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公爵視点

※誤字、脱字多かったらすみません。




「ルーファス様……申し訳ありません。私には愛し合っている方がいるのです……。婚約解消をお願いします」


「……君は貴族の婚姻の意味を考えたか?」


「……確かに貴族の婚姻は義務です。でも私は運命の人に出逢ってしまったのです。私は真実の愛を逃したくはない……」


「……分かった。婚約は解消しよう」


「ありがとうございます!」


嬉しそうに頬を染め、喜ぶ婚約者。いや、元婚約者か。


元婚約者の事は恋ではないが、いずれ夫婦になるのだと大事にしていた。だが、彼女は真実の愛とやらに溺れ、貴族の義務を放棄した。この後始末に追われると思うと、頭が痛くなる。


愛に溺れるのは構わないが、周りの迷惑もちゃんと考えてから溺れて欲しい。元婚約者はここまで頭が弱かっただろうか。いや、愛とやらが頭を弱くしたのか。思わずため息が出る。


元婚約者が部屋から出て行くと、俺は煙草を取り出して吸い始める。煙草を燻らせながら婚約解消の書類を見つめた。



「……愛ねえ」



愛とはなんて軽い言葉だ。





ーーーーーーーーーー





婚約解消のせいで、新しい婚約者を探さなければいけなくなったのだが、中々見つからない。

公爵夫人となるには、はっきり言うと馬鹿では無理だ。上手い具合に人心掌握も出来なければならない。だが、夜会に集まる令嬢達は知識をどこに置いてきたのかと思うほど、お互いの足の引っ張り合いしかしないのだ。これでは公爵夫人は務まらない。


そうしている間に婚約解消から結構な時間が経ってしまい、俺は公爵家当主になっていた。

婚約解消で心に傷を負ったと思われ、今まで婚約者探しは煩く言われなかったが、そろそろ限界だろう。幾らかマシな令嬢を選ぶしかない。


そう思っていた時に現れたのが彼女だ。


ナディア・エヴァンズ伯爵令嬢。

類稀なる美貌、気怠げで浮世離れした雰囲気、つかみどころのない性格。男女関係なく周りを魅了してやまない。


彼女は社交界にデビューする前から有名だった。彼女の美貌もそうだが、エヴァンズ伯爵当主の醜聞で悪い意味でも噂の的だった。


社交界にデビューした彼女は、周りを観察するように静かに微笑み、すぐに周囲を手のひらで転がすように魅了する姿にゾッとするものを感じたのを覚えている。


男達は我先にと近づくが、幼馴染らしい侯爵家の男が牽制をする。確か、名前はエルヴェ・ブランセットだったか。

彼奴は油断ならない男だ。誠実なようで、どこか人を見下した目をしている。そして、彼女を見る目は嗜虐的だ。


何故か、彼女は大丈夫だろうかと心配してしまった。


それから俺は彼女を夜会で見かける度、観察するように見つめてしまう。別に社交界は苦痛じゃなさそうだ。だが、極たまに窓に視線を向け、月を諦観したような目で見つめるのだ。彼女は何を考えているのだろう。


彼女には多くの縁談が舞い込んでいたが、伯爵当主が全て断り、溺愛しているという噂だ。実際、俺が伯爵当主にそれとなく送った縁談を仄めかす手紙も、きっぱりと断られてしまった。


溺愛していると言っても、ここまで普通するだろうか。

伯爵当主から送られてきた手紙から異常なものを感じ取った。





ーーーーーーーーーー




今日は公爵家主催の夜会だ。一応、俺の婚約者探しを兼ねている。周りの令嬢達は相変わらず足の引っ張り合いだ。香水の匂いが混ざり合い、少し気分が悪くなった。


そんな中、あのいけ好かない男にエスコートされて参加していた彼女が、周りの目を抜け出し人気の無い庭へ出て行ってしまった。公爵家の庭といっても、令嬢が一人で庭に行くなんて危ない。彼女は意味も無くそんな行動を取る人物だろうか。


俺は彼女の後を追って庭に出る。

彼女はベンチに座り、雲に隠れた月を眺めているようだ。


……俺の推測でしか無いが、恐らく彼女は伯爵当主にある程度は自由にさせてもらっているが、それ以外は閉じ込められている状態なのではないだろうか。誰にもそれを言えず、ただ諦観しているのではないか。


俺は緊張しながら彼女の後ろから声を掛ける。

自分が思っていた以上に緊張していたのか、キツイ物言いになってしまった。


煙草を取り出すと、彼女の視線が煙草に向き、一瞬だけ物欲しそうな顔をする。煙草を吸うのか。俺からしたらまだ大人にはなりきっていない歳の彼女だ。自分の事は棚に上げ注意してしまった。


俺は彼女に鎌をかけて話すと、思った通りだ。ほんの少しだけ、どうしたらよいのだという感情が見えた。


一筋縄ではいかなそうな彼女をわざと子供扱いし、言葉を引き出す。……やはり彼女は助けを求めていた。

綺麗な顔をクシャクシャにして、声を押し殺すように泣く彼女の様子に胸の痛みと庇護欲を覚え、頭を撫でてしまう。


どうしてこんなに興味があったのか。どうして挨拶程度しかした事のない彼女を心配したのか。俺は年甲斐もなく彼女に惚れていたのだ。



「ったく……俺もとんでもなく面倒くさい女に惚れたよなあ……」


何となくだが、とんでもなく周りが面倒くさそうだ。

いけ好かない侯爵家の男も、こちらから見えづらい場所で俺を射殺さんばかりに睨んでいる。



だが、まあ……惚れた女の為に諸肌脱ごうとするか。





諸肌を脱ぐ→全力を尽くし、事に当たる

一肌脱ぐ→少し労力を割いて、手助け、支援すること。


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