原菌をばら撒くーーブライアンの情報にジャックとフレディは言葉を失った。アスタが言った。

「正体不明の病気が国中に大流行する。ベルナルド達は、戦争で制圧が今だにままならない地域を大瀬の人間を巻き添えにして、病気を装ってこの病原菌で一気に始末する気だ」

 二人は今だに言うセリフが見当たらない。そこまでやるか、というのが率直な感想だった。

 フレディが立ち上がった。

「アスタ、おいら達はどうしたらいい?」

「抗体を見つける必要がある」

「その抗体はどこにあるの?」

 尋ねるジャックにアスタは、しばし考え答えた。

「ベルナルド達がばら撒こうとしている病原菌は、明かにゼノ文明のものだ。抗体もそこから見つける必要がある」

 既に作戦に向け、軍の飛行船艦隊が飛行体制を終えているという。ジャックとフレディは急いでカルロと会った。

「もしそれが事実なら」

 カルロは、怒りに満ちた顔で言った。

「うちは全力でそれを阻止する」

「カルロさん、俺達はこれから異世界へ抗体を取りに行く。その後は頼む」

「分かった。任せろ」

 そこで示し合わせた後、二人はカルロの元を去った。

「抗体を求めて異世界へ」

 ジャックとフレディは、アスタを乗せ、飛行船で商都レントセアを飛び立って行った。

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