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緋楽盈月〜和風異世界で獣の子供預かってます〜  作者: 流灯
一章 真摯に学べこの異世界
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枳ノ街

「じゃあ、父さん、行ってきます。」

「咲夜、気をつけてな。絶対に帰ってくるんだぞ。」

「うん。」

「娘をよろしくお願いします。」

「分かりました。では。」


行商人の馬車が走り出す。

ここまでの経緯を大雑把に説明すると、父が行商人に私も一緒に連れて行ってくれないかと頼んだ。

でもやはり私はまだ子供で、行商人は断った。

だから私が行きたい理由を説明して上目遣いで頼んだら許可してくれた。

泣き落としのようになってしまったがしょうがない。

本当の事だしね。


そしてこの行商人の護衛は三人いる。

全員専属の護衛なんだとか。

行商人の護衛が専属なのはよくある事だ。

三人の内二人が剣士、一人が魔術師だ。


御者を商人が自らやっているのと、護衛がやっている二台で合計三台の馬車がある。

魔術師の人と私は馬車に乗っているけど、かなり狭い。

だから私は魔術師の女性の膝に乗っている。

もちろんただじゃない。

耳と尾をもふもふされている。


「ああ、咲夜ちゃん可愛い。」

「ありがとうございます⋯⋯。」


さっきからずっとこんな調子だ。

調子狂うなあ。


そのまま一日目が過ぎた。

途中何度か魔物との戦闘があったけど私は参加しなかった。

三人だけで余裕だったからだ。


でも、初めて魔物を見たらファンタジーだなって思った。

一角兎とか黒牙狼とか。

名称が全て漢字なのは和風異世界だからか。


魔物と遭遇する度に魔物の名称と解体のやり方を教わった。

私が頼んだら快く教えてくれたのだ。


からたちノ街には明日の日暮れまでには着くそうだ。

母は魔術師なので魔力量は多いが、早く薬を届けた方が良いのは事実。


ここで、緋楽のお金について説明しておこう。

みかん六個で三十文くらいなので日本円にすると一文十円程。


まずは銅貨。

一番安いのは一文銭と言われる硬貨。

それが十枚で十文銭。つまり百円。

百枚で百文銭。千円。


次に銀貨。

百文銭十枚で銀小判。一万円。

それが十枚で銀大判。十万円。


そして金貨。

銀大判が十枚で金小判。百万円。

それが十枚で金大判。一千万円。


そして、私が父から預かったのが銀大判五枚と生活費として少し。

つまりは五十万円。

父は余ると思うけど一応持っていけと言っていた。

五十万円なんて現金で持った事ないのだけど。

私はそれを大切に異空間に入れておいた。




***




「枳ノ街が見えてきたぞー。」


出発した翌日の夕方、街に着いた。

道中で特に事故とかも無く、弱い魔物しか出てこなかったので比較的安全に来れた。


鈴に関しては出発する前に持ってきた猪肉(生)を寝る前にあげた。

暫く外に出せていないのは心苦しいけど仕方がない。

危険が多いからね。


さて、枳ノ街は外側をある程度高い壁で囲われていてこれまたファンタジー感がある。

街の中心には大きな屋敷がある。

おそらく領主とかが住んでいるのだろう。


木でできた門は大きく、ノ町とは比べものにならない。

その門の両端には検問所のようなものがあり、中に入るにはあそこを通らなければいけない。


夕方ではあるが流石と言うべきかそこそこ人や馬車が並んでいる。

その最後尾に私達もならび順番を待つ。


やがて私達の番になり、商人の人はいつも通りといったように手続きをしていて、護衛の三人もカードのような物を出して通っていた。

さて、問題は私である。

特に身分証明書のような物とか持っていないけど通れるのだろうか。


商人の人が門番と何か話している。

おそらくは私の事だろう。

商人の人が私に声をかけてきた。


「咲夜ちゃん、銀小判一枚払えるかい?」

「あ、はい。払えますけど、税かなにかですか?」

「ああ、その通りだよ。」


税が一万円て高いような。

いや、でもそれ以外の部分で税は少ないようだしそう考えれば安いのか?


私は銀小判一枚を懐から出したように見せかけながら異空間から取り出した。


「これでいいですか?」

「ああ。よし、通って構わない。」


商人の人が礼を言い、馬車は街へ入っていった。

街の中は夕日の橙色に染まり、少し早い夕食とばかりに酒場で飲んでいる人、もうすぐ夕食時だと準備をしている飲食店や屋台などなど。


芪ノ町とは比べものにならない喧騒の中を馬車は進んでいく。

やがて馬車はある建物の前で止まり、そこから出てきた人と商人の人がなにやら話している。

暫くすると商人の人が来て、私に話しかけた。


「今日はもう遅いからここに泊まっていくといい。ここは私がいつも使っている宿でね。ご飯も美味しいし良い宿だよ。」

「はい、そうさせてもらいます。」


宿の一階は食堂みたいな感じで、既に飲んでいる人もいる。

ここは宿泊客でなくても利用できるようだ。

二階と三階に客室がある。


「一泊したいんですけど、いくらでしょうか?」

「一泊でしたら八百銭になります。朝食付きなら八百五十銭ですね。」


微妙に高いな。

見る限り商人向けの宿のようだし仕方がないのかもしれないけれど。


「なら、朝食もお願いします。」


そう言って私は百文銭を九枚渡した。

お釣りに五十銭を貰ってから、言われた部屋へと行く。

雰囲気としては旅館を連想する感じの宿だ。

なので部屋もそうで、六畳の部屋には畳が敷かれ、小さい机と座椅子が二つ、押し入れには布団が二つ入っている。


さて、夕食を食べに行こう。

階段を降り、カウンターのような席に座る。

メニューはあるけれど、種類はそれほど多くない。

まあ、冷蔵庫とか無いし仕方がないのだろうけれど。


宿屋の人に親子丼を頼み、それが来るまで明日の事について考える。

まず、薬屋に行って光秋桜の薬を買う。

そしたらもうこの街に用は無いのでさっさと帰る。

うん、明後日は無理でも明明後日には帰れるだろう。


と、親子丼が来たので早速いただく。

うん、美味しい。

でも、鶏肉が私の知ってる鶏肉と少し違う気がする。

なにかの魔物の肉とかかな。


親子丼三杯分のお金を払って二杯は部屋に持って行く。


部屋に入り、異空間の穴を開けて入る。


「鈴ー、今日のご飯だよー。」

「ガルルルル。」


親子丼をあげるとおいしそうに食べだした。


「ごめんね、全然外に出してあげられなくて。明日は出せると思うからもうしばらく待ってね。」

「ガルル。」


親子丼を食べている鈴を撫でてやる。

まるで絹のような触り心地で、めちゃくちゃ気持ちいい。


鈴が親子丼を食べ終わったので器を回収して異空間から出る。


この宿にはお風呂もついているので入り、あとは特にやる事も無いので寝る。

緋楽にはお店はそこそこある。

庶民向けの店の方が多いくらい。


この世界の木材は結構丈夫なので、二階建てや三階建てもできる事から、一階で店をして二階で暮らすというのが一番多い。


でも露店の方が圧倒的に多い。

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