サクラ
風に舞うほのかな白は滴が叩き付けると
アスファルトにへばりついて同化した。
風に急かされて枝から離れたものは
照る緑の上でひと休みする。
風に耐えた淡いともがらは
まだ征く先を決めかねていた。
かつて視界をおおっていた白と紅は
やがて逝くべき道を示すだろうか。
朋のなきがらの上と知ってか知らずか
落ちた白はアスファルトを転がる。
向こうの蒼を遠ざけようと
いまや緑が頭上をおおう。
陽と水に育まれた生命は土と空気で錬られた身体をもち
その存在を高らかに宣言する。
緑に透けた陽は、はたして光か。
透過した陽は、はたして寄る辺と為りうるか。