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愛に狂う

※誤字、脱字多かったらすみません。



私の八歳の誕生日に、目の前で母が首を吊った


父と幼馴染が火事で共に焼け死んだ。不幸な事故とされているが本当にそうだろうか。


継母は事故死とされている。


異母妹は継母の死を目の当たりにしたらしく、前とは様子が違うらしいが、お祖父様が持って来た縁談を受けたらしい。


母と継母は父を愛し、父は自分自身を愛して、異母妹は愛を求め、幼馴染は私を愛していると言った。


母は哀れで、継母は弱くて、父は狂っていて、異母妹は犠牲者で、幼馴染は軽率だと思った。


愛に狂い壊れていった。


何故執着し、自ら破滅を招いたのだろう。

それとも破滅をしてでも、執着する程価値のあるものだろうか。






「……愛ねえ」


私は公爵家の与えられた部屋で、ソファに横になりながら煙草を燻らせる。


状況から考えて、父はエルヴェが連れて逝ったのではないだろうかと考える。痴情のもつれで腹部を刺されたと聞いていたが、そんな体で何故父を最後に連れて逝ったのだろうか。私を連れて逝くのではなく。不幸な事故とされたのは、恐らくエルヴェの父とルゥが動いている。


継母は、まあ事故なのだろう。だが、ルゥがその件で裏で後始末の為に動いている気配がしたので、事故の内容はおおよそ予想がつく。絶対ではないが。どちらにせよ、異母妹は乗り越えられるのかどうか。それとも……まあ、私が考える事ではないか。


数々の出来事に、中々思考が止まらない。


「またごちゃごちゃ考えてるのか。言っただろ、考え過ぎは良くないって」


ルゥがいつの間にか部屋に入って来ていた。人が部屋に入って来たのに気付かないなんて、どれ程考えに耽っていたのだろうか。


「なあに?こんな夜更けに、慰めにでも来たの?」


ソファの上から身を起こし、蠱惑的に微笑む。そんな私をルゥは鼻で笑い、私の頭を少し乱暴に撫でて不敵に笑う。


「慰めて欲しいのか?」


「ルゥには私が慰めて欲しそうに見える?」


「残念なくらい見えないな。だが、色々あって疲れてはいるだろう」


「……ルゥもね」


ルゥは私の横に座り、煙草を取り出して吸い始めた。部屋には甘い香りと煙草の匂いが漂い、混ざり合う。私は煙草の火を消して、力なく寄りかかる。


私を受け入れて、優しくて、温かくて、煙草の匂いがして、私を助けてくれる悪い大人。


「ねえ、ルゥ」


「なんだ?」


「……ありがとう」


「……気にするな。もっと甘えておけ」


何故この人は見返りを求めず、私に手を伸ばし、助けてくれるのだろう。それはどの様な欲と感情なのだろうか。この人も愛と答え、狂って壊れていくのだろうか。


「ねえ、ルゥ」


「今度はなんだ?」


「もしかして、私の事を愛してるの?」


私の言葉にルゥは煙草を絨毯に落としてしまい、慌てて足で踏み潰して火を消す。私はそんなに変な事を言ったのだろうか。


ルゥは煙草を灰皿に入れ、目を泳がせながら頬をかく。私は静かにルゥの顔を観察する。どんな感情も見逃さないように。ランプの灯りに照らされているせいで顔色は分かりづらいが、よく観察すると耳が若干赤い。いつもは余裕があるのに、今は目が泳いで動揺しているのが丸わかりだ。


「……知らん」


「半分本当、でも半分嘘」


「……なんでお前は嘘や感情に機敏な癖に分からないんだよ」


「やっぱり愛なの?」


私はこの人がなんと答えるのか知りたくて、私にしては珍しく引き下がらなかった。もし、愛と答えたら私はどうするのだろうか。


お互い無言で見つめ合う。ルゥは根負けした様にため息をついて、ハッキリと答えた。


「愛かどうかなんて俺にも分からない。ただ、お前に惚れてるだけだ」


「……そう」


「愛かそうじゃないかなんて別にいいだろ。俺はお前に惚れてる、今はそれで納得しろ」


そう言って新しい煙草を取り出して吸い始めてしまった。私はその煙草に手を伸ばして奪い、自分の口に咥え、吸った煙をルゥの顔に軽く吹きかける。ルゥは目を見開いて固まってしまったが、すぐに耳を真っ赤にしながら呆れた表情を作る。


「……お前な。意味分かってるのか?絶対に他の奴にするなよ」


「初めてだから優しくしてね?」


「……子供はさっさと寝ろ」


また頭をグシャグシャに撫でられ、ルゥは部屋から出て行ってしまった。何故あの人は私と話す時、あんなにも分かりやすいのだろう。少し可笑しくて笑ってしまう。


少し揶揄っただけで動揺し過ぎだ。

私はまたソファの上に横になり、奪った煙草を吸う。私の煙草より苦くて、重くて、少し肺が辛い。



いつか、私も愛というものに狂ってしまうのだろうか。


この歪んだ笑みが浮かぶ理由は何だろうか。



窓に目を向けると、月が雲で陰って薄暗く、いつもより綺麗だと思った。






















自室の窓から陰った月を見ながら、私は歪んだ笑みを浮かべる。


「お姉様……私のお姉様……私を理解してくれるのはお姉様だけ……ずっと一緒よ」





煙草の煙を顔に吹きかける行為は、夜のお誘いの意味があります。・・・ナ、ナディアちゃん


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