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※誤字脱字多かったらすみません!
ファミア様と朝食を一緒に取り、私は少し気分が悪くなって、ファミア様に謝罪をして部屋で休ませてもらう事になった。
ベッドに倒れ込む様に横になる。朝からしていた頭痛がより酷くなり吐き気をもようす。目を瞑り痛みが過ぎ去るのを待つ間に、私は眠りの中へ誘われていった。
私は伯爵家の自室に座っている。体はぴくりとも動かない。すると目の前には死んだ父が嗤って立っている。ゆっくりと私に近づきながら語りかけてくる。
『ナディア、私のナディア』
『お前の家族は私だけだよ』
『惑わされてはいけない、アレは違う家族だ』
『お前の家族ではないよ』
『あの家族を欲しがってはいけないよ』
『ナディア、、、お前の家族は永遠に私だけだ』
煩い、煩い、煩い、煩い、黙れ。
夢だと分かっているのに父の言葉が頭に木霊する。父が背後から私を抱きしめて嗤う。
『ナディア、お前を本当に愛してあげられるのは私だけだよ』
ゾクリと鳥肌が立ち吐き気がする。
『お前の母親も、もう死んだんだ。あの女は母親じゃない。血の繋がらない他人だ』
私は深呼吸をしてゆっくりと言葉を放つ。
「貴方は血の繋がった他人でした」
ピシリと私を抱きしめる手がヒビ割れ、崩れてゆく。
『ナディア、いつか分かる時が来るよ。何故ならお前は私の愛しい娘なのだから』
そう言葉を遺して父の姿をしたモノは崩れ去った。まるで呪いの言葉ではないか。力が入っていた体から力が抜ける。私はまだ囚われているのかと自傷気味に嗤う。死んでもなお私に付き纏う影。私の恐れの象徴。
ルゥの全てが私の物になれば、この胸の穴は埋まるだろうか。でも足りない、まだ足りない。知りたい、もっとルゥを知りたい。私の心を満たすくらい歪んでいて美しいものが見たい。
でも、何かが足りない。ならばいっその事全部壊そうか。ルゥもルゥの家族も、地位も金も『愛』も。全部壊れてなくなった景色が心の底から楽しみで、私の心を満たすくらいの美しい景色なんだろう
……違う、私はそんな景色などいらない。囚われるな、鳥籠の鍵はもう開いている。アレの言った言葉など唯の幻聴だ。消えろ、消えろ、消えろ!!!!
「私はそんなもの要らない!!」
悪夢から目が覚め、気づくと外は夕暮れ時になっていた。大量の脂汗が気持ち悪い。
「ナディア様……入っても宜しいですか?」
「……入っても良いよ、ジェシカ」
ジェシカが恐る恐ると心配そうに寝室に入ってくる。どうかしたのだろうか?
「ナディア様の叫び声が聞こえたもので……何か怖い夢でも見ましたか?」
「……ねえ、ジェシカ。私もあの父親の様に狂った人間になると思う?」
「絶対になりません!!ナディア様にはルーファス様が付いています!!あの方がいれば大丈夫です!!」
「ジェシカ……絶対も永遠も存在しないんだよ。特に人の想いは特に。こんなにも移ろいやすいものは無い」
「ナディア様……大丈夫です。もしもナディア様が道を踏み外そうとしたら、顔を引っ叩いて目を覚まさせてあげます」
「引っ叩くって……ふふっ、手加減はしてね?」
「はい、お任せください!!さあ、汗を流しましょう?」
ジェシカの手を取り立ち上がる。少しふらついたがジェシカが直様手を貸してくれる。私には勿体無いくらいのメイドだ。私もジェシカの様な人間であれたら良いのに。そうすれば、私の汚く歪んだ心など見なくて済むのに。
夢の内容が内容なだけに、仄暗い気持ちが溢れてくる。死んでもなお私を苦しめるのか。いや、私自身が勝手に記憶に囚われているだけか。
あれよあれよとドレスを脱がされ湯船に浸かる。少し生温い温度が丁度良い。私の人生も生温かったら良かったのに。
お風呂から上がり真新しいドレスを着る。すると、ファミア様から夕食を一緒に取らないかと言伝があった。断る理由など無いので一足先にダイニングルームに向かう。
程なくしてファミア様が現れた。
「待たせちゃってごめんなさいね?顔色が悪い様だけど大丈夫かしら?」
「大丈夫ですよ、少し夢見が悪かっただけですから」
「……どんな夢を見たのか聞いても宜しいかしら?」
「聞いても不快な思いをするだけですよ?それでも良いなら話しましょう。狂った夢のお話を」
ファミア様には悪いと思ったが、興味本位で私の心に近づこうとしたのだからこれくらいは良いだろう。
私が夢の話を話し終えると、ファミア様は濁りのない瞳から涙をこぼしていた。その涙は私が哀れだと感じたからか?
「ナディアちゃん、家族にも色々な形はあるわ。でもお願い……私を貴方の本当の『お母さん』にして?」
私の母は一人だと思っていた。まさか、こんな形で母親にしてくれと言われるとは思って無かった。
(こんなに優しい人に私の孤独が分かるものか)
小さな声で誰かが心の底で囁いた。
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