異母妹視点
※誤字、脱字多かったらすみません。
「お母様、お祖父様が私に縁談を持って来たのです」
お母様はなんの反応も示さない。ただぼんやりと椅子に座り、人形の様に窓を見つめるだけ。
前伯爵のお祖父様がお父様を領地の屋敷に療養と名目した軟禁をし、私とお母様は、お母様の実家である子爵家に連れてこられた。お母様の実家では針の筵だ。あの狂ったお父様から離れ、お姉様からの手紙を受け取った今だからこそ分かる。当たり前だ。
お父様とお母様の所業、私の存在。今までずっと現実から目を逸らしてきた。両親に愛されていない、私を見てほしい、私は許されない存在じゃないと認めて欲しい。生まれてきても良い存在だったのか。沢山の感情が渦を巻く。でも、それを家族に求めるのはもうやめた。エルヴェ様に拘るのもやめた。
そもそも、それをお母様達に求めるのが間違いだったのだ。愛を、生まれてきた意味を、生きていても良い理由を求めるのが間違いだったのだ。
私はお姉様の様に家族というものを捨てる。
私は前に進まないと、変わらないといけないのだから。
「縁談のお話を受けようと思います」
お母様はゆっくりと私に仄暗い視線を向ける。何を考えているのか分からなくて、少し恐ろしい。お父様と離れてしまったお母様は、気が触れたのかずっとこの状態だ。
「……駄目よ」
「……お母様?」
お母様がゆっくりと立ち上がり、私に近づいて来る。お母様の目は、お父様がお姉様を見る時の目と同じだった。私の体は蛇にでも睨まれているような感覚になり、恐怖で動かない。
「セルジュ様が言ったのよ……このままでいろって……捨てられてしまう……私達から離れるなんて……許さない」
「……お、お母様……お願い……来ないで……」
私は恐怖で固まる体を無理矢理動かし、座っていた椅子から転げ落ちる。しかし腰が抜けて立ち上がれず、そのまま後ずさることしか出来ない。
お母様は後ずさる私を押し倒して馬乗りになる。私を見下ろし、見たことが無い恐ろしい形相で私の首に手を伸ばして強い力で首を絞めてきた。
「ーーーーっ!!」
「駄目よ!!捨てられるなんて!!愛してもらえなくなるなんて!!」
怖くて、苦しくて……悲しくて、涙が溢れる。
必死に抵抗して身を捩り暴れると、お母様は体勢を崩して私の首から手を放した。私はその瞬間、力一杯お母様を突き飛ばすと、お母様は突き飛ばされた勢いのままテーブルの角に頭を打ち付けてしまい、動かなくなってしまった。絨毯には真っ赤な血が広がっていく。
「……お……おかあさま……」
私は首を絞められていた恐怖や苦しさを忘れ、床に倒れこむお母様に這いずって近寄る。お母様は光の無い目を見開いたまま動かない。どんどん血が流れ、絨毯を汚していく。
「あ……あ……あ……」
どうしてこんな事になったのだろうか。こんな事になるなんて思わなかった。これからは前を向いて、現実と向き合いながら生きていこうとしていただけなのに。本当の幸せを見つけようとしただけなのに。
……これがお母様と私への罰なのだろうか。
「あ……あ……ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
私はただ動かないお母様の体に縋り付き、獣の様な声で叫び続ける。お母様の血で手が真っ赤に染まる。
お姉様がこの光景を見たらどう思うのだろう。お姉様はいつものように気怠げに嗤うのだろうか。まるで演劇を眺める様な目をしながら。
お姉様にとって、この光景は悲劇と喜劇どちらに見えるのだろう。
作者「うわあ……」
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