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カーティス

 その後、ジャックとフレディは工夫と改良を重ね、キニシスの異世界鉱区を探す手腕がめっきり上達した。

 キニシス採掘の実質的な専門家といっていい。そのおかげで貴重過ぎて経済価値に繋がらないと言われたこの異世界鉱石の安定供給にもようやくめどが着き始めた。

 次は、販路である。そこは、ラトニア商会のカルロの出番だった。

「カルロの奴、最近どうしたのだ」

 周りの者は、そのあまりの変わり様に不気味がった。かつては閑職で窓際に甘んじ、暇を弄んでいたはずが、今や連日得体の知れない二人の子供と正体不明の鉱石を相手に毎晩遅くまで残業の日々を続けているのである。

 変われば変わるものだーーそう人はカルロを見た。

 だがカルロは本気だった。カルロは、このキニシスが持つ潜在的な華やかさに気付いていた。この鉱石によって自分の運命が一変することも知っていた。

 言わば、ジャックとフレディの胸に秘める熱い思いと同じものが、そのままカルロの胸に宿り、心に興奮の火を灯し続けたのだ。

 カルロは、そんな今の状況をかつて、出世街道をひたすら歩み、社内では肩で風を切っていた頃と無意識に比較しかぶりを振った。

 ーーこのキニシスで全てを見返すのだ……

 密かに秘めた野心を燃え上がらせていた。

「どうだ、カーティス?」

 カルロは、目の前にいる社内の変わり者、鉱石開発部のカーティスを見た。ジャックとフレディの二人が運び込んだキニシスについて、カルロは、盛んにカーティスと話し合っていた。

「革命は、起こせそうか?」

 そう唆すカルロにカーティスは、ほくそ笑んだ。

 このカーティスという男をカルロは、誰よりも理解している。出世欲が乏しい反面、己の才覚を芸術として表現することになによりも心を砕くのだ。

 同僚の誰もが報酬で職に就いている中で、カーティスにはそういった概念がまるでなく、仕事に対する思想がまるで違う。

 カーティスにすれば、自身の器量を鉱石業界の革命という中で使える事になによりも心を動かされていた。

 表現欲の強さゆえ、革命という大きな舞台をより魅力的に受け止めていたとも言える。

「こんなに興奮するのは、久しぶりだな」

 カーティスは、カルロに目を輝かせて言った。

 その後、キニシスの用途を開発中の幾つかの試作品を見せ、その可能性について話し、それを聞いたカルロは居てもたっても居られなくなった様に興奮してその話を聞き入った。

「早速、ここの試作品を業者に持ち込んでみるよ」

「あぁ、そうしてくれ」

「面白くなってきた」

 カーティスは、そう話し席を立とうとするカルロにうなずきつつ、だが、そのカルロの背中に意外な言葉を投げかけた。

「だがな、懸念材料が一つある」

 思わずカルロは、カーティスに振り返った。

「懸念材料?」

 カーティスは、うなずきカルロをしみじみと眺めている。

「何だ?」

 尋ねるカルロにカーティスは言った。

「お前だ」

「俺?」

 カルロは、そう聞き返しながらもカーティスが何を言わんとしているのか察した。

「カルロ、お前は以前、社内切ってのエリートだった。実に鼻持ちならないな。そのお前が今の閑職に甘んじている理由は、分かるな」

 そう詰め寄るカーティスにカルロは、うなずいた。

「あぁ」

 そして、考えた。

「あのときは……」

 そう、若かったのだ、そう思うほか無かった。全てが手に入った様に錯覚し、自身の才覚に溺れていた。

 カーティスは、続けた。

「カルロ、昔はお前の事が好かんかったが、今は違う。もうお前には、同じ失敗をして欲しくない。これは友人としての忠告だ」

 カルロは、カーティスをまじまじと眺め、やがて、にっこり笑って言った。

「分かってるよ。ありがとうカーティス」

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