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計画

「それで、あのお姫様の居場所は突き止めたのか?」

 以前、アスタを捉えたものの異空間の遺跡において取り逃がしたベルナルドは、レオンに尋ねた。

「えぇ、どうやら商都レントセアにいるようです」

「ならなぜ捕らえに行かない?」

 苦虫を噛み殺したような顔で尋ねるベルナルドをレオンは冷笑した。

「今は泳がせておけばいい。どう足掻いても、もう未来は決まっているのですから。それより賊の制圧が先でしょう。閣下は軍を握られている。さっさと討伐し、すべてを軍の下に制圧すべきです」

「分かっておる」

 ベルナルドは、不機嫌そうに窓の外を見た。あのときイザベラをその一味ごと取り逃がしてしまって以降、彼らは巧みに軍の網を逃れ機を見ては、軍の兵站を脅かし続けなかなか制圧出来ずにいたのだ。

「レオン、あの計画だが」

 窓の外を眺めながら、ベルナルドは続けた。

「進めてくれ。以上だ。下がれ」

 そう手で払う仕草をするベルナルドをレオンは、軽蔑の眼差しで眺め、部屋を去って行った。その足でレオンは軍の鉱石研究局へ向かった。

「どうだ?」

 部屋に入るなり、尋ねるレオンに研究員は、あの遺跡の中でアスタが暴走した際に反応が宿った鉱石を取り出して見せた。レオンは、その怪しい光を帯びる鉱石を眺めながら密かにほくそ笑んだ。


 その軍の鉱石研究局にあってレオンを心良く思わない男がいる。名をブライアンといい、レオンに命じられ超古代文明の研究をする中で、軍が支配するこの世界の体制に疑問を持つようになっていた。

 あるときブライアンは、ある噂を耳にする。それは軍の一部の人間が意図的に戦争を引き起こし、世界を意のままに操ろうとしているというものだった。

 ブライアンは様々なルートを通じ、あの戦争について調べるようになり、その中である名前を頻繁に聞くようになった。

「ジャック&フレディ?」

「あぁ、鉱石の会社だ。今、鉱石産業を一変させているキニシスを扱っているらしい」

「あぁ、キニシスの」

 ブライアンは、同僚にうなずき、それが二人の子供によって運営されていると知って驚き、密かに興味を持った。そして、調べるうちにジャック&フレディの持つもう一つの裏の顔を知るようになる。

 超古代文明の知能に繋がる裏の人脈をもち、そのキニシスで得た財を投入し真実を追求する機関になっているというのだ。民間においてはラトニア商会、野にあったは一部の賊とも繋がり、さらにはこの軍にすら内通者を得ているという。

 そこに自身と共通する思いを見たブライアンは、考えた。

 ーー接触を試みてみようか

 始めは胡散臭さを感じていたが、事あるごとにその名前を聞くにあたり、次第に決心が固まっていった。


 ジャックとフレディは、ラトニア商会のカルロを通じてこの新たな協力者の事を知った。

「鉱石研究局といえば、軍のエリート部署だ。もし味方に引き入れれば、強力な情報源になる」

 カルロは、そう言いつつ声を潜めた。

「ジャック、フレディ。俺も超古代文明絡みの鉱石を扱う以上、きな臭い世界を渡り歩く事には、慣れている。何なら俺が接触を持ってもいい」

 ジャックとフレディは、うなずいた。

「頼むよカルロさん」

 礼を言う二人にカルロは言った。

「お互い様だ。あまり深入りは出来ないけどな」

 この頃になるとジャックとフレディは、カルロとあうんの呼吸で意思疎通を図れるようになっていた。

 やがて二人が去った後、カルロの元にカーティスがやって来た。

「どうした?カーティス。何か問題か?」

「さっき聞いた話だがな。軍がキニシスに触手を動かして来ている」

「あぁ、知っている。大丈夫だ。提督、将軍、あらゆるお偉いさんにはしっかり手を打っている」

 事実、あらゆるルートを通じて付け届けを抜かりなくしている。いわば軍を賄賂漬けにしている訳だが、それがカーティスには心配らしい。

「連中はいつ裏切るか分からんからな」

「それだけは同意だ」

 にっこり笑うカルロにカーティスは、声を潜めて言った。

「それとカルロ、あの子供達だがな。お前はどうするつもりなんだ」

「どうするって?」

「カルロ、俺の目にはごまかせん。なにやらきな臭いことを一緒にやってるらしいじゃないか。それだけじゃない。お前は自らのグループを率い諜報機関なみの活動をしていると聞くぞ」

 そう詰め寄るカーティスにカルロは、手を広げて笑って見せた。

「気のせいだよ」

「なんでもいいがな、程々にしておけよ」

「分かってるよ。ありがとうカーティス」

 カルロは、このお節介な友に礼を言い、立ち去らせた。一人になった部屋でカルロは、溜息をついた。

 ここのところ、ジャック&フレディは、あきらかに性質が変わった事をカルロは肌で感じ、知っている。

 超古代文明に関わる全てにコネクションを保とうとしているのだ。特に雑談の中で盛んに探りを入れて来るフレディにカルロは、その意を察し、ラトニア商会の力を背景にして、有形無形のあらゆる援助で応えた。

 まるで秘密結社を作り上げるが如くあるジャックとフレディの活動にカルロは、社の部署を私物化し、その活動の支援団体にすらなっていた。そこまでカルロがするのには、二人の活動をかつての若かった頃の自分と重ねていた。

「確かに以前は失敗し、社内の派閥に締め出され閑職に追いやられた」

 それは、忘れ難い記憶となって今も残り続けている。

「だが……」

 カルロは覚悟を宿した目で呟いた。

「今度は失敗しない」

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