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母親視点


※誤字、脱字多かったらすみません。

「愛に狂う」の主人公の母親の話です。



私は恋をしていた。




誰もが見惚れてしまうほどの美貌の持ち主である、セルジュ・エヴァンズ様。


まさか私がセルジュ様の妻になれるなんて。


私は去年嫁いだアネットお姉様と違い、なんの取り柄もなく、大勢の人間の中に埋もれてしまうような平凡な人間。


そんな私が政略的な事とはいえ、密かに憧れていた方の妻になれる。気後れする気持ちもあるが、それ以上に喜びが大きかった。妻になったら精一杯セルジュ様を支えていこう、そう思っていた。


だけど、あの方が愛したのはお姉様だった。


セルジュ様にお姉様を紹介した事を何度も後悔した。

でも、お姉様は既に夫のある身だから大丈夫だろうと思っていた。


しかし、私とセルジュ様が結婚した後も二人は愛を燃え上がらせ、裏で逢瀬を重ねていた。


辛かった。悔しかった。惨めだった。

それなのに、セルジュ様を嫌いになれない私がいた。お姉様に出逢うまでは、セルジュ様は優しかったのだ。二人で過ごした思い出を捨てられない自分がいる。


私達に子供が出来れば、子供を通して、以前のような穏やかな関係に戻れるかもしれないという希望も捨てられなかったのだ。



そして、私達に子供が産まれた。

セルジュ様にそっくりな美しい女の子だった。


名前はナディア。

セルジュ様が考えてくれた名前。


セルジュ様はナディアを可愛がってくれたが、私の事は以前よりも避けるようになった。その理由はすぐに分かった。


お姉様にも子供が出来ていたのだ。セルジュ様との愛の結晶が。お姉様は妊娠が分かってすぐに離縁されていた。


目の前が真っ暗になって、全てを捨てて逃げてしまいたかった。でも、産まれたばかりの娘を捨てる事はどうしても出来なかった。


お腹を痛めて産んだ、愛しい我が子。


もう少しだけ、もう少しだけ頑張ろう。

いつかきっと幸せな家族になれる日が来るかもしれない。





ーーーーーーーーーー





「誕生日おめでとう、ナディア」


「ありがとう、お母さま、お父さま」


今日はナディアの八歳の誕生日。

セルジュ様と娘、そして私。三人だけの誕生日パーティー。これは娘の要望だった。


セルジュ様は娘に沢山のプレゼントを渡し、私は娘に蝶をモチーフにしたペンダントをプレゼントした。今はまだ早いだろうが、大きくなる頃にはきっと似合うだろう。



今日の昼間、私は自らこのペンダントを受け取りにお店に行くと、街に見覚えのある人達がいた。

それは、セルジュ様とお姉様、そして二人に手を引かれる女の子。三人は幸せそうな顔をしていた。


その光景は、私が欲しかった未来。


セルジュ様に避けられていても、愛されていない妻だと使用人に軽んじられていても、義理の両親にセルジュ様との不仲を責められても、いつかきっと来ると信じていた未来。

信じようとしていた未来。



私の心が壊れる音が聞こえた。



「おかえりなさい、お母さま!」


屋敷に帰ってくると、娘が笑顔で出迎えてくれた。


愛していた、愛して欲しかった、幸せな家族になりたかった。


憎かった。セルジュ様が、お姉様が、あの二人の子供が。

……セルジュ様や周囲の人達に愛される我が子が。


どうして、どうして私だけが。


愛しているはずなのに、娘を傷つけて全て壊していしまいたかった。





私はもう、この子の母親でいられない。







ーーーーーーーーーー





誕生日パーティーが終わり部屋に戻ると、窓から月が見えた。


恐ろしいほど綺麗な月だ。



もう、疲れた。



愛するのも、愛されないのも、我慢することも、自分の心を殺し続けることも。


あの子を傷つけて恨まれる前に終わらせよう。


せめて、あの子の記憶の中では、哀れで優しい母親でありたい。


椅子に登り、ストールをシャンデリアに結び首にかける。


きっとセルジュ様は私が死んだ後、お姉様を後妻として迎え入れるだろう。

私がしてきた事は何一つ意味のないものだったのだ。

私は邪魔者だった。



「……愛していました、セルジュ様」



私は乗っていた椅子を蹴る。




真っ暗な世界で


愛しい娘の慟哭が聞こえたような気がした。








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