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父親視点

※誤字、脱字多かったらすみません。

エルヴェ、生きていました。ボロボロですが



最近体が思う様に動かず、ベッドから起き上がるのがやっとなほどの体調の悪さだ。恐らく父が公爵の指示で私が口にする全ての物に毒を盛っている可能性が高い。このまま病死にでも見せかける気なのだろうが、このまま死ぬわけにはいかない。


見張りの交代の時間はだいたい把握した。その隙を狙い此処から出るとしよう。だが、この体だ。協力は必要だろう。エルヴェ・ブランセットが訪ねて来る予定なので、とりあえず彼の協力を仰ぐとしよう。私達は共犯者なのだから。もし無理だったとしても、昨日口車に乗せて買収できた見張りの一人を使うか。


ベッドの上でナディアを取り戻す算段を考えていると、彼が訪ねてきた。だが彼は車椅子に座り、土気色の顔をし、酷くやつれていた。何があったのだろうか。私は隔離されている状態なので情報が入ってこない。彼は付き人に何か指示をして、部屋から出した。


それにしても、顔色は悪いが彼はこんな穏やかな顔をしていただろうか。いつも人を見下し、嗜虐的な目をしていた。なのに今の彼は凪いだ目をしている。


「お久しぶりです、伯爵」


「……何があった?」


「痴情のもつれで腹部を刺され、それが原因で侯爵家次期当主は弟になりました」


その言葉には安堵感が滲み出ている。おかしい、彼はこの様な男ではなかった。陰湿で、人を見下し楽しむ男だったのに。彼の顔を見ていると、まるで……幼い頃の彼だ。穏やかで、真面目だった頃の。


「……傷が原因で俺はそう長くはない。座っているのも、喋っているのもやっとな状態です」


「……ナディアはどうした」


「さあ、どうでしょうね」


私は思う様に動かない体をベッドから起こし、彼を見つめる。おかしい、何故そんな穏やかな顔が出来る。何が彼をそうさせているのだ。間近に迫っている死か?


「伯爵……もしも取り戻せたとしたら、貴方はナディアをどうするつもりですか」


「取り戻せたとしても、きっと公爵は追って来るだろう。だから私はナディアを道連れに共に逝く」


ナディアと共に逝き、永遠になる。永遠とはなんて甘美な響きだ。もっと早く、ナディアを閉じ込めた時にそうしていれば良かったと激しく後悔する程だ。想像して笑みが止まらない。そんな私を見ていた彼は静かに目を閉じた。


「俺は思い出したんです」


「……?なんの話だ」


そう言って、閉じた目をゆっくりと開けた彼の目は何かを決心したように私を見ている。私は何故かその目に嫌な予感を覚えた。


「俺はどうしようもない人間です。だから、最後までどうしようもない人間でいようと思います」


彼は穏やかに微笑んで液体が入った瓶を取り出し、扉に向かって投げた。扉にぶつかった瓶は割れて、中の液体が飛び散ったと思うと、液体が激しく燃え始める。彼の行動に驚愕し、逃げようとしたが体に力が入らずにベッドから落ちるだけだった。


「なんのつもりだ!!」


「……俺たちは共犯者だ。俺は貴方を連れて逝く」


「今更何故……」



逃げ出そうともがいているうちに、扉は既に火に包まれてしまい出られそうにない。窓は開けられないよう細工がしてあり、そこからも逃げられそうにない。死ぬわけにはいかない。まだ、死ぬわけにはいかないのに。俺が共に逝きたいのは、彼ではない。ナディアなのだ。ナディアだけなのだ。彼は何も答えず、目を閉じてただ穏やかに笑うだけ。


どんどん部屋に煙が充満し、火が勢いよく部屋全体に燃え広がる。煙の熱さで喉が焼け、煙のせいで呼吸も苦しい。いつの間にか、彼と私の周りにはもう燃え盛る炎だけだ。


動けず這い蹲る私に火が燃え移り、瞬く間に全身が火に包まれた。


熱い、痛い、苦しい、嫌だ、ナディア、ナディア、ナディア、私のナディア、逃がさない、逃がさない、逃がさない!!私だけのナディア!!もう一人の私であるナディア!!




「ナディアアアアア!!!!!」




私の叫び声は炎に呑まれ、私達は完全に炎の中に消えた。






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