オクトル
フレディの話によると遺跡への無断発掘を咎められ、飛行船を持っていかれたというのだ。
「そんな……」
ジャックは目の前が真っ暗になる思いだった。
「一体、どうすれば」
ぐったり肩を落とすジャックにフレディは言った。
「ジャック、こうなったら道は一つだ」
夜、こっそりと軍の砦に忍び込んだフレディは、ジャックに合図した。
「行こうぜ」
どんどん進むフレディにジャックが不安げに聞いた。
「ね、ねぇフレディ。本当に大丈夫なの?。接収された飛行船を盗み出すなんて」
「何言ってるんだジャック。あれはもともとおいら達のものだろう。横取りされてたまるか」
「それはそうだけど」
二人は、皆が寝静まった兵舎を抜け、倉庫へと足を進めた。
「あった、アレだ」
フレディは、目敏く飛行船を見つけた。
「ジャック、動かせるか?」
「やってみる」
二人は早速、手分けして飛行船の中をいじり始めた。
「おいジャック、こっそりやれよ」
「うん、やっぱり動力系がおかしかったんだ」
フレディにうなずき、ジャックは息を殺しながら作業を続けていたときだった。
不意に兵舎から声が響き、二人はギクリと息を飲んだ。
「やばい、ジャック。見つかった」
「ど、どうするのフレディ」
フレディは、意を決した様に言った。
「ここからこの飛行船を飛ばそう」
「そんな、だって前は動かなかったじゃないか」
「やるしかないんだジャック、急げ」
辺りが投光器で照らされ出す中、二人は額に汗を浮かべて、震える手で作業に没頭した。
「よし……フレディ、これで多分、いけるはずだ」
「分かった。やるぞジャック」
二人は操舵室に向かうとともにレバーを取り合った。
「行くよフレディ」
「あぁジャック。勝負だ」
二人は、祈る様な気持ちでレバーを引いた。その直後、機関が唸り声を上げて動き出し、フワッとした感覚とともに飛行船が宙に浮かび上がった。
「よし、行けぇっ!」
食い入る様に計器類を見つめる二人を乗せ、飛行船はぐんぐん上昇して行き、慌てて飛び出して来る軍の兵士達を置き去りにして空高く舞い上がって行った。
ぐんぐん上昇していく飛行船から見下ろす砦が小さくなっていく。
「やった。脱出成功だ!」
二人は、思わず手を取り合った。
「ジャック、このまま一気にこの街を去ろう」
「うん、そうしよう」
二人は目を輝かせて今まで出たことのなかった街を出て行った。
その後、二人は商業都市ゼーレまでやって来た。飛行船を停泊させ、すぐさま街へと向かった。情報を仕入れるためだ。
物の値段を記した手帳を懐に市場に入った二人は、そこで近辺の街との差額が激しいものを調べ、店主に聞き込みを開始した。
そこで二人は、ある鉱物資源に目をつけた。
「オクトル?」
尋ねるジャックに店主は笑って答えた。
「あぁ、ここから西へ50キルほど行った街で高値で取引されてる」
その価格差を聞いた途端、フレディが目を輝かせて聞いた。
「そのオクトルって奴は、どこで買える?」
「商家街なら売ってるが、多分、あんたらには……」
店主の言葉も途中にフレディが言った。
「おいジャック、行こう」
たちまち二人は商家街へと走り出した。
「だから売ってくれって言ってるだろう」
商家街に来たところでフレディが盛んに頼み込むものの誰も相手にしなかった。
お前達みたいな子供じゃ無理だ、というのだ。
「西へは賊が蔓延ってる。安全に運べる保証がない。大体、お前達には金がないだろう」
「金はこれから作る。担保は飛行船だ」
盛んに訴えるジャックとフレディの熱意も虚しく、オクトルを取り扱わせてくれる店は遂に現れなかった。




