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トライアンドエラー

 二人は、これまでのトライアンドエラーを書き写したノートの記録を眺めながら、次第にその傾向を掴み始めていた。

 二人の中で独自の異世界理論が構築されて行き、知識と技能を限りなく深めて行った。

「要は確率だ」

 ペンをくるくる回しながらフレディが言い切った。

「異世界空間の存在確立を高めることを突き詰めていけば、いずれ当たりが来る」

 それを聞いたジャックもうなずいた。

「あと問題は……」

 ジャックは、会社の帳簿を開き溜息をついた。

「うちは、あとどのくらい持つ?」

 尋ねるフレディにジャックは、答えた。

「一週間」

 それを聞いたフレディがおうむ返しに言った。

「一週間、かぁ……」

 それまで決着を付けねばならない。キニシスの異世界鉱脈を掘り当て、ラトニア商会の販路に乗せ、社運を切り開かねばならないのである。

「出来るだろうか」

 ジャックが弱気に声を上げた。

「あぁ、やろう」

 フレディは、悲壮な決意でうなずくしかなかった。


 運命の一週間が始まった。二人はアスタを連れ、飛行船で異世界鉱区の探索へと出向いた。軍を欺くべく、本来のルートとは逆の路を歩みつつ、探索網を張って異世界の扉が開くのを根気よく待ち続けている。

 ジャックが地図の上にペンを走らせながら、データを取り続ける中、アスタは覚悟を決めて探索を続ける二人を眺めた。会社がもう限界に来ていることをアスタは、知っている。だが、二人はアスタの前ではそれをおくびにも出さない。

 深刻なところまで来つつも、常に自然体でいるようだった。

 ーーそれが二人の流儀なのだろう。

 アスタは、そう思い、二人のために祈った。


 変化が起きたのは、週の後半だった。微かではあるが、二人の測定器の針が触れ出したのだ。

「来たな」

 フレディがはやる気持ちを必死に抑えた。

「さらに遭遇確立を高めるには……」

 ジャックがノートを取り出し、必死に独自の理論で異世界空間への方法を算出していき、フレディがそれに幾つか書き加え、微妙な修正を加えながら、探索網を縮めて行った。

「焦るなよ。少しずつ、じわじわだ」

 フレディが舵を握りながら言い、ジャックがうなずき監視を強めた。

 そして、最後の一日が来た。その日は天候が優れなかったが二人は押し切った。

「ここまで来たら、やれるだけやろう」

 既に二人が目をつけた異世界鉱区は、縮めて行った探索網の中に入っている。だが問題が起きた。

 ジャックの算式によると、キニシスの鉱区は、軍の制空権下にある空域に存在確立を示し始めたのだ。

「どうするフレディ」

 頭を抱えるジャックにフレディは、ジャックの記したノートを見ながらうなずいた。

「ジャック、勝負だ」

 フレディは、大胆な行動に出た。軍の航路を横切るルートを選んだのだ。これまでの調べで軍の傾向は、把握している。

 今日は来ないーーそう読んだフレディは、賭けに出た。

「軍が来ていたらそのときは終わりだ」

 二人は、祈るような気持ちで探索へと赴いた。


 その不退転の様子をアスタも見ている。

 ーー二人に運があるなら、大事をなせるはずだ。

 アスタは、ハラハラする一方で冷め切った目で先を見据えている。

 ーーもしここを乗り切れなかったら何をしてもいずれ崩れる。しぶとく生き残った人間だけが、これから先、ゼノ文明を託す間違いない相手になる。

 時間だけが刻々と過ぎて行った。幸い軍は来ていなかった。フレディは賭けに勝ったと言える。

「あとは……」

 ジャックは、測定器の針を凝視し続けた。

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