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感情の名前

※誤字、脱字多かったらすみません。




私は、公爵様の言葉に賭けた。


この狂った平穏が崩れるかもしれない。下手をすれば殺される可能性だってある。父に常識など通用しないのだから。


夜会で会う度、公爵様の私を観察する様な視線を感じていた。だが、私もまた公爵様を観察していたのだ。公爵様は誰とでもきさくに接する、親しみやすい人物だ。だが、それだけではない。経歴や外見などに囚われず相手を見る観察眼を持ち、淡々と物事を判断することが出来る人だと推測していた。爵位や人物像をみても、父やエルヴェの妨害を跳ね除けられる力がある。


簡単に戯れを言う人では無いと思いながらも、時間が経つうちに、少しずつあの言葉はやはり戯れだったのだと諦めの心が顔を覗かせる。


でも、公爵様は本当に来てくれた。



私は、一か八かの賭けに勝ったのだ。




ーーーーーーーーーー





「……目が覚めたか?ああ、無理に喋らなくていいぞ」


目を開けると、知らない部屋のベッドに寝かされていて、横には公爵様が椅子に座わって私を見ていた。恐らくだが公爵様の屋敷だろう。私はどのくらい眠っていたのだろうか。相変わらず酷く体が重い。


「前伯爵当主……お前の祖父から許可を貰って、お前を公爵家で保護する事になった。もう大丈夫だ」


お祖父様達と最後に会ったのは、去年の母の命日だったか。お祖父様達は会う度に自責の念に駆られた顔をして、私に謝るのだ。私は母ではないのだから、謝っても意味など無いのに。


公爵様とお祖父様達の間に、どのようなやり取りがあったのかは分からない。恐らくだが、お祖父様達も私をあの家に置いておくのは危険だと判断しての行動だろう。


「伯爵は、暫く領地の屋敷で療養する事になった。その間は前伯爵当主が代理を務めるらしい。伯爵夫人と妹も、伯爵やお前と距離を置いた方がいいと判断して、夫人の方の実家に引き取ってもらった」


……あの父がその程度で終わるはずがない。

だが、フローディア達が父から離れたのは良い事だと私は思う。特にあの人は父に依存しているように見えたから。漸く祖父達は重い腰を上げたようだ。色々思う事はあるが、今は素直にあの家から出られた事を喜ぶとしよう。


この短期間で事態を好転させた手腕に少し驚いてしまう。公爵様には感謝してもしきれない。


「お前が言っていた侍女も、公爵家で雇う事にしたから安心しろ」


公爵様は私を安心させるかのように優しく微笑み、あの夜と同じように私の頭を撫でるが、すぐにばつが悪そうな顔になり、私に謝り始めた。


「助けてやると言いながら、こんな状態になるまで待たせてすまない……。あと、あの夜にキツイ物言いをして悪かった」


あの夜の公爵様は言葉はキツかったが、煙草を取り出す時、緊張してるかのように手が微かに震えていたのを知っている。


人の心は目に見えるものではない。だが、人の本性は仕草や行動に出る。だからこそ、公爵様の言葉に賭けたのだ。


謝罪しなければならないのは私の方だ。何の関係もない公爵様を利用し、巻き込んだのだから。そして、これからも巻き込み続けるのだろう。


我ながら酷い人間だ。毒に塗れた私に関わらせてしまったのだから。



それでも、私はこの人を放してあげられそうにない。



この感情に名前を付けるとしたら何というのだろうか。



私には分からない。







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