火傷
※誤字、脱字多かったらすみません。
体が酷く重くて、もう既に自分では起き上がれない。
食事を止められ、部屋に閉じ込められてどのくらいだろう。
二週間は過ぎただろうか。
ベッドからぼんやりと窓の外を見ていると、フローディアが寝室に入って来た。
フローディアは椅子をベッドの横に置き、楽しそうにクスクス笑いながら座る。
「お姉様、お父様に捨てられた気分はどうですか?」
その通りだったらどんなに良かったことか。私が逃げないように、外には常に監視をしている人達がいる。今は席を外しているが、ジェシカも父に言われ毎日私と一緒にいるのだ。もし、私が逃げたらジェシカはどうなるのか容易に想像できる。それは避けなければ。
「哀れですね。本で見た気がするのですが、何と言いましたか……ああ、ざまぁみろですね」
随分と上機嫌だ。
「お父様に捨てられ、部屋に閉じこもって食事もとらないなんて、また悲劇のヒロインですか?」
閉じこもっているのではなく、閉じ込められているのだが。
「お姉様も、お姉様のお母様の様に死んでしまえばいいのに」
そう言ったフローディアの右手には、私の煙草が握られていた。煙草に辿々しく火を付け、私の左の手の甲に煙草を押し付けた。
「ーーーーーっ!!」
「お姉様の大好きな煙草ですよ?嬉しいでしょう?」
「フローディアお嬢様!!何をしているんですか!!」
戻ってきたジェシカが怒鳴り声をあげて私達に駆け寄り、フローディアから煙草を取り上げ、頬を思い切り叩いた。
「っ貴女!!侍女のくせに何のつもり!!」
「人として、やっていい事と駄目な事も分からないのですか!!ナディアお嬢様!!大丈夫ですか!?」
ジェシカは水差しに入っている水を急いで左手にかける。
……私はジェシカのこういうところが気に入っている。
「お姉様が煙草が吸いたいって言ったから……そうよ!!わざとじゃないわ、手が滑っただけなの!!お姉様が全部悪いの!!」
「どうでもいいです!!今すぐこの部屋から出て行ってください!!」
「酷いっ!!皆んなそうやってお姉様ばかり心配して!!」
ジェシカに怒鳴られたフローディアは泣きながら部屋から出て行った。まさに嵐の様な出来事だ。
「申し訳ありません、お嬢様……私が離れたばっかりに……」
「だい……じょう、ぶ」
「……お嬢様……旦那様の言い付けで、お医者様を呼べないのです……申し訳ありません……」
「それ、でいい……」
出来るだけいつもの様に笑う。私より、ジェシカの方が怪我をした様な顔をしている。ジェシカはずっと謝りながら私の手当てをしてくれた。謝る必要なんてないのに。
ジェシカの手当てが終わると、今度は父が部屋に入ってきた。何故、こんなにも騒がしいのだろう。
「ジェシカといったか。ナディアと少し話があるから、部屋から出てもらいたい」
「……かしこまりました」
ジェシカはお辞儀をして部屋から出て行くと、父はフローディアが座っていた椅子に座る。父は私の左手を持ち上げながら喋り始めた。
「ああ……跡が残らなければいいのだが……綺麗な手が勿体ない」
気持ち悪い。触らないでほしい。構わないでほしい。
これ以上私を巻き込むのはやめてほしい。……面倒だ。
「ナディア、ちゃんと反省したか?公爵に取り入って逃げようなんて愚かな真似をするからこうなるんだ」
父は微笑んではいるが、仄暗い目をしている。
「お前は私のせいで母親に死なれ、私を憎む哀れで美しい娘として生きねばならないのに。何故憎まない?あんなにも母親に懐いていたのに。それとも、お前にとっては母親ですらどうでもいい存在だったのか?」
私はぼんやりと天井を見つめ、父の話を聞き流す。
「お前はずっとここに居ればいい。私の家族なのだから」
まるで呪いのような言葉を言われた気がした。
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