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※誤字脱字が多かったらすみません!



「ナディアちゃん、無事で良かった!!」


ファミア様が強く抱きしめてくる。妙齢の女性に抱きしめられるのは初めてだ。母が生きていればこんな感じだったろうか。そう考えても仕方がないが。


「ファミア様も無事で良かったです」


「もう、お母さんって呼んで?」


「私の母は十年前に首を吊り死にました。私の中での母親は、ただ一人なのです」


「ナディアちゃん……」


悲しみの色を宿した瞳で私を見るファミア様。何故か苛々してしまう。私はこんなにも気が短かったか?違う、、、ファミア様をお母さんと呼んでしまったら私の中の母が消えてしまいそうで怖いのだ。愛に狂い死んでいった哀れな母。人間は私が思うに忘れ去られた時に本当の死を迎えるのだと。だから私は、私の母は一人でいい。忘れぬ様、消えてしまわぬ様。


「ファミア様、お許しください。私は私の母を消したくは無いのです」


「私も無理強いしてごめんなさいね……」


ファミア様の綺麗な瞳が伏せられる。私はお辞儀をして、自室へ向かう。騒ぎを聞きつけてやってきたジェシカは空気を読み、何も言わず後ろをついてくる。


自室に入り煙草を口に咥え、火をつける。そのままソファに沈み込み足を組み、天井をぼんやりと見つめ肺に煙を入れては出しを繰り返す。


「ジェシカ、お酒持ってきて。夕食は要らない」


「分かりました。……ナディア様、無事で良かったです」


煙草を吸い終わり灰皿に押し付ける。メイド服から黒いドレスに着替えソファに横になる。こうしていると伯爵家にいた頃を思い出してしまうというのに。しばらくそうしていると、ジェシカがワインを持って来た。度数は少し強めで丁度良い。


ワインの味を味わう事もなく私は次々とグラスにワインを注ぎ飲む。


「ジェシカ、独りにして」


「分かりました……」


私はワインと一緒に感情を飲み込む。私の言葉を理解して欲しい訳じゃない。そんな都合の良すぎる事は言わない。だが、私がこうやって立って、歩き続けられるのはルゥがいるから。 


ソファに持たれながらワインを飲み干すと、伯爵家の部屋にいる様な感覚に陥る。酔いが回ったのだろう。


『ナディア……愛しいナディア。だから言っただろう。あの陛下からお前を守っていたのも、愛しているのも私だけだ』


「死人に口無し。私の中からさっさと消えて?」


『ナディア、お前が周りを狂わせる。おかしくなっていくんだ。私がお前に求めるのは、私だけを愛することだけ。私はお前を愛している』


(……愛していました、セルジュ様)


私の中の母の言葉が浮かび上がる。こんな男の何処が良かったのだろう。


飲み干し終わったワインの瓶を父の幻影に投げつけるが、すり抜けて瓶が割れる。そんな父は私を見て嗤う。


『私はお前の中で生き続ける……そう、永遠に』


「……失せろ」


ドアがノックされジェシカが入ってきた。散らばるワインの破片を見て踏まない様に近づいてくる。私はそれを無視し、煙草の煙を燻らせ、父の幻覚を無機質に眺める。


「ナディア様………まるで伯爵家にいた頃の様な目をしてます」  


「少し飲みすぎたみたい。もう寝るから」


消えない父の幻影を通り抜け寝室へと入り、ネグリジェへ着替え胎児のようにベッドに包まる。今日は本当に厄日だった。王太子がいなかったら今頃どうなってた事やら。ルゥとルイーズ様は無事だろうか。

 

それから一週間、ルゥとルイーズ様は王宮から帰って来なかった。噂話とは恐ろしいものだ。陛下が不治の病に罹り、ルイーズ様が代行を務めていると瞬く間に貴族の中で広まった。


あの二人はこの短期間でどうやってあの陛下を不治の病に仕立て上げたのだろう。私はそちらの方が気になった。陛下の行末など、はっきり言ってどうでもいい。


ファミア様と共に王宮へ上がる。応接室でルゥとルイーズ様を待っていると、王太子殿下とルゥ、ルイーズ様の三人が入ってきた。立ち上がりカーテシーをとる。


「楽にしてくれ。説明に時間がかかる」


ルイーズ様に言われソファに座る。元々陛下は家臣からもその異常性を危惧されており、王太子殿下が成人するまでルイーズ様を代行にする動きが前々からあったようだ。今回の出来事で今まで断っていたルイーズ様が腹を括り、王の代行を務める事になったそうだ。陛下は王宮にある、王族を閉じ込める塔に隔離されているらしい。


だから警告したというのに。『善も悪もいつか報いを受ける』と。父や継母がそうだったように。


「王太子殿下、その節は有難う御座いました。無事公爵家にも帰ることができました」


「いえ……あれは全て父上が悪いのです。ナディア嬢が謝る必要はありません……寧ろどう償えばとばかり考えてしまいます」


悲しげな顔で下を俯く王太子殿下は陛下の子供とは思えないほど常識をもっていた。このまま歪まずに育ってもらいたいものだ。




読んで頂き有難うございます!

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